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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その五十五


「お兄ちゃんと、戦ってみたかったトコロはある!」


 『ギルガレア』が言わせているのか、それともオレの記憶とか、オレの認識が言わせているのか。


 どちらにせよ。


 ストラウス家の血が、どうにも燃えてしまうぜ。


「ストラウスは、そうだよな!!」


「うん!!そうだよね!!」


 竜騎士として、猟兵として、戦士として。どうしても、強いヤツと戦ってみたいという本能じみた衝動がある。


 ミアは、そういう道を進んでいるのだから、オレと戦いたがったとしても、おかしくはない。


「レイチェル。ちょっと見ててね。一対一で、やってみたいの」


「あら。構いませんが。それでよろしいのです?猟兵の戦術としては、合わないように思えますが」


「まあね。でも、お兄ちゃんとあった差が、どこまで縮まっているのか、確認しておきたい」


「いつか、オレを越えるためには、必要な行いだよな」


「うん。お兄ちゃんよりも、強くなるの。ルルーも、私の竜にしなくちゃね。大陸最強の竜騎士と、竜のコンビは……私とルルーのものになるんだ!!」


「そうか!だが、お兄ちゃんとゼファーも、立ちはだからなくてはならんな!!」


 オレにも誇りがある。ゼファーにもね。竜騎士と竜は、最強でなければ満たされることはないのだ。


 ミアが、準備体操を始める。


 ステップワークを確認し、『風』の魔力を身にまとわせていった。軽やかなステップは、完全な無音となる。右に左にと、身を動かしながら……突撃のための角度を選ぶ。


 竜騎士でもあるが―――猟兵でもあるからね。


 オレの意識は、『待つ』ことを決めた態度でいるニセモノのレイチェルにも注がれている。彼女が参加しない理由もないからな。猟兵の戦術ならば、彼女が口にしていた通り、一対一などという歪な戦術に頼るのは間違いだった。


「お兄ちゃん、レイチェルのことも見てるね」


「まあな。気にするな」


「うん。仕方がないもんね。ここは、戦場だもん。戦いは、何が起こるか分からないもんね」


 ニコリと微笑む。


 その愛らしさに、こちらの顔面もあっさりと緩みそうになるが―――戦士としての感覚が、背中に恐ろしいほどの寒気を与えた。雪でもかけられたかのような冷たさだ。


 ミアが。


 視界から消えていた。


 この闇におおわれた場所で、ミアの黒髪と影に潜むような走り方は、あまりにも相性が良い。高速かつ無音に至ったはずだ……悟ることが、難しい……いや、正直になれば、完璧に虚を突かれていた。


 ……小さなころから、オレが仕込んでいたからこそ。どうにか、反応に成功していた。竜太刀を振り上げて、左から飛んで来ていたミアの飛び掛かりを受け止める。


 火花が散り。


 鋼が鳴る。


 それらの向こう側に、戦いを喜ぶミア・マルー・ストラウスの笑顔があった。可愛いよ。宇宙で一番だ。だが、それでもなお……オレの顔を強ばらせてくれる実力が、あまりにも嬉しかったぜ。


 ミアは、ピュア・ミスリル・クローの一撃を防がれても、余裕がある。竜太刀に、爪を引っかけたまま、宙返りへとつなげてみせた。上空高くからの、投げナイフだ。


 レイチェルが大喜びしそうな曲芸の技巧であり、回避は極めて困難。こちらも竜爪を出しながら打ち払うほかにない。


「さすがだねー!」


 褒められつつも、全速力で横っ飛びを試みる。ミアが、上空から『こけおどし爆弾』も落としているからな。


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッ!!!


 慣れ親しんだ爆音だが、自分が仕掛けられると、かなり厄介なものだと再認識する。鼓膜が揺さぶられ、目はかすむ。


 ……この状況で、『暗殺妖精』と戦うことになるのか。気配は、完全に消えた。ミアは、どこかに陣取り、動かない。隙を待っている。オレの動きと構えが隙を晒すのを待っている。


 だがね。


 だからこそ、動かない。


 武術の駆け引きには、後手の強さもあるのだ。ミアは、その意図を読む。確率を考えた。このまま突撃すべきか、それとも、安全策を取るべきか。いくつかのアイデアがあったはずだが、ミアは一瞬のうちに比較して、選択していた。


 こちらの虚を突くために。


 正面から、仕掛けてくれる。


 シアン・ヴァティを思わせるほどの、低く鋭い飛び込み。小柄であるがゆえに、低さに関しては、シアンをも凌駕していた。とてつもない速さだ。揺れる鼓膜のせいで、こちらの感覚が鈍っていたことを差し引いても、想像を絶する速さだったよ。


 練習とは異なる。


 敵に使っている動きを見るのとも、大きく異なる。


 全開の殺意を浴びせられながら、これだけの神速で襲い掛かられるとは。ミアの手にかかった敵どもは、幸せだったな。暗殺であれば、死への恐怖を抱く間もなく仕留められる。戦闘であれば、これだけの速さに感動しながら死ねるのだから。


 ああ。


 完全に、懐に入られてしまっていた。


 いかんね。本当に、殺されるかもしれん。


 ……それでも。対策は、一つだけある。日々の精進は、大切だし、装備を識ることも大切だな。竜太刀も、竜爪も間に合わん。となれば、頼るべきは、竜鱗の鎧。それだけだったよ。




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