第六話 『不帰の砂漠イルカルラ』 その九十八
「お兄ちゃん、弓兵を襲おう!!」
「そうだぞ、ソルジェ!!あっちは余裕そうだ!!」
「ああ……だが、狙撃ではムダに時間がかかる。ゼファー、『雷』を叩き込んでやるとしよう」
『『かみなり』だね、いいよ、いつでもうてるっ!!』
……オレは敵の動きを見ていた。見つけているさ。連中は隊列を考えている……5人ずつで分かれているな。竜の戦い方をよく研究しているということだ。多用して来た『火球』についての対策だ。
5人一組でそれなりに分かれていることで、爆撃による死傷者を減らそうという戦術だ。一つのチームが犠牲になっても、他は生きるというな。悪くはない。野生の獣もよく採用する方法だ―――全員が助かりはしない。だが、最小限の被害で済まそうという方法になる。
悪くはない発想だが、万能ではない……5人ずつに分かれている隊列、その中心に『ターゲッティング』を刻み付ける。
「リエル、ゼファーっ!!敵を丸ごと感電させてやるぞっ!!」
「うむ、了解だ!!行くぞ、ゼファーっ!!私に合わせろッ!!極限まで、ためろおおッ!!」
『うん!!』
「……じゃあ、私は『風』でサポートッ!!ロロカから、習ったんだもん!!」
ミアがそう告げながら、小さな右手を天空へと向ける。『風』の魔術を使うようだ。何を使うか?……強力な威力ではない。『ガッシャーラ山』から注ぐ北風に『風』のカウンターを撃ち込み、抑止する……。
というよりも、気圧全体を操っているな。ゼファーが羽ばたきに頼らなければいけないほどに、この空間に異変は起きている。何をしているか?……気圧を下げている。ロロカ先生は、ミアにとんでもない知恵を与えていたようだな。
『……っ!?ばちばちが、つよいっ!?』
『雷』の魔力を体にため込んでいる最中のゼファーが驚いていた。
「気圧が低いほどに『雷』は冴えるものだ。ミアは、『風』を使ってより『雷』が有効に機能する環境を作っている」
「なるほど、さすが私の妹だぞ、ミア!!」
『さすがー!!』
とんでもなく有効な作戦だよ。でも、オレの脚のあいだにあるミアは、プルプルしている。
「で、でも、これ、思ったよりも疲れるから、早く……ッ!!」
「うむ!!十分だ、行くぞ、ゼファー!!私の魔力も、受け取り、放てええええええええええええええええええッッッ!!!」
リエルが『雷』の魔力をゼファーに送り込む!!
『GHAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』
歌と共に、リエルとゼファーの『雷』は解き放たれる!!
空を白く塗りつぶすほどの雷光が輝き、ゼファーの口から放たれた『雷』は地上を穿った!!オレの『ターゲッティング』に導かれたそれは、集約した次の瞬間、爆音と共に四方八方の無差別に奔走していた!!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンッッッ!!!
「ぐううう!?」
「がはああ!?」
「か、体がああッ!?」
電流の奔流に呑まれたのは、落雷現場の半径100メートルってところだった。高地であるゆえの低い気圧に、ミアがしてくれた気圧の操作。それに、オレが強化したリエルとゼファーの魔力で作った『雷』だ。
弓兵どもの大半を行動停止に追い込むことは容易い。殺傷力については直撃させていない分、余り高くはないものだが、その範囲にいる敵兵どもを感電させたことは大きい。
「ゼファー、着陸しろ!!ヤツらは今ので、迎撃は困難だッ!!」
『らじゃー!!がおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!』
ゼファーの巨体による押しつぶすような襲撃が、弓兵どものチームを丸ごと蹴散らした。
ゼファーが地上に降りると同時に、オレとミアのストラウス兄妹はそれぞれ違う敵のチームへと向かう。
「秒でー……殺すッ!!」
『風隠れ/インビジブル』で体重を軽減させたミアは、普段よりもはるかに速い。『風』を帯びたその神速の突撃は、ナイフと手甲から生やしたピュア・ミスリルの爪に高度な殺傷能力を与えていた。
ザシュザシュザシュ!!
敵の群れのあいだを駆け抜けながら、ミアは敵兵の手首を斬りつけていたよ。『一瞬の赤熱/ピンポイント・シャープネス』まで併用したいるからな、それらの一撃は攻撃の範囲こそ狭いものの、残酷極まる深さで敵の骨と肉を断つ。
悲鳴が上がる。
絶命ではなく、戦闘不能の重傷を負ってしまったヤツらの声だったよ。ミアは、慈悲深いな。
帝国人の悲鳴を聞くと、ガルーナ人の血はどうしたって燃え上がっていたよ。竜太刀と共に、オレだって敵どもの群れに突撃しつつ鋼の嵐へと化けた。
ストラウスの嵐。
帝国兵どもを斬り裂くに相応しい技巧をもって……オレも弓兵隊の一部を一瞬で斬り裂いていたよ。
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