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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百三十八


―――トーリー・タイズンは、善良ではある。


善良であって、常識的な人物だった。


だからこそ、この地域をよく表現してくれてもいる。


『狭間』に対して、明確な差別意識というものもあるんだよ……。




「わ、私は……彼女の不幸を、望んだりはしない」


「……だろうな。そうだろうとも」


「誤解はしないでくれ。『狭間』に対して、恨みがあるわけじゃない。だが、でも、その。だって……」


「……いいさ。世の中が、こんなじゃなければ……ッ。兄貴と彼女は、娘のために命を捨てずにすんだ。みんな、もっと幸せだった」




―――差別というものは社会構造であって、個々人の感情に基づかない。


それもまた一つの真実で、ボクたちが力尽くでも変えるべき対象だ。


トーリー・タイズンは、普通の人々だ。


『狭間』に対して差別的で、亜人種も本心では嫌っている普通の人間族だよ……。




「……とっとと、行こう。ストラウス卿に、相談しなくては……」


「あ、ああ。そうだね。そうしよう……レッドウッド隊長さんと、合流しよう。きっと、力を貸してもらえるよ。ストラウス卿は……亜人種びいきだから」


「……彼は、おそらくヒトが好きなんだよ。種族で、線引きをしない男だ。珍しいな。珍しいが、オレやビビにとっちゃ希望だよ」


「わ、私にとってもさ。彼は、解放者だから……その、メダルド。私を、嫌わないでくれ。個人的には、ビビアナさんのために尽力する。彼女の幸せを、祈れと言うのなら、ちゃんと祈るから」




―――情けないまでくしゃくしゃになった顔を向けられて、メダルドはうなずいた。


悪人ではなく、善良で普通な男をこれ以上いじめてやるつもりはない。


言質も取ったからね、ビビアナのために尽力すると。


それならば十分だ、英雄でもない小市民に期待可能な最大限だろう……。




「……祈ってくれ。もしも、オレがどこかでくたばっても。ビビアナが、いつか商売のためにお前と組もうとしたとき、あの子に協力してやれ」


「あ、ああ。もちろん、するよ。だが、君は……くたばったりしないだろう?」


「……さあな。働き過ぎなのは、確かだ。ボロボロなんだよ」


「そうだね。君は、本当に……よくやっている」




―――肩を貸してやりながら、トーリー・タイズンは想像した。


不穏に荒れる呼吸を聞いていると、メダルドがどれだけ『娘』を愛しているか分かる。


もしも、自分が『狭間』の親だったら。


ソルジェにも、この亜人種たちが活躍する戦にも大きな期待しただろう……。




「勝利が、状況を……良くするハズだからね」


「……オレが、守ってやれなくなっても、ビビが幸せでいられるように……」


「なるさ。もうひと踏ん張りだ、がんばろう。私も……協力するから」


「……頼むぞ。裏切ったら、化けて出てやるぜ。ジーの一族、総出でな……」




―――呪いのような言葉には、必死さの棘が生えている。


善良な小市民は、メダルドとその兄と両者の父親を思い出した。


厳格な『人買い』ジーの鋭い目たち、それらが夢に現れるだけでも恐ろしい。


口は災いを呼ぶのだと商人の教訓を噛み締めながら歩き、廊下でジャンに出会う……。




「た、タイズンさん?あ、ああ!?め、メダルドさん、どうしました!?だ、大丈夫ですか!?」


「……大丈夫だよ。オレは、まだ生きてる……」


「か、顔色がかなり悪いんですが……っ」


「……毒やら『寄生虫』やらを、盛られたからだ。それに……」




「メダルドは、『娘』さんを心配しているんだ」


「び、ビビアナさんを……?」


「……『カール・メアー』が、絡んでいるのなら……フリジア・ノーベルは、リスクだ」


「か、彼女は、ビビアナさんと仲が良いですっ」




「……あの子は、ビビを守ってくれる。だが、素直すぎる……っ。情報が、漏れているかもしれないだろう。『カール・メアー』は、亜人種も……『狭間』も狩るんだ」


「そ、それは、そうですが……ご、護衛は、しっかりとついているはずですから。安心して、ください」


「……嫌な予感が、するんだ」


「か、『カール・メアー』が、優先的にビビアナさんを狙ったりする理由は……」




―――ない、とは言ってやれなかった。


今夜のジャンは冴えている、ビビアナの価値も見抜けたよ。


『ルファード軍』の中心にいるメダルド・ジー、その『娘』だ。


『人質』として確保するには、有効過ぎる……。




―――もしも、ジャンが想像していた通りだとすれば。


『カール・メアー』の指揮官が、全てをデザインしていたら。


リヒトホーフェンの劣勢を知った瞬間に、動き出していたかもしれない。


カニンガムたちが動いたように、とっくの昔に……。




「……ビビは、オレの家族だ。オレが、『ルファード軍』の中心にいた。その時点で、十分に狙われる……」


「ご、ご不安は、ごもっともです。ここは、レイチェルさんに守ってもらいますので、ボクたちは、団長に報告をしに向かいましょう」


「わ、私も、ご一緒したく……ダメでしょうか?」


「い、いえ。メダルドさんを、支えていてあげてください。ぼ、ボクが、護衛しますので。では……行きましょう」




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