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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その九十三


 商人は大げさな首の使い方を継続する。


「任せてくれたまえ!!リヒトホーフェン伯爵とは、それなりに付き合いもあったからね!!……商いの手口を見せるような人物じゃなかったけれど、想像はつく」


「……それじゃあ、君に任せる。我々が派遣する部隊に、同行してくれ」


「うん!しっかりと、働くよ!だから……」


「……ああ、何度も言う必要はない。オレにとっても、家族は何よりも大切だ。一万枚の金貨よりも、はるかに」


「普段は、即答しないかもしれないが……こんな状況だと、大切なものが分かる」


 商人は振り返り、彼のことを心配そうに見つめる『家族』に対して、演技かかった満面の笑みを浮かべたまま手を振った。


「……そう不安がるな。『ルファード軍』が君のことも守る」


「う、うん。本当に、そうしてくれるとありがたい。家族のためになら、死ねるけど。一緒に食卓を囲みたいんだ、これからもさ」


「……戦闘は終わった。不安は、それほどない」


「正直だね。メダルド・ジー」


「……昔から、そうだったろう?」


「いいユーモアだ。君は、変わったよ。良い方に」


「……自分じゃ、分からないもんだ。とにかく、任せる。リヒトホーフェンの金の動きを把握しておきたいと、他ならぬストラウス卿がお望みなんだ」


「恩を売るチャンスだね。しっかりと、働く!」


 人材の確保は足りそうだ。ガンダラに視線を向けると、うなずいてくれる。無表情なのはいつものことだが、満足気だと見破れるのは長い付き合いのおかげだな。


「ジャン、彼と相談しながら、必要性の少なそうな書類は焼き払ってください」


「は、はいっ!!お、お、お任せくださいっ!!」


「緊張し過ぎですわね。見てられないと思うのは、母親だからでしょうか?」


 レイチェルの言いたいことも分かる。母親じゃないが、団長だからね。


「ジャンの副官役をしてくれるかい?」


「ええ。そう言われるのを、待っていたのです。リングマスターはいつも私の本音に気づいてくれるので、つい遠回しになってしまいますね」


「君とも長い付き合いだからな」


「そうですね。今度とも、末永くよろしくお願いします」


「ジャン、聞いていたな。レイチェルもついて行ってくれる。安心して指揮を執ってくれ」


「りょ、了解しましたっ!!か、必ずや、ご、ご期待に、こここ、応えますっ!!」


「ジャン、緊張し過ぎー」


『しすぎー』


 ……緊張し過ぎじゃあるが、こうやって経験を積んで行けば、すぐに慣れてくれる。ジャンにも……いつか、大きな部隊を率いて欲しいと考えているからな。良い育成になるかもしれん。


「レイチェル」


「なんでしょうか、ガンダラ?」


「あの商人は、保身に走る可能性もあります。当然のことですがね」


「ええ。嘘をつかないように、見張っておきますわ。とっさの嘘が上手な商人も多いですからね」


「レイチェルに嘘はつけないからな」


「見破りますので」


「そうなんだ。見破る方法とか、あるの?」


「ありますよ。ルチア、貴方にも近いうちに教えておきましょう。目の動き、小鼻のふくらみ方、汗や指の動き……嘘を見抜く方法を心得ていれば、交渉も上手になる」


「楽しみにしておく」


「では。ジャン、行きましょうか」


「は、はい。そ、それでは、皆さん。しゅ、出発しましょう!」


「商人さんも、こちらにどうぞ」


「ええ!すぐに参ります!!……ストラウス卿!!私の家族を、必ず守ってください!!トーリー・タイズン!!私の名前は、トーリー・タイズンです!!」


「任せろ、トーリー・タイズン。君の『家族』には、指一本触れさせん」


「安心しました。それでは、貴方のために仕事をいたします!!」


 ニッコリと商売用の笑みを見せたあと、トーリー・タイズンは緊張してギクシャクした歩行になっているジャンを追いかける。


「懸念は一つ、解決しましたかな」


「ああ。上手くやってくれるだろう。ジャンに経験値を与えられるのも、好ましい。十人の次は、百人、千人の長にしたいんだ」


「ジャン、出世しそうなんだ?」


「オレの騎士になる男だ。ガルーナ王の騎士ならば、それなりの数を指揮してもらうことになる。実戦で、鍛えられるのはありがたいな」


「『調整役』が見つかればいいわね」


「……見つかるさ。オレたち商人の目からは、金の流れは隠しきれない」


 メダルドの中年臭いニヤリとした表情に、ルチアは肩をすくめる。中年男のああいう顔は、乙女に受けが悪いことも多いよな。


「そういう流れも、読めるようになれば……傭兵としても一流になれるかしら?」


「お金のコトなんて、よく分からなくても猟兵にはなれるよ!」


「りょ、猟兵は雑なトコロがあるのかしら?」


「傭兵は古くからある職業だ。単純なものだよ。信じられるクライアントを見つけられるかどうかだ」


「……はあ。王さまになられる方の言葉とは思いたくないね」


「愛する妻の一人が、金については詳しいんだよ。ガンダラも、いるしな。鋼を振り回す以上の行いは、人材に頼った方がいい」


「そうかもしれない。帳簿に詳しいストラウス卿なんて、想像すると面白いもの」


「だろうね。まあ、商いに詳しくて損することはあまりない。メダルドから教えてもらうのもいいかもしれないが……」


「習うコト、たくさんあるから。今は遠慮しておく」


「……ちょっと、残念だ。オレは、若手の指導には定評がある方なんだがね」




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