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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百十七


「リヒトホーフェンが発掘させて、ここに集めた。『ギルガレア』の紋章から、『蟲の教団』に関わりがある石像だと見抜いて」


「こ、こんなに……集めさせたんですね?」


「支配者が変わり続けるような土地でした。迷宮都市と呼ばれるほどの混沌とした増改築も受けている。『蟲の教団』の拠点も、各地を転々としたのかもしれません。彼らが伝えていた『寄生虫』たちも……」


「あ、あちこちに分散するように、ほ、保管されていた……んですね。そ、それを、リヒトホーフェンは、見つけ出そうと必死だった……」




「娘と、孫娘の命がかかっていたのですから。持てる力の全てを使ったのでしょう」


「わ、分かります。大切な家族のためなら……人は、必死になるものですよね」


「はい。誰よりも残酷になる。本来の時分さえも、忘れ去って」


「……リヒトホーフェンは、これほど被害を、だ、出したくはなかったのでしょうか」




「医学に投資をするような人物ですからね。やさしくはあったのでしょう」


「や、やさしい……やさしい……って、怖いコトでもありますよね」


「ええ。その通りです」


「……お母さんも、そうでしたから……」




―――やさしいからこそ、狂気に至るときもある。


『侵略神アリアンロッド』も、レイチェル・ミルラも。


愛情のために、恐ろしい殺人者にだってなれる。


リヒトホーフェンも、そんな人物の一人だった……。




「『不滅の薔薇の世界』を創るための『生贄』として、この『オルテガ』を巡る争いたちは利用されていた。各地に分散して、『寄生虫』が入った石像を設置していれば……それだけ多くの戦いで流れた血を『生贄』に捧げられたのかもしれません」


「こ、この土地で起きた戦いを、ぜんぶ……『生贄』にしていた……」


「それを今の時代になって集めたのです。リングマスターには、神々の思惑を誘う力があるのでしょうね」


「りゅ、竜騎士姫から受け継いだから……ですよね?」




「『ギルガレア』の言うところでは、そうなのでしょう。『ゼルアガ』たちは、何とも執念深いというか……」


「ちゅ、注意しておくべきですね、ぼ、ボクたちも」


「ええ。リングマスターに、今後も他の神々が近づいてしまうのならば、私たちも対処しなくてはなりません。彼を、失うわけにはいきませんから」


「はい。神さまだって、殺します。これからも」




―――『魔王ソルジェ・ストラウスの騎士』、魔法の言葉を心で唱えれば良かった。


背筋も伸びて、口の流れるように動いてくれる。


罪深い神殺しを語るジャンに、迷いはなかった。


もちろん、レイチェルにもね……。




―――美しい『人魚』は、いつか天幕の下に戻るけれど。


ソルジェのための猟兵であることは、一生続ける気でいた。


あのサーカスのように、あらゆる者たちが自由に集まり生きていていい場所。


そんな場所をこの大陸に作れる、唯一の大魔王になると信じているからだ……。




―――帝国も大きな敵だけれど、『侵略神/ゼルアガ』だって大きな敵だね。


それがソルジェに近づくのなら、猟兵たちも新しい覚悟が要るかもしれない。


これからも神々を殺して、ボクたちの欲しい『未来』へと進むために。


つまり、新しい警戒の仕方が必要になるのさ……。




「『ギルガレア』は、倒されましたが……その脅威の全てが、去ったとも限りません」


「そ、そう、なんですか!?」


「『空に浮かぶ逆さまのオルテガ』を、リングマスターは継承していましたから。『歌喰い/ラウドメア』もそうでしょう。死んだとしても、権能の全てがこの大陸から消え去るとは限らないのです」


「た、たしかに……っ」




「ジャン。今夜の貴方は、いつにも増して積極的にリングマスターの役に立とうとしていました。私としては、それは貴方の本能が、何かしらの危機を察知している結果かもしれない……そう考えてもいるのですけれど?」


「……は、はい。その、な、何だか、ぞわぞわしているというか……っ。お、落ち着かない感覚が、体の内側にあるんです……っ。か、考え過ぎているというか、気が……立っているだけなのかもしれないですけど」


「考え過ぎならば、それで問題はありません。帝国軍や、帝国に雇われた傭兵隊よりも……『ゼルアガ』の企みの方が、想定するのは難しい」


「ちょ、直接、絡まれなければ……認識することだって、出来ない相手ですもんね……っ」




「そうです。だからこそ、ジャン。この石像を、嗅いでみてください」


「は、はいっ。この……お腹のところの、穴……ですよねっ」


「ええ。おそらく『寄生虫』が入り……各地で『生贄』にされた戦死者たちの血を捧げていた。これは、呪術の祭具とも呼べるものです」


「……呪術の、さ、祭具……そ、それなら。の、『呪い追い』を、組める……かもっ?」




―――ジャンは『狼』の姿に化けると、石像の腹に空いた穴を嗅いだ。


かび臭さと、古さに固まった土のにおい。


それらに混じり人血のにおいもあったし、それ以外の『何か』が嗅覚をくすぐる。


一体の石像に遺る痕跡では、ジャンにはそれが何か分からない……。




「それなら、他の石像も調べてみればいいのです」


『は、はいっ。がんばって嗅いでみますっ!』


「……土地を、意識するのも有効かもしれません」


『と、土地……ですか?』




「これらの石像が、配置されていた場所。ジャン、貴方の嗅覚ならば、それらの違いも分かるのではないでしょうか?」


『や、やってみます。た、たぶん。行ったことのある場所のにおいなら、わ、分かるかもしれません。こ、この石像たちも……そうか、あちこちに配置されていた……』


「場所を把握すれば、何かしらの兆候が見つかるかもしれませんからね。正確な情報を得る。それが、リングマスターや貴方の『呪い追い』を組み上げるコツなのですから」


『は、はい。き、きっと……『呪い追い』を組んでみせます……っ』




―――隠れた神の脅威を、探る行い。


ほとんど不可能なことでも、あるいはジャンにならばやれるかもしれない。


『アリアンロッドの息子』で、『狼男』の嗅覚を持つ。


『歌喰い』と縁の深いソルジェの『騎士』ならば、適任だろうと『人魚』は信じた……。




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