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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八十四


―――空を焦がしながら迫る、巨大な火球。


漆黒の軌跡は正面から挑んだ、小細工など不要である。


『ラウドメア』は竜騎士姫を真似し過ぎている、まるで『ヒトのようだ』。


推し量ることが難しい『ゼルアガ』の権能ではなく、『魔力を使っている』……。




―――「ならば、読める!!お姉さまの力を借りたというのであれば……ッ」


『なおさら、読めるぞ!!たとえ、『歌喰い』で記憶が消し飛ばされたとしても!!』


「理想的だと考える力の使い方を想定すればいい!!大きな力ほど、読解も及ぶ!!」


『タイミング一つで……突破してやるぞッッッ!!!』




「正面から、挑むなんて……無謀が過ぎるわ……ッ」


「ううん。これしかない」


「最善策だ。怯まなければ、勝てる」


「太陽みたいな火球に突っ込むのに、怯まないなんて……やっぱりムチャなハナシだわ」




―――羽ばたきと落下を合わせて、流れ星のように真っ直ぐに。


『歌喰い』に喰われた記憶は戻らないままであるが、戦いは必然に至った。


アーレスはその全身を魔力で補強して、この突撃に挑む。


それは『龍の焔演』、竜騎士姫の奥義であった……。




「わ、忘れているはずなのに?お、奥義を使えた……?」


「他に手段がない。それだけに、自ずと道は似る」


『うん。『どーじぇ』とはじめたあったひも、そうだった。おいつめられたとき、ぼくは、『りゅうのほむらの』をつかえたの!』


「アーレスも、使えるよね。忘れていても、血には刻まれている。竜騎士姫と、いっしょに戦って来たパートナーだもん!」




―――『風』で速さを、『雷』で力を強めた。


突撃していく頭部と牙には、『炎』で鋭さを与える。


火球にアーレスと『影』は正面から突撃し、空を焼き払うほどの爆発が生まれた。


北方諸国のあらゆる国から、天に暴れる炎は見える……。




―――想像していた以上の威力であり、地獄のような痛みが頭部に走った。


突撃に迷いは一切なかったものの、背にいる『影』を庇ってもいる。


そのために首を動かして、彼女が吹き飛ばないように気を遣ったのだ。


結果として、アーレスの頭は揺さぶられて意識は飛ぶ……。




―――「貴方は、本当に……すばらしい竜ですよ、アーレス!!」


「私は吹き飛んでも良かったのに、それでも守ってくれた……」


「貴方は、お姉さまから……そういうやさしさも得たのでしょう……」


「……ですが。ガルーナの竜騎士は、竜の負担にはなりません!!」……。




―――小さな身体が、竜の背の上で必死に動いた。


意識を失った竜に、飛ぶべき方向を伝えるために。


意識はなかったとしても、アーレスは『影』が与える技巧に反応する。


もがくように翼を羽ばたかせ、いまだに空でうねる灼熱の激流を乗り切った……。




―――アーレスは意識の消失のなかで、幻想を知覚する。


『誰かと共に旅をした気がする場所』を、いくつも巡るのだ。


『誰かと初めて会った罪深い母竜殺しの夜空』、『誰かに片目を奪われた森』。


『誰かを背に乗せて、王国の内外にいる強敵たちとの度重なる死闘を勝利した日々』……。




―――遠くまで旅をして、ヒトと生きる世界を認識していった。


竜らしくないような気もしたが、いつの間にかその暮らしをも受け入れる。


大嫌いだったはずなのに、今では違っていた。


赤毛の『誰か』が、この世のどこでもない場所で微笑んでいる……。




―――風に撫でられたような感覚を得て、アーレスの意識は覚醒した。


即座に状況を理解して、飛ぶべき軌道を貫く。


加速しなければならない、『ラウドメア』の火球を抜けたのだから。


守るためではない、勝利のためにこの道を選んでいる……。




―――『勝って、歌を作るぞ!!オレたちの歌だ!!』


山よりも巨大な『ラウドメア』が、その目を見開く。


勝利を確信していたのだ、この火球を『貫かれる』などと想像してもいない。


だからこそ、アーレスは巨敵のふところに飛び込めた……。




―――竜は牙を剥いた、『炎』に強化された鋭さがそこにある。


狙うべき場所は一つだけ、『ヒトは魔力を血で運ぶ』のだから。


『ラウドメア』が竜騎士姫を模倣したとき、身体構造も再現していた。


最も多くの血が流れる『弱点』に向けて、アーレスは牙を叩き込む……。




「悪神の『首』に噛みついた。それが、お前たちの歌だからな。アーレスよ」




―――天も地も揺らしてしまうほどの大きさで、『ラウドメア』が絶命を叫ぶ。


火山の噴火のような赤い奔流が、悪神の血が。


その巨体から噴き上がり、失われていく。


あらゆる力を使い果たした上で、大きな術を使った直後の致命傷……。




―――人々を『歌喰い』の恐怖で呑み込んだ悪神に、限界は来た。


山よりも巨大な全身が、大地に横たわっていく。


命を失い、消滅してしまいながら。


悪神の危機は、こうして終わりを告げる……。




「勝った……勝てましたね、アーレス……っ。これで、これで……っ。ガルーナも、お姉さまの忘れ形見である、お子さまたちの命も……っ。守られる……っ。ああ、ああっ。お姉さまの……名前を、こんなに、お呼びしたいのに……っ」


『……オレの名を、呼ぶがいい。オレは、あいつの分まで、背負っていく』


「……っ。はい。私も、ですよ、ザード……ううん。アーレス。私も、この命が尽き果てるそのときまで……いいえ、死んだあとでも……ガルーナとお姉さまに、お仕えします」


『それでいい。お前は、賢いからな』




―――竜騎士姫の技巧と知識を、何百年の後の世にまで伝えることで。


死をも越えた忠節とすることを、『影』は選ぶ。


愛する主と、憎むべき敵の消えた世界を生きながら。


『影』は、大いなる使命を果たすことになるのだ……。




「でも、今は……さあ!アーレス!皆を安心させてあげましょう!!勝利を、歌うんですッッッ!!!」


『GHAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』





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