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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その九十一


 ジャン・レッドウッド小隊は、またたく間に結成された。エルフと巨人族、人間族にケットシー……人種の混成部隊をガンダラは選ぶ。


「この人選の意図を、理解してください」


「は、はいっ。そ、その、いろんな才能を、つ、使うため……で、ですよね?」


「その通りです。『パンジャール猟兵団』と同じように、それぞれの個性を頼り、助け合ってください」


「りょ、了解です……っ」


「ジャン。あいさつをなさいな。貴方が、このチームのリーダーなんですから」


 微笑むレイチェルに背中を押されながら、緊張した小隊長が集められた者たちの目の前に進んだ。青ざめて震える顔が印象深い。成長しようとしているものの、極度の人見知りという性格が即座に修正されるわけもなかった。


「はあ、はあ、はあっ」


「過呼吸になりそうですね。ジャン、リラックスすることです。はい、深呼吸」


「わ、わかりましたぁ……ッ」


 すーはー、と大きな動作が行われる。ゆっくりと体に出入りした空気は、シャイな青年を少しは落ち着かせた。


「人前で行動するコツの一つは、自信を持つ。ジャン、貴方はプロフェッショナルです。知的な専門家なの」


「りょ、猟兵ですからねっ」


「そう。猟兵として鍛えられている。戦場の知識も経験も豊富です。それに誰よりも勇敢」


「ゆ、勇敢でしょうかっ!?」


「単独で敵陣に突入することを怖がりもしない貴方は、客観的に見て常識外れの蛮勇でしょうに。貴方が、そんな戦士を見たら、臆病者だとは思わないでしょう?」


「た、たしかに、そ、それはそうなんですが……っ」


「自覚しなさい。それがあれば、貴方が指揮する部下を、より統率しやすくなるでしょう。迷いない行動をさせられたなら、それだけ、死傷させなくなるんです」


「……っ!!」


 やさしいジャンには有効な説得だった。勇敢さは戦場で何よりも評価すべき資質の一つであるものの、無為な死傷ほど最低な結果はない。


「は、はい。が、がんばります……っ」


 堂々としていない指揮官はサイアクだ。指揮系統は明瞭な方がいい。ジャンも、ガルフ・コルテスの教えを受けた猟兵である以上、戦場と戦闘の常識は骨の髄まで叩き込まれている。


 引きつった笑顔であるが、それでも背筋を十人の戦士たちの前で伸ばした。


「ど、どうも。皆さんと、い、一緒に行動できて光栄です。じゃ、ジャン・レッドウッドと言います。こ、今回は、よろしくお願いいたします」


「こちらこそ、ミスター・レッドウッド」


「『狼』に化けて敵に突っ込んでいく姿を見ていますよ、レッドウッド隊長。貴方の力は、知っている」


「どんな命令でも従いますんで、遠慮なく申し付け下さい」


 尊敬はされているわけだ。当たり前か。戦場で活躍した者に、戦士は共感と敬意を捧げるものだよ。


 褒められるくすぐったさに、ジャンは顔を赤らめながら沈黙していたが……オレが助け船を出すよりも先に、レイチェルがその場を仕切った。


「では、このチームの行動方針を伝えてあげてください」


「は、はいっ。こ、これから……り、リヒトホーフェンの屋敷と、地下に作られていた施設に向かいますっ。帝国が、そこに敵を近づけるかもしれないからです。れ、例の兵士に寄生させていた虫けらや、その研究を……回収させたくはありません」


 戦士たちの表情に集中力が宿った。彼らも思い知らされている。『寄生虫』を宿した敵の厄介さを。


「ぼ、ボクたちの仕事は、て、敵が近づかないように、み、見張ることです。み、見張りながらも『囮』になるって意味もあるんです。そ、そのつまり……『皆でしっかりと守っていれば、そこに重要なモノがあるようにアピールできちゃいますよね』……っ」


 ああ。いかにも猟兵らしい。ガルフの教えには、いくつも系統がある。ジャンは『追跡術』については最高の専門家の一人だ。


「こ、この『寄生虫』って、すごく見つけにくいんです。り、リヒトホーフェンどもは、基本的には秘密にしていましたし……に、臭いを始め、痕跡で追いかけるコトは難しい。だ、だから……その、つまり……敵も、すぐには見つけられない」


「演技をすることで、『囮』にする。敵の注意を引き付ける効果もあるので、『目立つように警備する』と有効ですわね。『敵に間違った情報』を与えるのです。『我々が『寄生虫』を確保している』と」


「そ、そういうカンジですっ。これ、ゆ、有効だと思いますので……リヒトホーフェンの屋敷を警備するときは、め、目立って下さい」


 戦士たちはうなずいてくれる。


 ジャンも同調するように、引きつった顔ではあるが、うんうんとアタマを縦に振っていた。


「あ、ありがとうございます。て、敵も、堂々とは動かないはずですから……め、目立っても皆にリスクは少ないはずです」


「その根拠も、教えてあげてください。安心すると思いますので」


「え、ええ。そ、その……『カール・メアー』を、助けなかったので……か、彼女たちは『寄生虫』についての情報を得ていた……て、『帝国軍のスパイ』は、彼女たちを、守って情報を獲たかったはずなののに……しなかった。や、やれなかったんですよ。人手不足で」


「この街に潜入していた『帝国軍のスパイ』は、いたとしても少数でしょうね。今後、追加される戦力については未知数ですが」




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