第六話 『不帰の砂漠イルカルラ』 その百五
上空からの射撃に励んだよ。10本の矢など、すぐさま撃ち尽くしていたな。10本のうち、全てを当てていた。竜騎士の水準からすれば、当然のことではある。ただし、反省点もあった。二人、生き残っていたな。殺し損ねさ。あえて急所を外したかったわけではない。
……疲れも出てきている。
リエルはさすがじゃあるな、全員、見事に射殺していた。20本の矢の一つ一つに、死の物語が刻み付けられている。
だが、すぐに矢は切れてしまったな。撃ち尽くすことを想定しての選択ではあった。温存するのではなく、とにかく敵兵の数を減らすというな。間違いではない。想定の範囲のことだよ。
「撃ってこなくなったぞ!!」
「ハハハハハッッ!!ヤツら、矢を撃ち尽くしやがったぞおおおッッッ!!!」
図星だったな。あと50本でも積んでいれば、もっと矢の雨を浴びせてやるところだったのは確かだな。
帝国兵どもは調子に乗ってオレたちを無視するかのように前進を始めていたよ。だが、ミアはまだ弾切れしてはいない。ミアは弾丸を撃ち続ける。石のつぶてでも、十分に殺傷能力はあるからな。
何人もの敵兵がミアの弾丸に撃たれて倒れていったよ。
「……むう。私も矢があればな……っ」
「大丈夫。私がその分、フォローするから」
「頼むぞ、ミア」
「うん。正直……私の能力的にも体力的にも、『後半戦』で活躍するのは難しいもん。お兄ちゃんもリエルも、体力と魔力を温存しててね!!」
役割分担さ。『後半戦』にこそ、オレたちの全てを注ぐ場所が残されている。今は戦場をゼファーで飛び回り、威嚇して敵の動きを乱してやることが任務だったよ。
ゼファーの姿に怯えさせるだけでも、敵の行動を妨害することは出来るんだからな。ムダな矢を放たせることも。
たったそれだけのことでも、戦術として連なっていけば機能してくれるからな。
……もちろん。時折、襲撃もするからな。
獲物を見つければ、狩りに行くのが猟兵ってもんだ。
地上をにらみつけていれば、見つかるものもあるのさ。孤立している部隊がな。
アルノア軍は『ガッシャーラブル』の東に本陣を組んでいた。アルノアもおそらくそこにいるだろうな。
『第六師団/ゲブレイジス』も、消耗はあるものの健在だからな。ある程度は距離を取って、休息のための場所を確保するほかない。こっちも死傷者は出ているが、城攻めを強行した向こうの死傷者の数はずっと大きい。
負傷者を運び込むためでもあるし、余剰な戦力の休息を行わせるためでもある。最前線で指揮を執り続けるような規格外の猛将ではなかったわけだ、アルノアという男は。読み通りではあった、どこまでもな。
……今は、その本陣との間に交代していく部隊を見つけている。20人前後の部隊だな。疲れ果てた仲間が本陣に戻ろうとする動きとは逆に、新たな戦力として送り込まれようとしているチームがいる。
そいつらは事実上、孤立しているわけだよ。戦場が広くなり、多いはずの敵どもも密度を薄めてしまっている。
高い場所から、角度をつけての急降下だ。
こちらだって、よく見定めてはいるんだよ。弓を持ってはいない、歩兵どもだ。そいつらにゼファーは強襲を仕掛ける!!
『GAHHOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』
朝日に紛れながらの突撃だ。砂をえぐる蹴爪の一撃が、隊列を組んで走っていた連中を根こそぎ倒していく。
「ぐうううう!?」
「竜が、襲ってきたああ!?」
……竜だけではない。
竜の『ドージェ』と『マージェ』も襲っているよ。雑兵どもに矢が尽きたことを笑われているからな。基本的に短気なオレたちは、敵の体でその怒りを晴らしてやろうと攻撃性を発揮していたよ。
ゼファーの体当たりが敵兵をなぎ倒すのと同時に、オレとリエルは飛び降りている。ゼファーの強襲を生き残った獲物目掛けて、後詰めを仕掛けていた。
竜太刀を抜き放ち、混乱する敵兵を斬り裂いていく―――リエルもミドルソードを抜き放つと、オレよりもスピードのある疾風のような斬撃で、敵兵を斬っていたよ。
弓術と魔術だけではないからな。リエルは剣術も達人だし、その身体能力が生み出す速さには、並みの戦士では追いつけん。ゼファーの突撃に隊列を崩された敵を蹴散らすのは、オレたち猟兵夫婦からすれば簡単なことだった。
「二人ともさすがー!!」
オレたちを褒めながらミアもスリングショットで石を放ち、敵兵を一人仕留めていたよ。ゼファーも鼻息を吹きながら、敵兵一人に噛みついていた。そのまま、朝ごはんにしてしまう。
「よし、撤収だ!!」
オレは敵兵が持っていた槍を回収すると、そう叫んだ。
「うむ!!」
リエルは返事しながらゼファーの背に乗り、ゼファーはオレが背に乗ると同時に空へと戻った。敵兵の群れが、こちらに近づいているからな。矢で攻撃されることは避けたいのさ。それに……敵兵を走らせるだけでも十分時間稼ぎにはなる。
だが、少しばかりは嫌がらせもしてやるさ。ゼファーに加速と上昇を行わせながらも、オレは敵の群れ目掛けて奪った槍をぶん投げていたよ。槍は100メートル以上は飛んだあとで、隊列を組んだ敵の一人に突き刺さっていた。
竜騎士の投げ槍の威力を教えてやったのさ。ちょっとした意地だったよ。舐められるのは、好きじゃなくてな。
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