表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4136/5090

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八十八


 馬を止まらせながら、笑顔のギムリはその背から転がり落ちるように地面へと降りた。


「おっと!?」


 バランスを崩して、その場に膝を突いてしまったよ。


「大丈夫、ギムリちゃん?」


「ははは。ああ、ケガはない。ただし、スゲー、疲れたよ……っ」


 長い戦いとなっている。オレよりも若いギムリの体力も、尽き果てようとしているわけだ。


 ギムリは地面を拳で突いて、その身を起こす。


 日焼けした肌によく合う白い歯並びを見せつながらね。


「まだまだ働くぜ!!正直、ルチアに負けたくねえんだよ」


 その発言に、ルチアは反応していた。レイチェルの胸から顔を離すと、涙目を拭いながら若い巨人族をにらんでいた。


「勝ち負けとか、仲間同士で競うものでもないでしょうに。仲良くやらなきゃ、帝国には勝てない」


「そりゃ、そうだけどよ。でも、やっぱり、ライバルだって。敵対しているわけじゃなくて、手柄を取り合うようなライバル関係ってのは、戦力面でもマイナスにはならねえだろ?」


「物は言いようか……」


「お前は、ストラウス卿たちと空で戦っていたんだ。オレは、ストラウス卿の傭兵だっていうのに、そばにいられなかった。そいつは、やっぱり失点に感じるんだよ」


「ストラウス卿は、そんなことで評価を下げたりしないでしょ?」


「当然だ。ギムリは、よく働いている」


「うんうん。一番に、私たちのトコロまでやって来てくれたんだもんね!」


「へへ。評価してもらえるのは、嬉しい。こっちも、空での戦いについていけなかった分は、しっかりと働きたかったんだ。死人だって、出てるしな」


『そ、そうだよね。い、戦をすれば、死傷者はどうしたって……』


「出た。オレの幼馴染も、何人か死んじまった。『オルテガ』から脱出するために集まったとき、その被害を知った……」


「勇敢に戦ってくれたことを、誇りに思うぞ」


「……ああ。ストラウス卿にそう言ってもらえれば、浮かばれる。だけど、まだだよな。まだ、戦いは……続いている」


 『守備』的な性格に生まれついたギムリらしい発想だった。汗を浮かばせた若い首は北東へと振り返る。迷宮都市『オルテガ』の城塞が見えるが、はるか北東の敵意に思考を巡らせてくれていた。


「……ストラウス卿、次の一手は、もう考えついているかい?あれば、ガンダラさんたちに届けるし、もっと具体的な指示があるなら、仲間にも伝えるぞ。それとも、まずは、みんなで相談するべきかな……?」


「すべきことは決まっている」


「さすがだ!それで、何だい?」


「投降した帝国兵と、その『家族』を、しっかりと確保する。人質として、使うんだよ」


「そう、か……このまま、連戦するよりも……交渉で時間を稼いだ方が、有効か」


「心理戦と情報戦にもなる。逃げた帝国兵もいれば、『カール・メアー』の尼僧たちもいるのだから。リヒトホーフェンの行いは、敵にも伝わっていく」


 娘や孫のために選んだ道だったことは確かだ。その動機は、とてもヒトらしいが、戦士としても軍人としても、してはならない選択だった。


「リヒトホーフェンは自分が守るべき民を、死なせる選択をした。『カール・メアー』も襲い、兵士に虫けらを寄生させた。この事実を、広めてもらわなくてはな」


「帝国貴族が、つまりは、帝国を裏切った……って形なわけだ。そいつを、広める……情報戦ってのは、そういう戦い方か」


「ぶつかり合うだけが、戦いではない。帝国が、悪事を行ったのなら、広めればいい。迷ってくれたなら、それだけ敵も弱くなる。弱くなれば―――」


「―――こちらの死傷者も、減る」


 ギムリにとっては、それこそが最も重視すべき点だった。幼馴染を何人も失ったばかりなら、なおさらのことだ。


 ……野蛮なガルーナ人としては、もっとシンプルに鋼を振り回して敵に突撃していきたくもあるが……大勢を背負っている。死傷者は、減らさなければならん。そうでなければ、勝てない。


「ギムリ、働きたがっているな」


「アンタからの仕事が、欲しいぜ!」


「仕事をくれてやろう」


「おう!命令してくれ!」


「ガンダラと戦士たちに伝えてくれ。空からもう一つの『オルテガ』が落ちて来る脅威は去った。捕虜をしっかりと取り、『オルテガ』の防衛体制を整えるとな!」


「イエス・サー・ストラウス!!……もう一働きするぜ!!」


 汗をかいた馬を撫でながら、若い巨人族の身体が馬の背へと飛び乗った。


「ヒヒン!!」


 訓練の利いた馬は、夜でもしっかりと走る。城塞内での戦いがメインだったおかげで、移動の疲れもいくらか回復していたのかもしれん。あるいは、『オルテガ』で見つけた馬だったのかもしれないな。


「……はあ。あいつ、働き者だなぁ」


「貴方に負けたくないんですよ。切磋琢磨し合うライバルとして」


「男って、馬鹿なのかな?」


「可愛らしいじゃありませんか」


「そうかしら?」


「もう少しオトナになると、分かりますよ」


「……レイチェル・ミルラがそう言うのなら、そうなのかもね。でも、今は、分からない。今は……今は、そうね。私も、仲間たちのために、すべきことをしたいわ。『ギルガレア』さまのためにも、泣いてばかりじゃ、いられないもの!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ