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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その九十二


 状況証拠からの推測なんてことは、不明確である場合も多いものの、政治や軍事が絡むと力関係はシンプルにもなる。


 『帝国軍のスパイ』について、オレたちの理解は進みつつあるんだよ。ユアンダートを信奉しているが、それは政治的な価値観が一致しているわけじゃない。迫害されかねない『異端』である構成員たちの生存こそが目的だ。


「『カール・メアー』も『帝国軍のスパイ』も、ユアンダートと関わりが深くもあるが……必ずしも同じ価値観ではない」


「そうですな。『カール・メアー』は宗教的な異端を許せない。異教徒も嫌いですな。『熊神の落胤』や、特異な呪術師を内包する『帝国軍のスパイ』とは、そもそも反目する価値観に根差してもいる」


「それは、仲良くなれないってコト?」


「ええ。両者はどちらも皇帝ユアンダートの有力な駒でありつつも、超え切れない壁というものがある。諜報機関と政治団体……互いを認めることは、組織哲学の上で難しいのです」


「それって、不毛な関係だ。こちらにとっては、ありがたいことだけれどね」


「つけ込むべき、敵の『ほころび』の一つかもしれん。ジャン」


「は、はい!」


「徹底的に、『帝国軍のスパイ』対策をしておこうぜ。仕事の失敗というものは、不協和音を奏でるものだ」


 ヒトは失敗が大嫌いだからね。複数の組織が関わった仕事が失敗に終われば、お互いに責任をなすりつけ合うような悲惨な人間関係を晒すかもしれん。


「りょ、了解です!……そ、それでは、『見張り』と『囮』をしつつも……て、徹底的に敵を妨害するために、しょ、書物の類を焼き払おうかと考えているんですが……そ、その、だ、大丈夫でしょうかっ!?」


「ジャンさん、過激な作戦を思いつくんだ?」


「か、過激でしょうか……っ。も、もちろん。焼かない方がいい資料があれば、そ、それは避けたいと考えているんですけど……っ」


「いいアイデアだよ」


「だ、団長っ」


「ガンダラは、どう思う?」


「そうですな。『何か』を燃やしたとなれば、敵は『寄生虫』にまつわる資料が燃やされてしまったと考えるかもしれません。『帝国軍のスパイ』を遠ざけるには、良い面もある。もちろん、何でもかんでも焼き払うべきではありませんがね」


「どんな本を残しておくべきか、指示をしてあげればいいのですよ」


「……商業的な記録です。リヒトホーフェンは、人材と物資の『不法な管理』の達人でもありましたからな」


「『不法な管理』か。ハリートビー廃鉱を、自分たちの基地に変えてしまっていたし、『カール・メアー』や帝国貴族の調査隊からも、長らく『寄生虫』を秘密にした……バレたときには、『懲罰部隊』を影で操り、ボーゾッドを取り込んでいた」


「器用だよね」


『きよーだよね』


「達人や天才的な手腕ですよ。彼自身の顔の広さもフル活用したのでしょうが……それ以外にも、彼の人脈の内側で、自在に状況をコーディネートしていた『調整役』がいたのかもしれません」


「……ほう。実に面白い着眼点だな、ガンダラ殿」


「『調整役』がいた可能性について、貴方はどうお考えですかな。メダルド・ジー」


「……ここらの商いは、古い顔ほど有利になる。『王無き土地』の伝統でもあるが、都市同士が仲良くない状況も少なくない。そんなときには、政治的なしがらみから自由に動ける者が重宝される」


「そ、それが、『調整役』……?」


「……ああ。オレたちジーの一族のような大商人も、そうなる。『人買い』稼業のせいで、政治的なしがらみも起きるなんて状況でもあったがね……」


「帝国においては貴族の専売ですからな、奴隷の売買は」


「……そうだ。本当に困っていたよ。最終的には、暗殺されかけもしたが……とにかく、状況をコーディネートしてくれる者がいれば、暗殺を仕掛けられるリスクは減っていたかもしれない」


「じゃあ。いそうなのね?」


「……調べる価値は、大きいと思うぜ。『調整役』がいれば、きっと、そいつは政治的な理由ではなく、金が動機の人物か、集団だろう」


「『会社』という可能性もあるのですね」


「……あると思う。リヒトホーフェンがまとめ上げた組織は、どうにも毛色が豊か過ぎる。『群れを成した才能』を抱えておくには、『会社』という形は至極一般的だ。仮に、『調整役』がいなかったとしても、金がつないだ縁だろう。帳簿でも見つけられたら、リヒトホーフェンが何をしていたのか、手に取るように分かる」


「商人を派遣したくなるぜ」


「……同行させよう。『オルテガ』の商人をもう一人。オレを頼り、避難民のなかから走って飛びついて来た知人がいた」


「さすがに広い顔をお持ちですわね」


「……顔の広さもメシの種だよ。人脈は、やっぱり強い。ちょっと、待ってな」


 メダルドは避難民の集団の一角へと進み、手を高く挙げる。過度ににやけた顔のまま、何者かの名前を呼ぶと、その名前の持ち主であろう男は、戦場で無二の親友にでも再会したかのような大げさな態度で駆け寄っていく。


「おお!我が友、メダルド・ジー!!どんな用事でも、私に言いたまえ!!家族の安全を保障してくれるなら、何だってするよ!!」


「……ああ。家族も君も安全だから、安心してくれ。ただ、ちょっと、頼まれて欲しいんだ。リヒトホーフェンの屋敷を家探しするんだが……帳簿のたぐいを見つけ出して、確保して欲しいんだ」




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