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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百五十三


―――ビビアナの尋問が始まり、戦士たちは彼女を守るために動いた。


フリジアに見張りがついたが、二人は納得する。


護衛として認識すればいいのだから、問題はないことだとね。


『彼女』と『ゴルメゾア』だけが、当面の脅威だった……。




「あの『女』について、詳しく話しなさい」


「う、うむ。私も、多くは知らないのだが……生い立ちと、『カール・メアー』に、来ることになった経緯は、話せる」




―――フリジアは『彼女』の悲惨な生い立ちを、伝えていく。


去勢についての語りは、二人よりも護衛の戦士が青ざめてしまっていた。


その脅威は、やはり男の方が分かるだろう。


自分の性別はアイデンティティを構成しているんだ、それを奪われるなんて……。




―――『人買い』の部下も、多くの痛ましい人生を目撃している。


奴隷にして売り払うんだからね、彼らなりの職業倫理があったとしても悪行だよ。


『彼女』の物語は、多くの痛ましい者たちのなかでも壮絶な部類ではあるが。


『救われなかった者たち』と比べれば、まだ幸せなのが悲しい現実だった……。




―――ミアの母親のように、奴隷として生きて死んだ者も多くいる。


最近のミアは知ったのさ、『プレイレス』での出会いによって。


母親がミアを連れ出してくれたのは、母親が性奴隷だったからだ。


その苦しみを与えないために、命懸けで運命に抗い亡くなったんだよ……。




―――多くの悲しい物語があり、ビビアナはその目撃者でもある。


フリジアの語る『彼女』の物語にも、耐性があった。


冷静でいられるのは、経験ゆえのこと。


『狭間』が亜人種の奴隷を売る側に立つ、そんな矛盾を生きた者の知恵だ……。




「あの『女』は、『カール・メアー』の巫女戦士のような役割を与えられた。特別扱いね。聖歌隊にでも、ぶち込んでいれば良かったのに」


「わ、私もそう思うぞ。あいつの歌は、とても……素晴らしかった。女神イースを、本当に崇拝しているのだ……」


「金持ちが『改造』してまで、保存しようとした『価値』よ」


「そ、そういう言い方は……」




「物事を考えなきゃならないときには、こういうドライさも要る。そんなときも、あるの」


「今は、そのときなのだろうか……」


「分からない。でも、試してみるしかないわ。あの『女』は、こちら側の脅威よ。城塞の内側で暴れられている。もしも、外と連携したら大変じゃない」


「そ、そうだな。あいつの狙いを、ハッキリとさせなければ……」




―――フリジアの目が、ビビアナを見つめる。


フリジアは知的な少女というわけじゃない、残念ながら賢者と呼ばれる日はないかも。


しかし、洞察力というものは知性からのみ作られているわけじゃない。


ソルジェのように、野生の勘じみた者を使いこなせるのは『非インテリ』だ……。




「……理由は、分からないが。あいつは、レナス・アップルは、ビビを狙っている」


「『狭間』だからかしらね。とんだ差別主義者よ」


「う、む。それだけでは、ないだろう。あいつは……そうだ。ビビの命を狙っているというのは、違うのかもしれない」


「何を言ってるのよ、二人して殺されかけていたけど?」




「そ、それは、そうなのだが。あいつは……正気じゃないからな」


「暴走していると、言いたいの?『カール・メアー』を庇いたいから、そういう考えになっていないかしら?」


「い、いや。そうじゃないと、思う。お山は、故郷である。大切であるが……レナス・アップルは、強い。まともにやり合ったら、負けてしまうほどには強いのに、私は生き残れている。ビビのためになら、死んでもいいという気概でいたんだ」


「そ、それは。嬉しいケド。そういうの、やめなさい。アンタに死なれたくなんて、ないんだからね」




「う、うむ。お互いをいたわり、末永く生き延びたいものだなっ」


「年寄りじみないの。でも、その直感……正しいとすれば、『人質』よね」


「……そう、だな。『カール・メアー』が取るべき戦術ではないが、『人質』は有効な作戦だというのは分かる」


「とくに、私はね。叔父さまに、愛されているもの」




「……つまり、レナス・アップルは……ビビを人質にして、メダルド・ジーを脅したかったのだろうか?」


「私の『価値』の一つよ。宗教的な動機というよりは、いかにも軍事的な動機だけれど」


「そう、だな。まるで帝国軍がやりそうな行動である」


「『カール・メアー』の巫女戦士や、あの『女』みたいな戦士は……軍事作戦に参加しているの?」




「……え?い、いや。我々は、帝国軍と行動を共にする日もありはするが……それは、『血狩り』のときぐらいだ。作戦会議などからも、排除されがちというか……」


「それは、アンタみたいな低い地位だから?」


「う、ううっ。低くなんてなかった……っ。そこそこ有望視されていたと思う」


「『カール・メアー』の上位の連中は、帝国軍に介入していたの?」




「い、いや。それは、越権行為だろう?私たちは、基本的にただの尼僧だ。『血狩り』や、異教活動の取り締まり以外で、軍に関わりはしていない……」


「偉い連中も、そうなのかしら?帝国軍から、軍人の地位をもらっているヤツはいなかったの?」


「いない。そもそも、偉い人たちほど、敬虔で熱心な信徒でもある。軍事活動に精を出すぐらいなら、他の活動をするのが本道じゃないか。お祈りとか、勧誘とか、修行とか……」


「そうか。それなら、あの『女』は……独断で動いている?それに、しては……組織力も政治力も使っていそうだわ」




―――ビビアナはあごを振り、護衛をしている部下に地図を用意させる。


折り曲げた指を口もとに当てると、地図とにらめっこを始めた。


フリジアも真似てみるが、何も思いつけないは悲しい知性の差だね。


ビビアナの分析力は、さすがはこの土地の商人と言ったところさ……。




「……あいつは、ミアが言っていた、赤い竜……『小さな魔女』というのは、それに乗っていた『狭間』の子ね。『プレイレス』の全域に、ストラウス卿が呪術を使って、その光景を見せた……ということは、あの『女』は」


「う、うむ。レナス・アップルは……?」


「西にいた。『プレイレス』で、ストラウス卿の呪術の影響に巻き込まれていたのね」


「お、おう。そうか、なるほど。レナスは……ここよりも、ずっと西にいた……『プレイレス』で、何をしていたのだ?」




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