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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第二話    『無償の罪に、この手は穢れ』    その百八十六


 ドワーフの男は傷だらけの身を起こす。あごひげに半ば隠れている『魔銀の首枷』を指差した。


「これをつけられた。帝国人のことは、憎い。帝国人の言いなりになっている連中のことも、腹立たしい。殺してやりたい」


「いい覚悟だ。手を、離していろ。竜太刀で、その首枷を断ち斬ってやろう」


「……首を、斬るなよ」


「当然だ。オレの腕を侮ってもらっては困る。目をつぶっていたとしても、確実に首枷だけを断つだろう」


「試す必要はない。とっとと、やってくれ」


 ドワーフがあごを持ち上げた瞬間に、竜太刀を放つ。『魔銀の首枷』の左右両端を斬撃で裂いてやった。ドワーフの男が大きな呼吸を使うと、ふくらんだ首に内側から圧されて、首枷は前後に分かれながら床へと落ちる。


「いい腕してやがるじゃねーか」


「そうでもなければ、少数精鋭で敵地に乗り込むことなど出来ん」


「……何人で、来たんだ?五十人ぐらいか?」


「とんでもない」


「百人?」


「いいや。五人と竜だ」


「……正気なのか?ここにいる帝国兵は、オレたちの数え方が間違っていない限り、二百人はいるんだぞ?」


「知っている。予想の範囲の数だ。ドワーフの数は、どれだけいるんだ?」


「生きている者は、百程度だ。多くの者が、マルド・メロに殺された。ヤツは、おぞましい錬金術師。邪悪な幽鬼のように残忍で、オレたちドワーフの死体を、虫けらどものエサにしているんだ」


「『巣箱』を、ドワーフの死体たちで作ったわけか。セザル・メロは、帝国兵の戦死者で作っていたが……」


「セザル・メロ?マルド・メロの親戚か?」


「詳しくは知らんが、似たような姿をしているようだ。セザル・メロの方は、オレが『ルファード』で殺したぞ」


「『ルファード』か……何人か、ドワーフが送られていたな。まだ生きているかどうかまでは、知らん。ここでの労働は、実に過酷なものだった。地下を掘らされ続けたし、おかしな薬を打たれた。知っているか?……マルド・メロは、とんでもない虫けらを飼っている」


「『寄生虫』……連中は『ギルガレア』の名で呼んでいる」


「そうだ。詳しいじゃないか、ソルジェ・ストラウスよ。エルフどもの神の名前だな。何か、関係があるのか?」


「お前は、中海よりも南の出身なのか?」


「ここがどこかは知らんが、大陸南端部で連れて来られた。村を帝国人に雇われた傭兵どもに襲われてな。抵抗したが、数に負けた」


「生きていてくれて助かる。一度の負けでは、戦士の価値は失われない。動けるな?」


「……どうにかな。アンタが助けてくれたっていう認識で、正しいか?」


「正しいぜ。情報収集もしたいが、まずは他のドワーフたちを助けるとしよう。首枷の鍵の場所は?」


「残念ながら、知らん」


「分かった。オレが斬る。ドワーフたちが怯えないように説得してくれ」


「ドワーフは怯えん。疑いはするだろうが」


「どっちでもいい。さっさと、逃げる準備をしよう。二百の敵だけならまだしも、千人の帝国軍が迫っている」


「二百だけでも、大問題だが……千二百になれば、どうにもならんな。こちらは、負傷者だらけの上に、毒殺されかけて体力もねえんだぞ」


「急ぐぞ。全員を助けたい」


「ムチャなことを言うのが、英雄の特権なのか?」


「計画は立てている。ここの馬車を、奪って逃げるとしよう」


「……賭けるしかないか、アンタに……さっさと、仕事を始めるぞ。そのデカい刀で、檻も首枷も壊してくれ。まずは……ここからだ。ゾーン、生きてるな?死んでいる場合ではないぞ!!」


 ドワーフの男が檻を叩きながら怒鳴ると、檻のなかのドワーフが起き上がる。こいつも若いが、自力で立ち上がれるような状態ではないようだ。這いずりながら、鉄格子にもたれかかった。


「お、おう……どうにかな。死ぬかと思ったが……まだ、生きてる」


「オレのケンカ相手のくせに、情けない姿をさらすんじゃねえ」


「うるせえ……しばらく休めば、動ける……だが、今は、ちょっと動けば、息が切れちまうんだよ……」


「肺腑に負担がかかり過ぎたな。下がっていろ」


「……おお。頼んます、ストラウス卿」


 斬撃を放ち、鉄格子を断つ。口の悪いドワーフが檻のなかに入り、仲良しのケンカ相手を支えながら出てきたな。


「お前……意外と、良いヤツだったんだなあ……」


「うるせえ、ボケナス。ソルジェ・ストラウスよ、さっさと、このボケナスの首枷を、斬ってくれ」


「任せろ」


 竜太刀を、振る。簡単な仕事さ。


「う……お……っ。スゲー……一瞬で、斬っちまった。首も、ヒゲも、斬り落とされてねえや……酒場のウワサも、たまには当たるんだなあ。竜に乗って、大陸中を荒らし回って帝国人を殺しまくっている英雄サン……実在していたとは、驚きだ」


 大陸の南の方にも、オレのウワサが伝わっているとは驚きではある。名誉なことではあるがね。


「こいつは、オレが引きずっていく。だが、少なくない数が、こいつと同じような状態なんだぞ。全員を、助けるってのは、どうにも非現実的なハナシなんじゃないか?」


「あきらめはしない」


「理想が高いのか」


「可能なことは、したいだけだ。動けない者は、馬車まで運べばどうにかなる」


「帝国兵どもに、見つかれば、おしまいだがな。だが、他に選択肢はないのも事実。命令を、出してくれ。動けるドワーフは、アンタに従う。文句を言うヤツがいれば、オレがぶん殴ってでも従わせよう。ここのドワーフの中では、オレが一番強いんだ」




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