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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八十七


 『侵略神/ゼルアガ』よりも強い存在。そういったモノがいる……想像が及ばない領域ではあるが、『ギルガレア』が遺してくれた言葉なら疑う必要もない。


 そして。


 わざわざ忠告してくれる理由もな。


「……そういうモノが目の前に現れたとしても、負けないようにしよう」


『…………相応しい言葉は、何だろうか……闘争の因果に、吞まれているようなストラウスの竜騎士たちを前にして……』


「信じてくれるのならば、『強くなれ』と言ったところだ。勝利することが、オレたちには必要なのだからな。託されて、背負っているものは多い」


『……そうだな……お前たちは、どうしても力を、求め続ける……』


「世界を変えなくてはならん。力尽くでな。戦いからは、逃れられんのだよ。そんなオレたちに、託したのであれば……心配するよりも、期待しておくがいい」


 『ギルガレア』の双眸がゆっくりと開いた。こいつらしく、真っ直ぐな瞳をしている。不器用で必死で、マジメなヤツだった。


『……勝て。あらゆる敵に、勝ってみせよ』


「ああ。約束する。オレは、二度と戦に負けん。竜騎士姫とアーレスが守ったガルーナを、奪い返す。多くの者が、生きていていい『未来』を作るぜ」


 それが、オレたちと『ギルガレア』をつなげている共通の願いだからな。


 ルチア・クローナーに抱かれたまま、罪科の獣は微笑む。


 ……やさしい神さまだった。オレが知る神さまどもは、どいつもこいつも邪悪な連中だったが。こいつだけは例外だ。


「さらばだ、友よ」


「……あ……っ!!」


 風に融けるように、『ギルガレア』の頭はこの世界から消え去った。ルチアの腕が震えながら、永遠の不在を確かめるように動く。鍛錬に絞り上げられた身体に、彼女自身の長い腕が巻き付いた。


「……『ギルガレア』さま……っ。さようなら……っ」


 『南のエルフ』たちに伝わっていた神さまの一人は、こうして消えたのだ。ルチアがこの場にいてくれたことは、大きな救いになっただろう。


「やさしい神さまでしたわね」


「……う、うんっ。本当に、やさしかったんだと思う。て、敵になって、戦い合ってしまったけれど……目的は、違えてしまったけれど……やさしかったわ」


「おっちゃんは、誰かのために戦っていたもんね」


「うん……っ。み、見捨てられなかった……こ、『孤独』に苦しんで……誰も救えなかった魂を……救ってあげようとしただけだった……ッ」


 ボロボロとこぼれる涙を、彼女は隠さない。


 泣くことが手向けとなるかもしれん。戦士であったとしても、ときにはそんな夜があるものさ。


 レイチェルがその腕にルチアを抱き寄せると、母性のあふれる声音でささやく。


「……泣いてあげなさい、ルチア・クローナー。『南のエルフ』の一員として、あの気高い神を悼んであげなさい。それは、遠くから来た猟兵にはやれないことです。あの神は、貴方たちの神なのだから」


「う、うん……っ。ありがとう、レイチェル・ミルラ……っ。ちょっとだけ、胸を貸してね……っ」


「ええ。いいですとも。勇敢な乙女に胸を貸せるのは、名誉ですから」


 ……『ギルガレア』のための涙が流されながらも、世界は止まらない。空の気配が変わったことに、ストラウスの竜騎士は気づく。


「お兄ちゃん、空が……元に戻ったよ」


「ああ」


 空にあったもう一つの『オルテガ』は完全に消え去り、星たちも戻っている。中海のにおいを帯びた潮風も、地平線もだ。


「地上に戻れたらしい。『オルテガ』は、本来あるべき場所に、戻って来れたようだ」


 その言葉にジャンが反応する。ぽひゅん!と音を立てて、『狼』の姿に化けると、鼻をクンクン鳴らしながら確認を始めてくれた。


「ジャン、みんなのにおいはする?」


『は、はいっ。た、待機してもらっていた、ドワーフたちのにおいも、します。あ、あの廃鉱から救出した人たちの……そ、それに。ぞ、ゾロ島の漁師さんたちの船のにおいも……こ、ここ、『オルテガ』が最初にあった場所に、も、戻っています!!』


『やったー!もとのところに、もどれたんだ!』


「良かったね。とんでもない場所に戻ったりしたら、タイヘンだったもん!」


「ああ。戦略的に不利だったからな」


 帝国軍に不穏な動きもある。『オルテガ』の位置が変わっていれば、ここを素通りされて、『ルファード』に攻め込まれることになったかもしれん。


 ……その懸念も、なくなった。


『……あ。ぎ、ギムリさんが、来てます』


「ギムリか。ガンダラからの指示といったところだろうな……」


 馬を走らせている巨人族の青年がいた。ゼファーの巨体で、こちらを見つけたらしい。


「おーい!!ストラウス卿!!」


 若者らしい満面の笑みを浮かべながら、その腕を大きく振り回していた。


「さすがだ!!空から落ちて来ていた町が、消えたぜ!!デカい不気味な薔薇も!!つまり、アンタは勝利したってことだよな!?」


「ああ。『蟲の教団』の脅威は去った。ゼベダイ・ジスも、死んだ」


「そうか!!やっぱり、アンタはとんでもない男だよ。こんな前代未聞の現象を、見事に解決しちまいやがった!!ああ、オレたち、全員、死なずに済んだぜ!!」




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