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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百二十六


―――女暗殺者の左腕が爆発する、『炎』と『風』に強化されたものだ。


至近距離からなら十分な威力があったものの、『巨狼』になったジャンは硬い。


針金のような硬さを持った毛皮は、槍の突きさえ通さないんだよ。


割り込まれたと悟ったとき、女暗殺者は魔力を弱めてもいたからね……。




――――ジャンは無傷で、その爆発を受け止めてみせた。


レイチェルは微笑み、勇敢な紳士を讃える。


「騎士らしいですよ、ジャン」。


彼女が無傷なことを知ると、『巨狼』の口もニコリと応えた……。




『な、何よりですっ!!』


「この、巨獣……しゃべった、だと……ッ」


「ジャンは、『狼男』。人間族ですが、いわゆる―――」


「―――『呪われた血族』、というわけか!!」




―――左腕は大きく裂けて、前腕の骨も割れてしまっている。


いわゆる開放制骨折であり、言うまでもなく大ケガだ。


あふれて垂れる血を、ジャンが見つめる。


女暗殺者はその視線に反応して、腕を振り抜いた……。




『わ、わう!?』




―――女暗殺者も、さすがだった。


あふれ出る血を『目つぶし』として利用して来たんだ、普通の戦士じゃやれない。


ただし、猟兵の反応速度を舐めてもらっては困るね。


ジャンはまぶたをしっかりと閉じることで、目を守っていたのさ……。




「大丈夫ですね、ジャン?」


『は、はい。大丈夫です……レイチェルさんも、き、気をつけて。こ、この敵、とんでもない暗殺者です!』


「ええ。油断はしませんよ。今は……守るべき方たちを守るとしましょう」


『で、です!!……まだ、火薬のにおいが、残ってますから』




―――爆薬で自分の前腕を吹き飛ばす、その痛みは尋常ならざるものだ。


常人ならば絶対に気絶していただろうし、戦士であっても耐えられないだろう。


クレイジーな自爆技であり、出血はおびただしく止血だって困難だ。


それでも女暗殺者は止まらない、間合いを開いて曲刀を片手で構え直す……。




―――レイチェルとジャンが、守るべき三人を背にするように並び立った。


爆音は『風』の結界を突破しているから、無理する必要はない。


すぐに仲間たちが駆けつけてくれる、ジャンもレイチェルもそれを理解している。


女暗殺者にとって、本当にあの自爆は最終手段だったわけだ……。




「はあ、はあ……」


「呼吸を明瞭にしていますね。そうやって、激痛と不安をコントロールしているのですか。褒めてあげたくなります」


「…………そこの、『狼』。『狼男』。お前……血のにおいがする。その血は……私の仲間か」


『……そう、です。他の襲撃者らしき方には、し、死んでもらっています』




―――レイチェルの導きで強化された嗅覚が補足した敵は、一人じゃなかった。


この屋敷に迫りくる、においのない空白。


それは三者いて、それぞれが別行動をしていた。


屋敷の外で見張りをしていた男をジャンは殺し、屋敷の屋根に上っていた男も殺した……。




『と、投降を提案しようかとも迷ったんですが。よ、よく訓練された戦士たちでしたから、それをする前に―――』


「―――奇襲で、殺したのね」


『は、はい。彼らも……火薬のにおいがしていましたから』


「ありえないわ。セザル・メロの薬は、効果を保っているはずなのに……」




『そ、それは……』


「ジャン。答えてあげる必要はありません。彼女は、情報を聞き出そうとしている」


『……っ!!そ、そうか……もう、戦う力もない……』


「油断するわけにはいきませんが、彼女はもはや詰んでいます」




―――女暗殺者は否定しない、レイチェルの指摘は事実だからだ。


レイチェルだけでも圧倒されたのに、ジャンまでやって来ているからね。


大量出血のせいで、頭に血が回っていなくても計算は容易い。


戦力差は絶対的であり、どう転んでも彼女に勝利はなさそうだ……。




―――だが、いまだに爆薬を身に潜ませている。


出血と共にどんどん魔力も失ってはいるけれど、まだ十分な魔術も使えるだろう。


この対応は、リスペクトだ。


手負いの彼女に、拙攻を試みる必要もない……。




「そ、そうですよ。ジャン・レッドウッド隊長殿っ。ここは、慎重に……あの女、重傷ですから。血を、な、流させたらいいんです。じきに、意識も失うでしょうから」


「いいアドバイスするじゃねえか。レッドウッド隊長さん、オレも賛成だぜ。その女は、失血死させるのが一番だ。暗殺者だが……それ以前に、もっと外道だ」


「ひ、人食いなんだよっ。こ、この人……っ」


『……ッ!!……ひ、人食い……』




「お、おっちゃんたちを、殺して食べようとしてたんだ。こ、怖がらせると、肉が、お、美味しくなるとかなんとか……ッ」


『…………あ、あなたは……っ。何を、考えているんですかっ!?』


「美味しいものは、口に入れたくなるでしょうに」


『ヒトを……ッ。た、食べるなんて……ッ』




―――ジャンのトラウマに突き刺さる事実だった、ジャンも人食いだから。


レイチェルのおかげで、血肉を『味覚』でも感じられているけれど。


それは普段ならばやれない行いだ、罪悪感と自分への恐怖心でね。


女暗殺者は出血のせいで青ざめながらも、その洞察力を行使する……。




「……お前には、分かるでしょうに。『狼男』。獣に化けるような連中は、大なり小なり、ヒトを襲っているものだ」


『ぼ、ボクは……ッ』


「食べたんでしょう。そして、美味しく感じた。私と、同じ趣味の生き物ね。話が合いそうな相手と、ここで出会えるとは、思っていなかったわ……」


『……っ。違い、ます。ぼ、ボクは……』




「私の仲間たちの肉も、食ったのでしょう……?だとすれば、否定しないで欲しいわね。罪深い、人食いの……同類なのよ、お前と私は」




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