表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4106/5090

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五十八


 アイデアが浮かんでくれた。


 それに。


 ……感覚も、つかめる。


 オットーが教えてくれたことがあるからね。感知できないものも、知識と発想で見抜けるのだ。『サージャー』の感覚は持ってはいないが、オットーが教えてくれたコツと、この『ギルガレア』が創り出した場所ならば、感じ取れた。


 笑顔になりたくなるぜ。


 逆転の策を見つけたときは、心が躍るものだ。


 しかし。


 悟られてはならん。


 ミアとレイチェルは気づいていない。『ギルガレア』も認識にはないだろう。使ったことのない力については、誰もが明確な意識までは持てないものだからね。


 鋼を打ち合わせながらも……。


 呼吸潰しの攻めの連続に、追い回されながらでも……。


 本心を隠しながら、タイミングを見計らう。


 可能な限り、疲れている『演技』をしながらね。ニセモノとはいえ、ミアとレイチェルが相手なのだ。二人とも、目利きだよ。相手との駆け引きも上手い。


 こちらの考えを、読まれるリスクはある。こんな状態で、もしも、警戒されたら、負けてしまう。追い詰められているからこそ、有効な策でもあるのだ。こっちも自在には使えない。


 耐えて。


 隠さなければな。


 戦闘はいつだってコミュニケーションだ。表情一つからでも、多くを相手に伝えられる。途切れそうな呼吸に、額に浮かぶ汗。鼻の先に集まり、垂れていく汗。斬られた傷からにじむ血に……まあ、半分以上は演技でも何でもなく、実際のダメージなんだが。


 ボロボロだ。


 竜鱗の鎧も、『奇剣打ち』が直してくれたというのに、あちこちが軋んでいる。


 避け続けるしかないが、身を動かすほどに体力も失っていく。


 肺腑も、痛む。打撃の後遺症ではなく、たんに空気が不足し始めていた。猟兵二人がかりの攻めの連携、生き残るだけでも精一杯というのが、正直なところだ。


 強がるのも、難しくなっている。


 それでも。


 肉を切らせて骨を断つ。


 絶好の機会を作るために、疲れた体に鞭を打ち、竜太刀の大振りで間合いを取らせた。


 『罠』を張る。


 これで、警戒されたら負け……。


「空振りさせたよ、レイチェル!!」


「ええ!!仕留めます!!」


 空振りした直後には、大きな隙が生まれてしまう。今この瞬間が、まさにそうだ。俊敏な二人に襲われたら、確実に殺されてしまうタイミングだな。


 負けだ。


 ここが、現実の世界ならば、負けている。


 だがね。『ギルガレア』自身が語ってくれたように、ここは『いつもの世界』ではない。オレたちの大陸ではないんだよ。他の神々の権能が働いていない、他の『ゼルアガ』どもに侵略されていない世界ならば……。


 この『属性』を、ヒトの身でさえ使いこなせる。


「―――『氷』よ!!」


 練っていた『第四属性』、『氷』の魔力を解き放つ!!


 『氷』魔術を自分だけで使うことは初めてなんだがね。かつては、この竜太刀にも融けていた。アーレスの力を抑止するために、『氷』の力を秘めた魔石を混ぜていたんだ。まったくもって、縁がないというわけでもない。


 オットーからの教えもあるし……。


 『ザクロア』で、『氷』の狼を呼んだこともある。あれは、ミストラルと『アリアンロッド』の力でもあったが……感覚は、知っているんだよ。だから、どうにか使えた。


 ……あとは。呪術師の類は、『氷』の魔術の適性もあるのだろう。レヴェータも、使えたからな。魔術よりも、やや繊細な魔力の管理だ。『裏側』みたいな使い方ってところにある。


 いずれにせよ、かなり感覚的ではあるが、『慣れ』と『適性』があり、この場所が『ゼルアガ』の影響で、ヒトから『氷』を使う『権利』を奪われていないのなら、こうして『氷』魔術も放てる!!


「『氷』を……お兄ちゃんが、使うの!?」


「魔石もなしに、どうして―――『ここ』ならば、使えると!?」


「そういうことだ!!『ギルガレア』のおかげというわけだな!!」


 ストラウス家の血にも感謝か。潜在的には、三つの属性だけでなく……四つの属性を使う才能も血に流れていたらしい。


『……こちらの力を、逆手に取ったというのか!?ソルジェ・ストラウスめ……ッ!!』


 初めての『氷』魔術は、ただの吹雪のようだ。


 ミアもレイチェルも、『三大属性』の魔力を練っていれば、見抜いていただろう。


 しかし、本来ならばヒトに『氷』は使えない。認識さえも、叶わない魔力だからな。警戒する必要もない。だからこそ、気づけなかった。『氷』が使えると理解したオレでさえ、加減が分からんところもあるほどだ。


 つまり、対策不能な魔術ということだよ。


「『氷』だと、どの魔力を練って防げばいいの!?」


「……これは、やられてしまいましたわね」


 凍てついていく。吹雪の魔術を浴びて、ミアとレイチェルの体が雪の呪縛へと囚われてしまった。死ぬことはないだろうが、体は動かん。しばらくのあいだはね。


「でも。これぐらいなら、すぐに、動ける……っ!!」


「リングマスターは、こちらを殺せませんからね。あと、もう数秒もあれば―――」


 ―――その隙があれば。


 オレには、じつに多くのことがやれるのだよ。


 語り掛けてくれたからな。


 おかげで、居所は掴んでいる。


 虚空をにらんだ。


 竜太刀は、ガチガチと『牙』を生やして歌っているぞ。アーレスも、『ゼルアガ』の力を破るのを楽しみにしている!!


 『竜騎士姫』と共に、『歌喰い』を倒した竜なのだから!!


「ここを、ぶっ壊すぞ!!アーレス!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ