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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その六十一


『こいつ!!とまれえええ!!』


 ゼファーが急降下しながら、爪の強打を物見の塔にぶち込んだ。塔が揺れながら崩れる。だが、崩れたはずの塔の破片が空中に浮かびやがる。虫けらに化けていった。この空にあるもう一つの『オルテガ』は、虫けらで創り出されているのか……破片を虫けらに変えたのか。


 いずれにせよ、破片どもが素早く結び合わさっていく。時間が戻ったのかような光景だった。炎に変わった『ギルガレア』は、再生された塔を駆け上ってしまう。


『こいつ!!』


『思い通りに、世界を操れる!!この世界は、完全に掌握しているのだ!!やれぬことなど、何もない!!不可能は、この世界にはないのだ!!』


 『ギルガレア』が物見の塔に頂点に達すると、空に向けて……上空の薔薇の畑に向けて、大きく長い火柱へと変化する。まるで、火山の噴火のような勢いだった。広がりながらも、天高く、その炎は走り去ってしまう。


「お兄ちゃん、何か、まずそう!!」


『ど、どうしましょうか!?だ、団長!?』


「追いかけるぞ!!あいつが、花畑に向かうのなら、オレたちも向かう!!」


 邪魔をする。妨害をする。それこそが、一般的な『防御』の戦術だ。『ギルガレア』の狙いを、挫かなければならん。


『みんな!のって!!』


 物見の塔に爪を立てたゼファーの尻尾に、跳んでつかまった。態勢などお構いなしに、善意で飛び乗った。ジャンは『巨狼』からヒトの姿に戻ってな。


 とにかく、急がなければならん。


「全員、乗ったぞ!!ゼファー!!」


『らじゃーぁああああああああああああああああああッッッ!!!』


 物見の塔を蹴散らしながら加速して、ゼファーは空を駆ける炎を追いかける!!


 羽ばたきを重ねて、火の粉をまき散らしながら花畑に迫る炎との距離を詰めていく……。


「あ、あいつ!!何をするつもりでしょうか!?」


「さてな。追い詰められた……オレたちを説得することも、戦うことさえもあきらめた。無理やりに、目的を遂げようとしているのだろう」


「となれば、『不滅の薔薇の世界』とやらの完成……聖餐の実行……生贄を、捧げる……」


「でも。薔薇のとこには、誰もいないよね?空だもん?」


「ヒトがいるのは、本物の『オルテガ』だけのはず……ということは!?」


『ばらを、『おとす』のかな?ほんものの『おるてが』に?』


 顔が強ばる。


 薔薇を支えるイバラどもは、まるで塔のように巨大だ。その先端から生える薔薇も、家屋を潰すことぐらいはやれるだろう。


 あんなものが人々の集まりに落下しようものなら、どれだけ死人が出ることか……。


 それを想像するだけでも、血の気が行方不明になっちまうような恐怖があるのだが、レイチェルの芸術家としての感覚は、それ以上の危機を察知して教えてくれた。


「あれは、ちょうど二つの『オルテガ』の境目にあります。まるで、二つの『オルテガ』を隔てているように。あの花畑が消えたら、『支え』はどうなるのでしょうか?」


「き、消えちゃうってことですか!?じゃ、じゃあ、え、え、ええと!?」


「こっちの『オルテガ』が、あっちに落ちちゃうの?」


「……かもしれん」


 街同士が衝突するなんてことになれば、全滅は必死だ。全員が生贄になってしまうかも。


「で、でも!『ギルガレア』さまは、『蟲の教団』の連中を助けたがっている……ッ。二つの『オルテガ』をぶつけるなんてことをすれば……ッ」


『にせもののほうは、すぐに『もどった』よ!!』


「ああ。物見の塔は、崩したはずなのに……破片どもが虫けらになって、集まった。すぐに元通りになる」


「じゃあ。本物の『オルテガ』ごと壊して、そこにいるみんなを生贄にして、そのあとで『ぜんぶ元に戻す』ってこと?」


「本物の『オルテガ』も、そこにいる全員も、虫けらに再現させるつもりなのかもな。追い詰め過ぎてしまったか!!」


「大丈夫ですわ。間に合いますもの」


『うん!!あいつより、ぼくのほうが、ずっとはやいんだから!!』


 空で竜に勝てる者はいない。ゼファーは翼に力を込めて、羽ばたきの回数を増していく。やがて、炎に追いつき、並走する形へとなった!!


「逃がさんぞ、『ギルガレア』!!お前に、これ以上は何もさせん!!」


『この姿に、そちらの攻めが通じるとは思ってくれるなよ!!』


「通じるんだよ!!」


 竜太刀を構える。『風』の魔力を集めるのだ。


『また、『風』の魔剣を!!』


「また?」


「『ギルガレア』に見せられた夢のなかでな!!」


「い、一瞬だったんですが……そのあいだも、夢で戦っていたんですね!?」


 あれが一瞬だったか。


 時間の流れまで変える。たしかに、とんでもない権能だ。神さまの一種には違いない。


 だが。


「オレたちが守るべき者たちの脅威になるのであれば、敵でしかない!!斬るべき場所が見えるぞ、『ギルガレア』!!お前は、オレと戦い過ぎた!!」


 『ストーム・ブリンガー』の威力も、教え込まれている。だからこそ、身を守ろうとした。本能的な反射だ。それを読めばいいだけのこと。お前は、とても素直な武術を使うのだから。


 知り合うことは、戦いを有利にも不利にもする。


 どちらにとってもな。


 戦闘はコミュニケーションだと、記憶の中にいるガルフが教えてくれている。こちらが相手を読めるようになったときは、相手にも読まれているときなのだと。


 知っているさ。


 この花畑が、我々と『ギルガレア』の、どちらにとって有利な戦場なのかなんてことに、疑問も比較も必要なかった。




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