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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百四十八


―――『彼女』の言葉に、戦士たちは緊張を強める。


直近に戦闘を経験している戦士たちだからね、その発想は実にシャープになるよ。


『敵が増えるのならば、さっさと一人でも多くの敵を殺しておくべきだ』とね。


正しくはある、『彼女』を排除するために斬撃を放ったのは……。




―――正しくはあるけれど、それでも戦いは不平等で不公平だ。


力と運が全てを支配するせいで、合理的な正しさなんて消し飛ぶときがある。


『そいつ』は、高速でジーの屋敷の外壁にぶつかっていた。


壁は吹き飛び、瓦礫が散弾となって部屋中に飛び回る……。




―――そのせいで、『彼女』の首は刎ねられることはなかったんだ。


ビビアナは、『彼女』の笑顔を目撃する。


狂人の笑みだったが、聖者じみた笑みとも言える。


『彼女』は信じていたからだ、今このときの生存こそが奇跡の証明だと……。




「ほうら、私は……ちゃーんと、女神イースに見守られているんだ!!」


「に、逃げなさい!!その『女』、貴方たちを……っ!!」


「や、やめろ!!レナス、戦士たちを、殺すなあ!!」


「殺すに、決まっている!!決まっているよ、私に殺意を向けたのだからなあ!!」




―――戦士たちは、集中し過ぎていたんだ。


だからこそ、ミスもしてしまう。


『彼女』への集中と警戒、それが『そいつ』の乱入で崩されてしまった。


虚を突かれるとね、集中しているほど空回りを起こしやすい……。




『がるるるううううううううううううううううううううううううううう!!!』




―――屋敷の壁を壊して、『そいつ』は叫んだ。


黒い獣であり、狼にも猿にも似ている。


おぞましい魔物のようで、桁違いの脅威であることに間違いはない。


『そいつ』と『彼女』に意識が分散してしまったから、避けられなかった……。




―――『彼女』は、『風』で刃を紡ぐ。


空間を切り裂く真空が、精密な集約を見せつけた。


戦士たちの首筋の近くだけを、かき切ってしまう。


最小限の魔力だからこそ、発動するまでの時間も短くて済んだ……。




―――恐るべき暗殺の技巧だ、ガルフが見れば手を叩いて褒めただろうね。


「本物の暗殺者とは、こう在るべきだろう!!」と言い出しそうだ。


ミアさえも、この精度は出せないかもしれない。


ある意味では、『彼女』は実に運任せでもあったから……。




―――『彼女』は信じ込み過ぎていて、猟兵とは違う。


ガルフなら、褒めたあとでヒゲをいじりながら注文をつける。


「最高の暗殺者だが、戦士としてはやや安定感には欠ける。マネするな」と。


あまりにも細い軌道は、敵の可能性を過小評価している証拠だった……。




「ぐ、があ……っ」


「お、逃げ下さい……ビビアナ、さま……っ」




―――即死させられない、何も出来ずにしばらくすれば死ぬほかないけど。


それも猟兵の流儀には反する、無意味に長く苦しませるなんて下品が過ぎた。


戦士たちは、ふらつきながらも『彼女』を槍で突こうとする。


あっさりと回避されて、戦士たちは床に転がっていた……。




―――それらはムダな行いだった?……そんなことは、もちろんない。


戦場では一秒であろうとも、一瞬であろうとも大切だ。


空間と時間の取り合いをするのが、戦いなのだからね。


ビビアナは判断力を使えた、『人買い』の洞察力が『彼女』の油断を見抜いたよ……。




―――生き残ったことに喜び過ぎていた、『彼女』は奇跡を感じたいから。


床に転がった敵を見下ろしたい気持ちになっていた、それも奇跡の証明だから。


だからね、ビビアナが突撃して来ても迅速な反応が選べなかったんだよ。


しかも、ビビアナは徒手空拳さ……。




―――戦場でのそれは、あまりにも弱い。


弱いから対処のための訓練を行いもしない、だからたまには効果がある。


『彼女』は、天才であり達人であるけれど。


ガルフは猟兵にスカウトはしないだろう、『絶対的な天才』じゃないからだ……。




―――武装に対しての訓練が過ぎていたから、非武装の拳への対処が分からない。


間抜けているようでいて、深刻なハナシでもある。


型通りの弓術を教え過ぎていたせいで、帝国軍は『ルファード軍』にやられたからね。


『彼女』もまた、集中し過ぎていて虚を突かれてしまったんだ……。




―――猟兵ほどの才能があれば、虚を突かれても反応で対処する。


『彼女』は、それほどの絶対的な強さを持っていない。


だから、顔をぶん殴られてしまった。


『女』にとって、最も大切な場所だから『効果的』だとビビアナは見抜いている……。




「ぐ、は……ッ。え、エルフ……混じりが……ッ。は、『狭間』が、私の顔にっ」


「殴ってやったわよ!!よくも、よくも……うちの社員を、殺してくれたわね!!」


「ビビアナ・ジーぃいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!!」


「させる、かあああ!!!」




―――フリジアが、飛び掛かっていた。


ビビアナが仕掛けたとき、フリジアもまたこの攻撃を企画していた。


連携の訓練も、していたからね。


二人はこの屋敷で、何もしていなかったわけじゃないんだ……。




―――『狭間』に対しての嫌悪と怒り、それに視野狭窄となっていた『彼女』。


フリジアが突撃しながら投げた『モノ』に、無意味に反応する。


「考え過ぎてちゃいけない、集中し過ぎてもな」。


ガルフは注意しただろう、フリジアが投げたのは『小さな塩の小瓶』だよ……。




―――まったくもって、何の意味もない。


種も仕掛けもない、ただの小瓶だ。


ここに運ばれた夜食にかけるために、用意されていたモノに過ぎない。


『彼女』が暴れたせいで、床に転がっていたのをフリジアはとっさに掴んでいた……。




―――ガルフは、それは褒めるだろう。


「戦場には、その場にあるものを使いこなせ。それで勝てることもある」。


塩が入っているだけの無害な小瓶にさえ、『彼女』は攻撃を放ってしまった。


おかげで、フリジアを打撃することは叶わずにタックルを受ける始末だ……。




「ぐふ……っ。こ、この、石頭……ぐ、ああっ!?か、噛みつくなんて、猿か、お前はああああああッッッ!!?」


「にげ……ろっ!!ビビアにゃああっ!!!」




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