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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八十二


―――幼い使い方の声は、捨てていく。


竜騎士姫に対して、密かに甘えていた声の質は終わりを告げた。


雄々しき言葉と共に、空へと向かう。


漆黒の旋回は、高みへと昇るのだ……。




―――疾風のような速度であるが、異変は起きている。


竜騎士姫と共に培っていたはずの『飛び方』さえ、アーレスは忘れていた。


教訓を知らない荒々しい野生の飛翔に、『影』は驚いてしまう。


吹き飛ばされそうになるが、身体に刻まれた反射が姿勢を御した……。




―――『心配しないが、言っておく。落ちるなよ』


「はい。絶対に落ちたりしないから、貴方の好きに飛んでください」


『オレの飛び方は、おそらく、今までよりも……』


「ずっと狂暴でしょう。それで、いいんです」……。




―――「最高の飛び方を、求めてくれればいい。そこに、お姉さまはいる」


『なるほど。それで、いい。それが、いい。オレたちには相応しいな!!』


「『最強』になるんです。そこを目指せば、思い出せる……」


『オレたちは、いつだって『最強』を目指している!!』……。




―――『歌喰い』に奪われたとしても、未知ではない。


残滓のような感覚が、二人に道しるべを与えてくれる。


考えればいいのだ、『最強』を求めればいい。


忘れて奪われた記憶も知識も、その峻厳たる道にいれば出会えるのだから……。




―――冷たい風の中で、『影』は瞳を閉じる。


ケットシーの感覚を研ぎ澄まし、アーレスの飛び方とガルーナの風を探った。


爆発するような飛び方であり、獰猛な力の奔流が翼に宿っている。


風を貫くような、力を見せつけるような飛び方だ……。




―――「……アーレス、きっと、こうです」


竜の背の上で、『影』は細い身体を動かした。


飛び方に修正を加えていき、アーレスはその変化を妙に気に入る。


おそらく、『影』は竜騎士姫の技巧の一端を探り当てていた……。




「……すごい。私と同じ、ケットシーの竜騎士……っ」


「ミア、嫉妬していますね」


「……うん。当然だよ。そんな短時間で、飛び方を見つけるなんて……」


「いい表情ですよ、ミア。天才である貴方には、嫉妬が足りないときがある。これは大きなプレゼントになるでしょう。かつての天才からの」




―――野生の荒々しさは生まれ変わり、狂暴ではあるが洗練が成る。


風に乗るような翼の動き、風を選ぶような首のしなりが加わった。


漆黒の軌跡は安定し、ガルーナの竜らしい飛び方を獲る。


『最強』を求めれば、やはり竜騎士姫を取り戻せると確信した……。




―――悪神は空に君臨する気配に、牙を剥いた。


ストラウスの領地を突き破り、高く高くへと伸びていく。


邪悪な塔の姿か、あるいは大樹の姿なのか。


うごめきながら空に広がる枝の群れは、はるか遠くの地にまで恐怖を伝える……。




―――「……これが、『ラウドメア』……ッ。お姉さまの、仇……ッ」


『そうだ。今から、ぶっ殺してやるぞ!!』


「アーレス、速攻で決めます!!この巨体を相手に、長期戦は不利です!!」


『いい判断だ!!こいつに、もう何も喰わせたりはしない!!』……。




「……アーレスには、体力が残っていなかったんだね。だから、推し量れていない相手に、速攻を選んだ……うーん、賢い竜騎士……っ」


「竜騎士の技巧については、私は分からないけど。判断力と覚悟が、すごいって思うわ。悪神に対して、初見で……そんな判断力を使えるなんて……」


「学ぶべき点です。それは、戦士としての心構えゆえのこと。その若さで到達していたということは……彼女は、その精神力を鍛えることで、『最強』を目指した」


「賢さが武器だったのだろう。客観的に、最良を選ぶ。恐怖も迷いも『無視して』な。とんでもない精神力だ」




―――無数の枝が、空を引き裂く鞭の乱打と化した。


アーレスの描く空の軌跡を、悪神の攻めが追いかける。


回避するのが困難であればあるほどに、二人は喜びもした。


『最強』でなければ躱せないならば、ここで『思い出せばいい』……。




―――『歌喰い』から、奪い返すのだ。


竜騎士姫が遺すべきであった竜乗りの技巧を、知識を。


この極限の戦いの中から、見つけ出していけばいい。


記憶にない懐かしい『最強』を、二人は感じ取って笑う……。




―――『ラウドメア』は怯えるのだ、アーレスの飛び方の成長に。


疲れ果てて竜騎士姫を失った、弱くなるはずだ。


『ありえないこと』が再び起きている、力を失った者が立ち上がる光景。


それを粉砕して、『安心』するためにこの土地に来たのだから……。




―――怯えは怒りを生み出して、攻めの手数を増やしていく。


アーレスと『影』は、巧みな飛翔で全てを躱してみせた。


誘導してもいる、高く高くへ。


距離を作って攻めの密度を減らしてやるためだ、この飛び方には戦術があった……。




「……ん。これ…………そっか。私たちに伝わっている飛び方は…………」




―――『ラウドメア』が怒る、無数の枝の先端に。


破壊の力が集められた、おびただしい数の魔術の砲撃だ。


逃げられぬほどの数で、自らに恐怖を与える者たちを滅ぼせばいい。


正しい戦術であり、それゆえに……。



「読めるんだよね。全部じゃなくても、ちゃんと……技巧が導いてくれる」




―――「来ますよ、あちらも力を使うつもりです」


『ああ、正面から力で挑む。それが、最速の決着のつけ方だ』


「……アーレス。こちらも、堂々と迎え撃ちましょう」


『任せろ!!この間合いならば、オレの全力をあいつに受け止めさせられる!!』……。




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