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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八十三


―――アーレスは天の高みに君臨した、太陽を背負ったまま焔を組み上げる。


牙の歯列の奥に、黄金の煉獄を呼び寄せた。


「一撃で、倒しましょう」


『……おうよ!!……真っ向勝負で、勝ってやればいい!!』




―――アーレスが雄叫びに揺れる歌と共に、火球を撃ち放った。


その黄金は太陽のように、巨大な輝きである。


たった一つであるが、最強の威力を持っていた。


『ラウドメア』は無数の枝の先から魔を放ち、両者の力は真正面から衝突する……。




―――太陽のようにかがやく黄金の火球が、悪神の放った無数の魔を砕く。


枝の群れが『ラウドメア』の本体を守ろうと集まったとしても、瞬時に枝は吹き飛んだ。


「勝てませんよ、アーレスの力には」


太陽にはガルーナの風も込められていたからだ、この王国の空は竜に力を貸した……。




―――無数の攻めを圧し潰しながら、火球は『ラウドメア』を直撃する。


塔のように巨大な威容も、この力の前には役に立たない。


天を黄金に焦がす強いかがやきと、雲を揺さぶるほどの爆風だ。


その中心にいた『ラウドメア』の巨体は、粉々に粉砕されていく……。




「……さすがは、アーレス」


『うん。りゅうは、やっぱり、いちばん、つよい!!』


「ガルーナの風も借りていたしね。そういう力の使い方も、竜騎士姫と……あの子が作ったのか……」


「こ、これで、勝ったんですよね?…………え。ま、まだ、あいつは、い、生きているんですか?」




―――破壊的な爆熱に、『ラウドメア』の全身は引き裂かれていく。


完全なる力負けを悟りつつ、死の恐怖に怯えた。


『しにたくない、しにたくない、しにたくない……たすけて、たすけて……』


北方諸国を暴れ回り、数え切れないほど殺した邪悪も自らの滅びは怖い……。




―――みじめなまでに強く願望した、滅びを避けるための方法を与えてくれと。


自らの『歌喰い』で奪い取った力に頼る、『最強』に勝るためには『最強』が要る。


あまりにも身勝手な恐怖が、みじめで罪深い選択を『ラウドメア』にさせるのだ。


『……たすけて、『竜騎士姫』ッ』……。




「……っ!?こいつ、自分で、殺しちゃった竜騎士姫に……っ!?」


「『ラウドメア』の記憶に君臨していた『最強』とは、彼女だったのでしょう」


「それだけ高く評価していたのね。でも……ついさっきまで、戦っていた相手に……頼るなんて」


「死にたくないなら、何でもする。それだけ『ラウドメア』も追い詰められていたんだろうよ」




―――『歌喰い』の力により、『最強』の似姿が作られていった。


大樹のような巨体は焼き払われながらも変異して、より高く空へと伸びる。


それは女の形へと化けるのだ、赤いかがやきを帯びて。


長く揺れる赤髪に、すらりと伸びた手足……。




―――山よりも巨大な姿であり、ヒトとは異なり赤い光を全身が放つ。


圧倒的な威容であり、異形であったが。


アーレスと『影』は、思い出せないはずの彼女を感じ取れる。


「お姉さま……ッ。お姉さまの、姿なのね……ッ」




―――戦うための貌である、笑顔を浮かべたまま涙もあふれた。


山より巨大な姿となった悪神に、怯えることもない。


愛と怒りと果たすべき義務が、二人にはある。


竜騎士姫の妹分と、竜騎士姫に仕えたガルーナの竜として……。




―――熱い涙をぬぐい捨て、『影』は巨敵を見据えて知性を使う。


どうすれば勝てるのか、すぐに考えなければならない。


『……素直に言っていいか?……オレは、今ので、ほとんど力を使い切ったぞ』


「ええ。知っています。それでも、道はありますから」……。




―――勝つための道は、ただ一つ。


「ヒトの『姿』に似せたのであれば、それが仇ともなります」


『…………ああ、なるほど。ヒトの『弱点』を、突けばいいってことか』


「お姉さまを真似したことを、逆手に取ってやりましょう」……。




「……りょ、猟兵みたいな考え方をするんですね。こ、このケットシーさん」


「知識でも強くなれる。冷静な判断力でもな」


「ストラウス卿も、『山より巨大な悪神』の『弱点』が、分かっているのね?」


「まあな。予想もつくし、アーレスの歌をオレは知っている。言うは易く行うは難し、といった方法だが。アーレスと彼女は、本当に勇敢だよ」




―――竜騎士姫の姿を奪った『ラウドメア』は、空を見上げた。


全身の魔力を操って、彼女の両手のあいだに『火球』を作る。


太陽に殺されかけたから、それをそのまま真似てやるのだ。


『最強』に勝つには、『最強』が正しいはずだと考えついて……。




―――「……という方法で、いきましょう」


『ハハハ!……ああ、いいぜ。それがいい。他に勝ち目はないな』


「魔力だけじゃない。体力も、こちらには残っていません。これで、終わらせます」


『いい根性していやがるぜ。さすがは、あいつの『妹』だ』……。




「……えへへ。ケットシーで、竜騎士で、『妹』なんだね。私たちと、同じた」




―――『ラウドメア』が吼えて、破壊の火球を空へと撃った。


太陽が迫るような光景に、アーレスと『影』は牙を見せつけながら笑うのみ。


残りの体力も魔力も少ないのならば、ただ一瞬に全てを注ぐ。


やるべきことが一つなら、迷うことも怖がることもない……。




「そうですよね、お姉さま!!……歌いなさい、アーレスッッッ!!!」


『GHAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』




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