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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その七十


 物語は語り継がれるだろう。『ギルガレア』は、とっくの昔に普遍なる歌なのだよ。アーレスよりも年寄りの神さまだからね。


『ソルジェ・ストラウスよ』


「ここにいるぞ。まだ、見えるのか?」


 死の淵を転がり落ちている途中だ。神さまでも、首だけにされてしまえば、その権能も失ってしまう。神さまも含めて、誰もが有限の命しか持ってはいない。


 赤い目は、わずかながら動いて、オレの姿を確かめた。


『かすみはしているが……見えているぞ。まずは、見事だ。罰を与える罪科の獣である私に、勝利してみせるとはな……』


「そちらには迷いもあった」


『……見抜くか』


「他者の願いのために、自分を捨てた。お前を、言い表す方法は、何ともたやすいものだ。やさしい神さまだったぜ。自称・他称の神さまどもと戦って来ちゃいるが、お前ほど、信徒のために必死だった者はいない」


『……誇りとしよう』


「よく背負い切ってみせた」


『……神だからな。してやれることがあった。我が半身への祈りであったが……いや、それも含めて、自分自身である』


「見習うとしよう」


『……王となるのだからな。故国の、王となるのだろう?』


「ああ。遠からずに、ガルーナを取り戻す戦いを始める。王になり、ガルーナを復興させるのだ。そのときは……民の願いや、祈りを背負える王となるぞ」


『……多くを背負うほどに、ある意味では不自由にもなるだろうが、それは満ち足りた選択だ。豊かな国を、創ってみせるがいい』


「あの世で見守っていてくれ。『孤独』な者の少ない国を創るぞ。亜人種の妻を持つオレらしくな」


『……成し遂げるがいい……それを、約束してくれるのであれば……我は、我々は、実現できなかった世界を、お前に託せる』


「託す……?」


『レイチェル・ミルラが、教えてくれたのだ』


「レイチェルと、話していたな」


『……彼女は、有能な瞳を持っている』


「ええ。『人魚』で、芸術家なので」


「……芸術は、オレたちの知らない『真実』を教えてくれるものだからな」


「その通りです。私は、『真実』しか求めません」


 その言葉が持つ厳しさに、ジャンはビクリと体を揺らした。


「す、すごい、覚悟です……よね。逃げない……って、ことですよね?」


「ウフフ。『真実』というものは、覚悟も求めますから。でも、逃げないことは、自然なことでもあります」


「し、自然、ですか?げ、芸術とかは、ボクには、ちょっと難しいので、わ、分かりかねますけれど……っ」


「自分に素直でいるということです」


「そ、それは……分かります。嘘を、つかないって、こ、ことですもんねっ?」


「ええ。『ギルガレア』も、ようやく素直になれたのです。滅びるそのときにならなくては、素直になれないのは、とてもマジメですね」


 そういう不器用な者が、きっと、レイチェル・ミルラは嫌いじゃない。


 アメジスト色の瞳と微笑みが、神さまの首を見つめる。


「貴方は惹かれていたのですね。偽りではなく、現実の世界に……あの悲しい死者たちの嘆きに報いてくれる王に」


『……お前に、託してやる。死者と語る力があるのであれば……我々が創り上げた不完全な『世界』を託す』


「……あれを、くれるというのかい?」


 空を見上げた。何処かへと去り行こうとしている、もう一つの『オルテガ』がある。


『死者たちの楽園には、なれなかったが……あの『場』は、遺せる。呼び出すための力を、お前に授けてやろうというのだ』


「あの街を……呼べる、のか」


 思ってもいなかったプレゼントだ。神さまから遺産を譲渡されることになるとはね。


『現実に、孤独な者たちを受け入れてくれる王国を創ろうという王の、『力』となってやりたい。だが、くれてやれるのは、あれだけしかない。どう使うかは、お前次第となる。作戦を考えるのは、得意だろう?』


「ああ。空に浮かぶ街を、好きな場所に呼べるのであれば……帝国の想像を超える戦術も可能となる」


 ……迷宮都市とまで呼ばれるほど、戦闘に特化した街並みだからな。


「あれを、前線基地として呼べると?」


『それも可能だろう』


「……敵陣に、落とすことは?」


『崩壊するが、敵の大軍も巻き添えに出来るかもしれんな。素早く逃げられたなら、ただ闇雲に瓦礫を量産するだけになる』


「そういう使い方は、もったいないよね」


「ああ。やめておこう。だが……心が、踊るぜ。空を飛ぶ街を、使える……か!」


「と、とんでもない力ですよね?ど、どういう使い方があるのかは、ボクには想像することも、む、難しいんですが……っ」


『……力は……あった方がいいだろう。お前は、神々と……多く、出遭うのだから』


「帝国だけでも厄介だが、そういう傾向もある」


『……半身を取り戻して、見えたものもあるのだ。帝国とやらには、我が半身から分かたれた蟲の力を使いこなす者たちも属している』


「『ゴルゴホ』たちや、『帝国軍のスパイ』どもか」


 あいつらだけじゃなく、ユアンダート側とは敵対していたはずのレヴェータも、古い悪神の力を得ていた……。


『神々の力を、お前の敵は使うのだ……我らの祈りと願いの骸も、持っているといい。力は、力と引き合う……お前の敵は……追い詰められれば……手段を、択ばなくなるだろう』


「神々の力を、ユアンダートも、使い始める……か」




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