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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第六話    『不帰の砂漠イルカルラ』    その六十一


「なるほど。『太陽の目』は『軍事的な組織』のような形となり、あまりにも民衆と距離が近づいたのですね。価値観が分かれしまっても仕方がありません」


 軍隊ってのは金と縁が深い。兵士は職業そのものだし、大勢いるから生活物資もいる。軍隊というのは間違いなく非生産的な集団ではあり、一方的な消費者だからな……たくさんの商人から喜ばれる大口の顧客だったりもする。


 どこの業者の小麦粉を買うかでも重要なイベントだ。小麦粉業者からすれば、僧兵たちに賄賂を送ってでも十分な見返りは得られるな……。


 もちろん、『太陽の目』が商人たちと癒着するとは思えんが、それでも他者との縁をないがしろには出来ないのがヒトってものだ。


 それに、軍事的行動ってのは、政治そのもの。政治ってのは選り好みして誰かに利益を与えて、誰かには与えない行動のことを言う。


 人材も時間も有限だからな。僧兵がパトロールしてくれる地域もあれば、そうじゃない地域だって出て来るもんだよ。治安がいい街路も生まれれば、そうじゃない街路も生まれる。


 その差は、わだかまりを生むことだってあるわけだ。ときには死活問題だな。とくに帝国軍に占領されている、商業都市なんかではね。


 僧兵が寄りつく街路の店は大きな発展をするし、そうでない店は商売がしにくい。帝国商人に負けつづけるかもしれないよな?


 ……帝国兵に因縁ふっかけられるかもしれんからだ。メイウェイが名君であったとしても、兵の末端全員の誰もが善良でフェアな行いを好むとは限らん。


 こんな商業都市での『自警団活動』か?……宗教的な哲学以外にも、『太陽の目』の行動方針を狂わせたり、思考パターンの多様化を招いて当然ではあるよ。そういったものが、長老たちの対立を誘引しているのさ……。


 ヒトは皆、己の利益を確保しようと、手練手管を使ってくるものだ。善良な僧兵たちは、影響を受けやすく、ある意味では操られやすくもあるからな……『太陽の目』の僧兵たちは外部からの影響を受けてしまった。蛇神の声ではなく、市民の声に動かされた。


 帝国に居座られて、政治組織も軍隊も解体されていた『メイガーロフ』の人々にとって、『太陽の目』は自分たちを護ってくれる数少ない身近な軍事力であり、唯一の自警団だったわけだが……。


 複雑なことに、そいつは宗教団体としての本懐ではないとホーアン殿は感じておられるらしい。ホーアン殿の悩みの一端に触れることが出来たよ。


 より『太陽の目』について学べた気になれる―――ていうか、学べたよ、確実に。生きた勉強ってのは肌で感じられるから好きだ。『知的』という言葉からは、あまりにも縁遠いガルーナの野蛮人にとっては、3冊の分厚い本を読むよりも効果的な学習法だろう。


 ガンダラはいつか『肌で感じるイヤな感じの経済学』だとか、『実録・政治と宗教団体』とか、そういった本を書けば、世の中に五万といるオレ並みにアホな野蛮人たちに知識を少しばかり与えてくれて、世の中の発展に寄与するんじゃないかね……?


 世界の複雑さを少しばかり学んだ野蛮人のオレの視界に、美しい我がヨメと妹が目に入る!


「あ!お兄ちゃんだー!!」


「うむ。ソルジェとガンダラだな」


 二人が接近して来てくれる、とくにミアは猛烈にダッシュして飛びついて来たよ!


「お兄ちゃーん、兄妹合体だよー!!」


「おうよ、来い、ミアー!!」


 難しく、そして世知辛い情報を知ってしまったオレは、ミアから放たれる妹成分を補給したくなっていたよ!!


 ガシッと抱きついて、抱きしめる!……そして、ミアを高い高いするんだよ!


「わーい!!たかーい!!」


「ああ、高いだろー!!」


 ああ、心の底から本当に癒やされる。社会の暗黒面に脚突っ込んだ直後だと、本当に無邪気な笑顔が心を癒やす。砂漠で喉渇きすぎて死にそうな男に、大量の泡立つ美酒が与えられたようなものだからな……っ!!


「よーし、モード・チェーンジ!!」


 ミアは軽業師か、あるいは世界で一番可愛らしいお猿さんみたいな器用さを使って、肩車モードに移行していたよ。


「えへへ!」


「……はしゃぐのはいいですが、気を抜き過ぎないようにしてくださいね、ミア?」


「大丈夫だよ、ガンダラちゃん!このトーレスト・モードは、巨人族さんさえも越える身長を使い、周囲に対して完璧な警戒を行うモードだもん!」


「……分かりました。そうして下さい」


「そーするよーん!」


 トーレスト・モードにある無敵の索敵能力を持ったオレのそばに、正妻エルフさんがやって来る。


「戦況は沈静化しているぞ。メイウェイという男は、かなりやり手で。敵兵を逃してしまったのは惜しいが……」


「そのおかげで休める」


「……うむ。我々は、『攻める』のだからな」


「ああ」


 まったく、成長しているよ。戦略を読んだか。リエル・チームを率いさせて、戦略理解が上がったのかもしれない。オレは何だか嬉しくなって、リエルの頭をナデナデしてみる。


「うひゃあ!?い、いきなり、どーした!?」


「夫婦のスキンシップをしたくなっただけ。リエルの成長を感じられたからな」


「フフフ。私は、いつも成長しているのだぞ?……常日頃から、もっと感心するように」


「してるさ」


「良い夫婦関係ねえ。一夫多妻とかいう文化じゃなければ、もっと安心して見られたんだけど……」


 ドゥーニア姫はオレたち四人夫婦について誤解があるようだな。だが、別にいいさ。今はビジネスだ……。


「……リエル。メイウェイは来ているな」


「近づいているようだな。馬の足音がする……三騎で来るようだぞ」


「……だそうだぜ。マルケス」


 オレは気配を消してついて来ていた男の名前を呼ぶ。アインウルフは、寺院の柱からその姿を現して、こちらに向かって歩く。ドゥーニア姫が、フフフ、と鼻で笑っていた。


「……気配を悟らせなかったか」


「魔力を消すのは得意でね。魔術そのものが、上手くはない」


 『欠けた雷』の使い手は、そう自虐する。一つだけ、とんでもない魔術を使う男じゃあるんだがな。たしかに、マルケス・アインウルフは魔術師としての才があるとは言いがたい男だった。


「……だが、私を見ていたね、ケットシーのお嬢さん」


「フフフ。だって、トーレスト・モードに見破れないものはないのだから!」


 腕を組みながら、オレの肩の上でミア・マルー・ストラウスはそう語ったよ。このモード、冗談半分じゃあるけど……ミアの索敵能力を向上させなくもないんだよな、本当に。




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