第六話 『不帰の砂漠イルカルラ』 その百十三
そうだ。ラクダだ。『メイガーロフ』の東部にいるケットシーの山賊たちが用意してくれたものさ。
砂漠や荒野においては馬並みかそれ以上の速さを持つようだな。見事な走りで、戦場に突撃してくる。およそ四百匹のラクダの補給部隊。ラクダの背にいるケットシーの山賊たちは、ひとくくりにされた矢の束を巨人族の戦士たちに投げ渡していく。
「さあ、もってけ!!」
「撃ちまくれよ!!」
「たくさん、矢は持ってきてあるからなあ!!」
惜しみなく矢の束を彼らは投げ与えてくれたよ。そうだ、ラクダの姿はバレている可能性があるからな。これほど巨大な獣の群れをいつまでも隠しきれるとは限らない。
……前進しているからな。ラクダの補充部隊そのものも。補給を求める騎兵たちに近づくことで、すみやかに矢を供給することに成功している。
補給を受けた騎兵たちは踵を返して、突撃して来たアルノア軍の騎兵どもを左右から取り囲んでいく。矢の雨の密度を上げるためだ。前からだけでなく、左右からも矢の連射を浴びせることで、騎兵どもを殲滅しにかかっている。
「このまま囲んで仕留めるぞッッッ!!!」
「ヤツらを生きて返すなあああああッッッ!!!」
体力の全てを使い尽くすように、『新生イルカルラ血盟団』の戦士たちは矢を撃ち続けた!
オレとリエルも触発されるように、手持ちの矢を撃ちまくる!!
現場を指揮している赤い兜の敵兵を狙い撃ちするのさ。この騎兵どもを逃がさないように、思考停止に追い込んでやりたいからな……すぐに無くなってしまうが、問題はない。
ここが勝負時だからな!!
古竜の力が宿る魔法の目玉を使うのさ。敵の騎兵どもの中央にターゲッティングを仕掛けたよ。
「リエル!!」
「うむ!!『風』は私に任せろッ!!ゼファーは、ただ強力な『炎』をッッッ!!!」
『らじゃー!!『ほのお』をたかめてかーらーのー……っ!!』
ゼファーは空気を焦がしながら『炎』をため込んでいく。背にいるオレたちまで火傷しちまいそうなほどだが、『ドージェ』も『マージェ』も気にしない。
勝負時には、思い切って攻撃を仕掛けるものだ。
「ゼファー!!歌ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!」
『GAHHHHHOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHッッッ!!!』
歌と共に煉獄の煌めきを持つ火球が放たれる!!
「『風』よ、我が仔竜の『炎』に、逆巻く爆炎の奔流を与えろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」
リエルが集めた『風』が、ゼファーの火球に合流する。金色の竜巻のようだぜ。煉獄の奔流は地上目掛けて突き進む!!
爆撃するのは、当然ながら敵兵どもの先頭近くだ。この状況で敵が取る最良の策は何か?死傷者が大量に発生するのを覚悟した上での正面突破に決まっているからな。こっちの騎兵は走り回っている。
攻め疲れのあるところに、死ぬ気の突撃を受ければ貫かれちまうさ。
もともと、敵の数は多い。戦術で勝ろうとも、ムリを利かせて勝つことは不可能じゃないのだ。そいつを防ぐための爆破だよ!!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンッッッ!!!
大地を黄金色の爆熱が打ち砕く!!数十もの騎兵どもが吹き飛ばされていく!!爆撃で即死するものもいれば、灼熱を帯びた疾風に体中を焼き払われる兵士どももいた!!
前に行こうとする意志が、こいつで砕けちまうさ。
「矢の弾幕を厚くするのです!!敵に、前に進ませてはいけない!!」
さすがはオレの副官一号さんだよ。ガンダラがこちらの攻撃の意図をしっかりと読み、戦士たちに指示を与えてくれる。
「了解です、軍師殿!!」
「とにかく、撃ちまくれえええ!!」
「矢で壁を作るんだあああああああ!!」
蛮勇の突破があれば、戦況が変わりかねん。必勝の策ではあるがな……こちらにとっても正念場ではあるのさ。
敵騎兵は次々に矢を射られて、止まっていく。
「く、くそう!!」
「このままでは……っ!!」
「ひ、退けえええええええ!!」
そう言ってくれるのを待っていた。敵騎兵の全員に死ぬ気で突撃されると、負ける可能性もあったからな。立ち止まり、戻ろうと踵を返す者と……戦略眼を持ち、ここで退くことの無益さを悟り前に出たがる者。相反する二者がいることで、どちらの動きも悪くなる。
「バカな!!」
「今こそ、前に出ろ!!」
「下がったところで、状況が変わるかあ!!」
「うるせええ!!し、死んでたまるかあああ!!」
ベテランと若者の争いでもあったな。窮地を知らない若い兵士どもは、戦場の混沌に呑まれてしまう。ベテランの静止も聞こえなくなる。ようこそ、新兵ども。極限状態に。
経験値がない君らでは、この状況で落ち着いていられたら気持ちが悪い性格だ。百人いれば百人ぐらいが、早鐘のような心拍と、ムダに狭くなった視野に陥る。近くにいる戦友の汗ばみうろたえる顔ばかり見えるだろ?……恥じることはない。ヒトはそんなものだ。
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