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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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1993/5085

第六話    『不帰の砂漠イルカルラ』    その九十九


「ぐ、か、体が……っ」


「ひ、卑怯な……っ」


 帝国兵どもが文句をつぶやきやがるよ。これは卑怯ではない。戦術だ。そもそも、50対6で戦ってやったのだから卑怯もクソもない。それはこちらのセリフと主張したいぐらいのものだよ。


 心のなかに文句を閉じ込めながら、オレは新たな獲物に駆け寄ると竜太刀でその命を壊してやった。断末魔と絶命の吐息、それに返り血の雨を浴びながら、新たな死を作る……リエルもこの狩りに参加する。


「ぐうう!?」


「がはあ!!」


 ゼファーの背から連続で矢を放ち、ミアの突撃を援護してくれていた。ミアは残敵目掛けて、ピュア・ミスリル・クローとナイフの二刀流攻撃を使うことで重傷を負わせていたよ。


 ミアの攻撃は死を求めてはいない。利き手を深く痛めつけてやるだけで十分だ。動脈はもちろん斬り裂いているから、放置すれば死ぬし、戦力としては手術して何週間も休まなければ治癒しない深手となっている。


 ……オレも働いていたよ。ミアより器用ではなく、ただ鋼を叩き込み即死を連発させていた。もう『雷』が作り出したマヒの時間が終わるからな、スピード重視になると、竜太刀での攻撃なんてものは手加減に向かない。


 十人の重傷者を作れば、十分じゃある。


「動くな!」


 リエルが激しく出血している帝国兵に弓と矢を向けながら命じていた。動けば殺す。それは空気で伝わる。リエルもまた故郷を帝国軍に襲われた少女だ。帝国人を殺すことを名誉以外の何物にも思ってはいない。


「ぐ、こ、降参するっ!!」


「だから……こ、殺さないでくれ……っ」


「武装を解除するのだ。弓も矢も、剣もナイフも、傷薬も食料も全てを置け。痛む指でもしろ。しなければ、殺す」


「う、うう」


「わかったよ……っ」


 意地悪ではない。当然の行いだ。ここは戦場だ。殺さないでやっているだけ、鳴いて喜ぶほどの気遣いだ。片腕になってもヒトを殺せるのがヒトっていう狂暴な獣だしな。油断などしている場合でもない。


「察してねー。はい、武装解除」


 ミア・マルー・ストラウスの命令に、帝国兵どもは痛む腕を動かして従っていたよ。


「じゃあ、そのままアルノアの本体に戻っていいよー。さっさと、走って、仲間が全滅したことを報告して!」


「そうだ。さっさとこの場から立ち去れ!走ってだぞ!そうでなければ、背後から射殺す!!」


「は、はい!!」


「わ、分かりました!!」


「こ、殺さないでくださいっ!!」


 帝国兵どもは『雷』の影響で焦げて痛む足の裏も気にしながらだが、この場所から撤退を始めていた。人道的……そうだ。それもあるが、オレたちの興味は、それだけではない。


 物資の回収だ。


 オレは死んだ敵兵から弓と矢を回収している。敵の物資を奪うことも、有効な戦略だよ。こちらは……物資不足なんだからな。戦力もそうだが、武器の数も充実してはいない。


 リエルとミアも矢と弓を回収して、ゼファーの背に積んでいく。空になりつつあった矢筒に帝国の矢が補充される。


 敵の矢でも構わないさ。少しばかり長かろうが短かろうが、問題なく使いこなせる。よほど使いにくければ、自前の弓じゃなく帝国兵の弓を使うが、目算で分かる。そんな必要はない。少なくとも、オレとリエル・ハーヴェルが使うぶんにはな。


 この拾い物をしたくて、ゼファーに『雷』を使わせたわけだ。ヤツらが矢をそこら中に放って捨ててしまうよりも前にな。


「たくさん、矢を回収できたね!」


「うむ。これだけあれば、まだしばらくゼファーからの狙撃を継続できるぞ」


『やったねー!じゃあ、ぼくのせにのってー!!』


 ゼファーに誘われて、我々三人はその背に乗ったよ。ゼファーは楽しそうに身震いしたあとで、地面を蹴りつけて走り、そのまま空へと戻る……。


 レイチェルとキュレネイも退却を始めていたよ。こちらを見て、手を振ってくれたから、ミアが全力で手をブンブンしてくれた。


「さすが、レイチェルとキュレネイ!」


「うむ!私たちも負けてはいないが、あちらも見事な戦いだったようだ。あっという間に騎兵どもを潰したな。こちらも魔力は使ったが、収穫は多くあった」


「うん。私が斬りつけたヤツらも働いてくれそうだね」


 ミアが上空から負傷した敵兵どもの動きを見下ろしていた。ヤツらの傷は軽くはないからな。アルノア軍に合流すれば、医療物資も使うし、ゼファーが東側への道にいるということをアルノア軍に伝えることになる。


 メッセンジャーとして使ってやったのさ。対策を考えるために、しばらく東側へ回り込むことはなくなる。十分でもいい。五分でも貴重なことだ。包囲されるまでの時間が減れば、こちらも『ガッシャーラブル』を守りやすくなるからな。


 ……戦場は動いている。


 オレたちがここで敵を殲滅しているあいだにも、アルノア軍の全体が『ガッシャーラブル』に接近して、矢の撃ち合いが起きていたな。矢に撃たれながらも闇を身にまとうようにして帝国兵どもの一部は『ガッシャーラブル』の城砦に近づいてくる。


 城門を破壊して『ガッシャーラブル』の中に侵入しようとしているんだよ。守る方が戦いは有利じゃあるんだが、物量で攻められれば対応は難しくなる。城門以外にも、無理やり城塞をよじ登るためのハシゴもアルノア軍は用意していたしな。


 援護すべきポイントにあふれているというような状況だ。こちらの体調も長距離移動のせいで万全とは言い難いものがあるからな。市民が協力してくれているとはいえ、現役の戦士ばかりというわけではない。


 オレとリエルは矢を放ち、ミアも地上に降りてきたときに補充していた石ころをスリングショットで放っていた。いつもの金属製の弾丸には殺傷力で劣るし、命中精度も下がるが、ミアはそれでも上手く敵の顔面に叩き込んで卒倒させていたよ。


 ……悪くはないペースだが、それでも敵の津波は瞬く間に『ガッシャーラブル』の西側の城砦に取りついていく。圧倒的な物量というものは、どうにも止めきれるものではないからな。


 各場所で接近戦が始まっている。敵兵どもは矢を山なりに放ち、ガッシャーラブルの城砦の上にいる戦士を狙う。板の盾に隠れていなければ、一斉射撃によって作られた矢の雨は防げない。ああいう攻撃があるから、城塞の後ろにいる戦士も安心ができないわけだ。


 こちらの死傷者も出始めているが、ガンダラも行動を始めていたよ。例の地味な嫌がらせをするつもりらしいな。樽を抱えていたよ。矢を防ぐための盾にも使えているな。



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