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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百三十九


―――『ルファード』の警備は、常識的に判断すれば十分なものだった。


『プレイレス』からの援軍も到着し続けているし、周辺地域からの助力もある。


帝国から取り戻した街は、帝国と敵対するあらゆる組織から見て貴重だ。


『ルファード』が健在である限りは、自分たちは襲われないかもしれないからね……。




―――帝国は奪還に動く、威信をかけてでも。


『ルファード』は周辺の亜人種や都市国家からすれば、反帝国の『盾』とるのさ。


それぞれの指導者たちに命じられ、政治力学も知らない若者たちが集まってくれている。


『オルテガ』の解放の報せも届き、若者たちの士気は高い……。




「オレたちも、もっと早くに到着していたらなあ!『オルテガ』の奪還に、参加できたってのによ!!」


「だよなあ。長老たちの判断は、遅いんだよ。オレたちだけでも、勝手に村を飛び出しておけばよかったぜ……もう、畑仕事も狩りも辟易だ。オレは、ストラウス卿の軍に、入りてえんだ」


「オレだって、ストラウス卿の兵士になりたい。『プレイレス』も、『ルファード』も『オルテガ』も、帝国から解放したんだ!!……きっと、帝都も……」


「ゆ、夢みたいな話だが、本当になりつつあるよな。ファリス帝国を、滅ぼす……っ。じゃ、じゃあ、つまり……ストラウス卿は、この大陸の新しい王になるのか?」




―――乱世の英雄に、向こう見ずな若い魂は惹かれるものだ。


昔も今も、若者が見つめるものは戦場の残酷さより英雄譚だからね。


軍隊を組織できる理由であり、ヒトが持つ本性だ。


この若者たちはソルジェが導く『勝利』に、自分も参加したがっている……。




―――もちろん、現実の厳しさを目の当たりにすれば彼らの意見は変わるかもね。


自軍の数倍もいる敵の軍列に取り囲まれても、お調子者たちが勇敢かは限らない。


落ち着いた不動の精神力の方が、勢いに頼る若さより有効なときもある。


もちろんヒトの真価は試してみなくちゃ、分からないけれどね……。




「若造ども!!さっさと警備につけ!!帝国兵が、夜の闇に紛れて攻撃を仕掛けてくるかもしれんのだぞ!!」


「は、はい!!」


「……威張り散らしやがって。『ルファード』の自警団が怠け者だってウワサは、オレたちの村にも届いていたのによ」


「……バカ、静かにしろって。あいつらは一応、オレたちのまとめ役なんだ。機嫌を損なっちまうと、前線から外されるかもしれん」




「そいつは、嫌だぜ!?せっかく、ここまで来た。戦って、槍働きを見せないと!!ストラウス卿の軍に入れないじゃないか!?」


「……だったら、揉めないようにしようぜ。連帯責任で、こっちまで責任取らされたら、たまったものじゃない」


「お、おう」


「若造ども!!自警団や軍隊というものは、規律によって機能するんだ!!ちゃんと、上官の命令を聞いて、さっさと持ち場に走れ!!」




―――若者たちは鋼をたずさえて、持ち場である南の城塞へと向かった。


南のエルフの避難民たちが、遠からず現れるはずだ。


彼らを追いかけて、『寄生虫』に支配されたままの帝国兵どももね。


その情報は、この末端を形成する若者たちにも伝わっている……。




「小さな戦いになりそうだぜ。『オルテガ』の援軍に、行きたい」


「でも、敵をたくさん倒せば……褒められるよ。金も……ストラウス卿の部下になる機会だって……」


「槍働きも、大きな戦の方が立てやすいはずだろ……」


「そ、その分、死にやすくもなる」




「ハハハ。ビビッてやがる」


「い、いや。そういうのじゃ、ないよ。本当さ!」


「強がるなって、笑いやしない」


「……笑ったじゃないか。ヒドイよ、君ってヤツは……」




―――『寄生虫』に操られた帝国兵の恐怖を、彼らは知らない。


聞かされた情報だけでは、リアルな戦闘の恐怖を理解するのは難しいものさ。


故郷の村でする雑談のように、ヘラヘラとしたしまりのない顔で語り合う。


ボクたちやメダルドにとって救いなのは、彼らの構成だ……。




「しかし。色々と集まってるなあ。ケットシーのオレたちに、エルフも。巨人族もいるし、ドワーフもちらほらと……」


「村じゃ、考えられなかったよね。他の種族と、戦列を組むとか」


「ハハハ!ストラウス卿の軍は、色々混じってるんだよ!」


「何で、お前が偉そうに言うのか……」




―――『禁忌』を喜ぶときがあるのも、若さの特権だった。


彼らは自分の政治的な信条じゃなくて、村を支配していた古い掟への反発を楽しんでいる。


配られた夜食を、一緒に食べているだけでもワクワクしたのさ。


種族を越えての絆なんて、実のところ作り上げるために特別な行いは不要だ……。




―――それに、この集団を作った若者たちは西からやって来た。


ギムリたちの村よりも、さらに西からね。


『プレイレス』の端っことも呼べる場所であり、そこには『魔法』が届いていた。


不思議な『幻』を見たのさ、赤い竜に乗った勇敢なハーフ・エルフの少女……。




「あれは、変だったけど。ストラウス卿が使った呪術の影響だっていう」


「ああ。ハーフ・エルフの子だろ。赤い竜と……」


「何かよ。アレを見た影響もあるんだろうなあ。オレ、ちょっと前まで、ドワーフとか嫌いだったのによ!」


「ドワーフのオレを前にして言うコトかよ。まあ、こっちだってケットシーのひょろっちいヤツは嫌いだった。『だった』だ……あの子は、『狭間』なのにストラウス卿の仲間で、活躍したんだろ?」




「ハーフ・エルフ……『狭間』も、ストラウス卿の軍隊の一員だった……」


「それぐらい、ストラウス卿は『何でも有り』の御方ってコトだ!!器が、大きいんだろう!!」


「お前みたいなやせっぽちでも、雇ってくれるかもな」


「一緒に雇われようぜ!故郷を飛び出して、皇帝の居城を滅ぼしに行くんだ!!」




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