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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百四十一


―――食い違う正義が動き出したとき、ヒトが選ぶ道はおよそ戦いだった。


悲しいけれど、それが現実でね。


正しいと信じていられるからこそ、相手にどんな行為だってやれる。


命を奪うなんて大それた真似は、やっぱり正しさがさせるんだよ……。




―――乱世にひしめき合う、いくつもの正義の獣たち。


罪深い牙を持っていて、お互いに喰らいつく。


ボクたちの正義、『敵』の正義。


商人たちの正義もあるし、カニンガムのような不穏な野心家の正義もある……。




―――極限状態で明らかにされるのは、ヒトの本性であり本質だ。


やさしい者もいれば、厳しい者もいるけれど。


どれもが自分らしくて、ヒトらしい価値観だった。


善意も悪意も、何ともヒトらしい特徴じゃないか……。




―――『敵』は隠遁を使いこなして、また一人を殺した。


それはメダルド・ジーの部下の一人、慌ただしく町中を走り回っていた男だ。


『敵』は、メダルド・ジーの身辺調査の情報を持っている。


当然だろう、ボーゾッド伯爵と『敵』はつながっていたのだからね……。




―――ビビアナ・ジーが『狭間』であることは、今日まで知らなかったけれど。


ジーの一族の周辺について、ボーゾッドと多くの情報を共有していた。


『敵』の思惑を達成するためには、ジーの一族の動向を調べる価値があったから。


『人買い』の罪は重たい因果で、彼らを締め付けてしまっている……。




―――『敵』は調べたくてしょうがなかったのさ、リヒトホーフェンの購入履歴を。


ジーの一族は有能な『人買い』で、奴隷の商品価値を明瞭に示している。


人種や性別や年齢や見た目なんて、バカでも見抜ける表面的な価値じゃない。


技能や生まれや魔術の才、それらの特技を教育や医療で伸ばすこともしていた……。




―――ジーの一族から『オルテガ』に流れた奴隷たちこそが、理想的だった。


理想的な『実験材料』だったんだよ、リヒトホーフェンからすればね。


だって、どんな質を持っている奴隷なのかが一目瞭然だったから。


『寄生虫』の研究に使われたのは、ジーの一族の『商品』が多くなる……。




―――『人買い』としての仕事の良さが、邪悪な医学研究と結びついた。


『人買い』の正義と職業倫理とプライドが、皮肉にも罪深い流れを助長したんだよ。


奴隷から利益を出すためであり、奴隷の安全のためでもあったのに。


役立たずの奴隷に、購入者がどれだけ残酷な扱いをするかは言うまでもない……。




―――ジーの一族なりの、『人買い』としての正義だ。


それが仇となってしまい、リヒトホーフェンの邪悪な研究を助けてしまう。


『寄生虫』を完成させるために、メダルド・ジーは協力してしまっていた。


正義と悪はいつだって表裏一体で、運命は皮肉を好むようだ……。




―――リヒトホーフェンは、セザル・メロを使い『懲罰部隊』を操っていた。


『懲罰部隊』はボーゾッドを騙していて、ボーゾッドは踊らされていた。


踊らされていたけれど、帝国貴族は顔が広いものだよ。


そして、敵の敵に利益目的で接近するのも実にヒトらしい……。




―――『敵』はボーゾッドに近づいていた、リヒトホーフェンと対立していたから。


実験狂のセザル・メロにも、学の足りない盗賊崩れの『懲罰部隊』にも見抜けない。


貴族は『秘密の社交術』を持っているもので、それは秘匿されたつながりだ。


『敵』は多くの情報を集めていき、一つの野心を心に芽吹かせていた……。




「……お前には、娘がいる。私と同じような年齢で、背格好も似ている。ジーの一族からの信頼もそれなりにはあるから、連絡要員にされていた。だから、殺されたのだ。だから、利用される……喜ばしいことだな。笑うといい」




―――殺した男を路地裏に引きずり込んで、彼の娘に『敵』は化ける。


彼の娘が身につけていた服は、用意しているからリアリティはあった。


もちろん殺して奪っているんだよ、彼の家族はもう誰も残ってはいない。


武装した乙女に化けて、『敵』はジーの一族の屋敷に向かう……。




―――隠れることはせずに、堂々と正面から。


『敵』は信じている、自分が運命に守られるだろうと。


それに相応しい努力をしているし、何よりも自分自身の正義を信じていた。


護衛の戦士たちは、当然ながら『敵』を呼び止める……。




「待ちなさい、君。ここは、メダルド・ジーの屋敷だ」


「一般人の立ち入りを許可していないよ。関係者以外は、誰も近づけるなと命令されているんだ」


「私は、ロマ・レーンの娘のレークです。レーク・レーン。父親はメダルドさまにお仕えしています。父に代わり、報告のためにやって来ました」


「……ロマの娘、か。ふむ……たしかに、あいつと同じ髪の色だな」




―――ソルジェ顔負けの変装魔術だ、髪の色を変えて印象を操作する。


『敵』も同じような術を使い、この屋敷への侵入を試みた。


デザインされた行動であり、ずいぶんと前からの狙いがあったのさ。


戦士たちは、このか弱く見える乙女に騙される……。




「ロマの代わり、か。なるほど、ヤツは忙しそうだからな」


「報告があるなら、オレたちに言ってくれ」


「はい。実は、南の城塞で殺人事件が起きたようです」


「さ、殺人だと!?敵の襲撃は、まだのはずなのに!?」




―――『敵』は、自分がしでかした殺人まで利用するつもりだった。


残忍であり冷酷であり、何より冷静だ。


高い練度と、おぞましいまでの信念に裏打ちされた行動力がある。


猟兵や『帝国軍のスパイ』のように、『敵』もまた諜報員の能力を持っていた……。





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