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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百五十


―――悲しい者たちが、この場には集まっていたよ。


両親を殺された『彼女』に、両親の命がけの祈りを捧げられたビビアナ。


両親から捨てられたフリジアは、『カール・メアー』と決別した。


ここにはそんなさみしさがあって、さみしさは怒りを強めもする……。




―――ビビアナは床を這うようにしながら、『彼女』に向かう。


殺意を実現しようとしているんだよ、殺さなければ気が済むはずもない。


だが、『ゴルメゾア』は身をよじった。


壁に開けた穴を広げて、この部屋へと侵入しようとしている……。




「ビビっ!!に、逃げろっ!!あのバケモノが、は、入って来るっ!!」


「バケモノごときに、怯んでいられるか!!」


「ここは、あ、危ないんだよおっ!?」


「やれ、やってしまえっ。『ゴルメゾア』ああああッッッ!!!」




―――再び『火球』が放たれて、ビビアナはその直撃軌道にいた。


フリジアは選ぶに決まっていたよ、『彼女』の拘束よりもビビアナの命だ。


抱き着くように飛びついて、二人は一つに絡まりながら床を転がる。


そのすぐ上を、『火球』が飛びぬけていった……。




―――爆発が、またジーの一族の屋敷を壊してしまう。


思い出と記憶は爆破されて、踊って狂う灼熱の火焔に呑み込まれていくんだ。


ビビアナはまた叫んだ、ジーの一族のあらゆる財産と記憶を守りたいのに。


目の前でそれらは焼き払われてしまうんだ、叫ぶに決まっているさ……。




「ああああああああ!!また、また……ッ!!」


「お、落ち着け、ビビっ。逃げるんだっ。逃げるだけで、いい……生き延びるコトだけを考えてくれ!!」


「は、離しなさいっ!!あいつを、あいつを殺すのよ!!」


「……お前なんぞに、私が殺せるものか……ッ」




―――『彼女』は立ち上がる、折れた左手首を自分で整復しながらね。


折れた骨の断端は、とても鋭い。


かなり激痛があるはずだが、そんな痛みは彼女の信仰心が麻痺させる。


いいや、それだけじゃないようだ……。




『ギギギギギギイイイイ!!』


「て、手首から……き、『寄生虫』……の鳴き声ッ!?お前、か、『カール・メアー』なのに、ど、どうして!?」


「実験の、一つだ!!ほうら、見ろ!!私の肉体が、変わって行くぞ!!貴様に折られた部分が、肉の内側で、縫い合わされてつながっていく!!」


「そ、それは、異教の力だぞ!?お前が、つ、使うのはおかしい!?」




「おかしくなどはない!!これは、これは!!承認された実験なのだ!!」


「ま、まさか……お、お山が、お前に命令をっ!?」


「聖なる計画のための布石に過ぎん!!これも啓示であり、これこそが、女神イースへの最大の献身に他ならない!!ああ、ああ!!鳴け、鳴け!!虫たちよ、『ゴルメゾア』よ!!」


「き、『寄生虫』で……あのバケモノも、つ、『作った』のか……?」




―――『彼女』は笑顔のまま、『ゴルメゾア』に治った左手を伸ばした。


『ゴルメゾア』は、そのおぞましい猿と狼の混じったような巨体を揺らす。


部屋のなかにその上半身が侵入してしまい、ヤツの右腕が『彼女』に向かった。


抱きしめて守るような動作をし、やさし気に鼻を鳴らす……。




『きゅうううううううううう』


「ああ、いい子だよ。『ゴルメゾア』……さすがは、女神イースに選ばれた生贄の獣」


「そ、ソルジェ・ストラウスみたいに、魔物と契約しているのかっ!?」


「一緒にするなよ、魔竜などと!!この子は、たくさんの穢れなき者たちで作られている!!」




「ま、まさか。ひ、ヒトを犠牲に……っ」


「啓示のままに!!私は、あらゆる困難に打ち克つ!!」


「お、お前は……ッ」


「来るがいい、来るがいい!!二人そろってかかって来い!!私も、独りぼっちじゃないんだからなあ!!」




―――ビビアナを離して、フリジアは立ち上がる。


ビビアナも真似るように、並び立った。


戦力差は明白で、『ゴルメゾア』の圧倒的な巨体の前には暴発的な勇気も凍てつく。


ビビアナも、冷静さを少しは取り戻していた……。




―――何せ、フリジアが突撃して行くのかと心配もしたからね。


ジーの一族の屋敷は大切だ、記憶も思い出も怒りも悲しみも。


だけど親友の命は、それらに劣るはずもない。


感情で感情を押さえつけることだって、ときにはやれるんだ……。




―――賢いビビアナは、フリジアの『合図』に気づけたよ。


フリジアを心配して、あの鋭い洞察力を宿した視線を使っていたから。


この二人には、託されたものがある。


ミアからの、プレゼントだよ……。




「『ぶちのめしてやるぞ、レナスううううううううううう』ッッッ!!!」


「ああ!!来い!!来い!!背教者よ、背教者らしく、『ゴルメゾア』に喰い散らかされてしま―――――!!?」




―――フリジアは、尼僧にあるまじき行いをしていた。


嘘をついたんだよ、『突撃するかのように見せかけた』のさ。


『彼女』は狂信に陥っているせいで、判断力は鈍い。


見事に騙され、遅れを取った……。




―――『彼女』と『ゴルメゾア』の目の前に、『こけおどし爆弾』が飛ぶ。


ボクの傑作のひとつであり、ミアから贈られた品だよ。


二人は訓練をしていたんだ、もしものときの避難方法をね。


『こけおどし爆弾』が炸裂し、爆音と閃光が焼かれて壊れた部屋に満ちた……。




「せ、戦略的撤退だっ!!」


「『違うわ!!このチャンスに、あの『女』をぶちのめしてやるのよ』!!」


「……くっ。『ゴルメゾア』、私を守れっ!!」


『がるるるうううううう!!!』




―――賢い商人の舌も、なかなかに嘘つきなものだよ。


ビビアナの言葉は、まったくの嘘だった。


むしろ率先して、戦士たちが壁に開けた穴から隣室へと逃げ込む。


フリジアは、目をぱちくりさせながらもニヤリと笑うのさ……。




「さすがは、ビビだなっ!!」




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