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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第六話    『不帰の砂漠イルカルラ』    その五十五


 地上に戻ると、遠くに喧騒が聞こえる……まだ戦闘は続いているようだが―――。


「―――決着がつきそうということだろうな……」


 左眼に手を触れて、ゼファーと心をつないだよ。戦場は、キュレネイの教えてくれた予想の通りに動いていた。こちら側の大いに優勢……ランドロウ・メイウェイは老練な軽装歩兵たちを突入させて、『カムラン寺院』を守っている。


 つまり、敵を殺しまくっていたよ。


 ―――『どーじぇ』!おしごと、じゅんちょー?


 ああ。順調だよ。長老たちは守れたし、収穫物はあった。


 ―――そっかー、よかったー!


 そちらも良さそうだな。


 ―――うん。ていこくへいどもは、ほとんどうごけない……めいうぇいがきて、しきが、ぼきっとおられたかんじっ!


 ……だろうな。メイウェイの軍事的な才能については、オレたち以上にヤツらはよく知っている。

 だからこそ、昨夜の戦に巻き込んで暗殺しようと企んだわけだ。しかし、メイウェイは生き残った。そして、今があるわけだな。


 アルノアはドジっちまった。といっても、オレたちが介入しなければ、帝国軍に対して忠義があるメイウェイは表立って『反乱』など起こすことはなかっただろう……こんな状況になれば、『自由同盟』からすれば弱点丸出しの最高の獲物だからな。


 ……メイウェイってのも、なかなかマジメな男のようだ。


 今は部下とその家族のために、軽装騎兵の先頭で大暴れしていやがる。槍を振り回し、次から次に『敵兵』となった強硬派の帝国兵どもを殺しまくっているよ……ヤツが戦闘に参加しているということは、北の帝国兵の拠点にいた連中の説得は終わったわけだ。


 ……素早いな。さすがカリスマではある。北の拠点の連中は、武装解除だけで済んだのか、あるいは少なくない数を味方に引き入れたのだろうよ……このまま、ヤツに任せておけば良さそうだよ。


 ゼファー。ドゥーニア姫を連れて、そろそろ『カムラン寺院』に帰還しろ。流れ矢に当たってもしょうがないからな。


 ―――らじゃー!!『まーじぇ』たちは?


 ……そうだな。もう援護はいらない。合流の合図を送ってくれ。そろそろ全員で合流しておきたい。『カムラン寺院』を、オレたちの新しいアジトにするぞ!


 ―――わかったー!さくせん、かいしー!!


 ……これで、十分だな。


「……ゼファーへの連絡は終わったでありますか?」


 キュレネイがこちらを見上げている。うなずくよ、その指摘が正しいのだから。


「ああ。全員で合流するぞ……この『カムラン寺院』にな」


「では、とりあえずガンダラと長老たちのいるところに移動するでありますか」


「そうしてくれ。案内を頼むぞ」


「イエス。私のお尻についてくるであります」


「……お尻か」


 キュートなお尻について、いかつい戦士たちは歩くとしよう。キュレネイ・ザトーを先頭にした我々の行進は、僧兵たちに発見される。


 怪しまれることはない……赤毛の人間族の大男と、水色の髪をした美少女サンが仲間だってことを、ガンダラはホーアン殿に僧兵たちへ伝えるようにでも言ったんだろうよ。怪しまれるどころか……サポートを受けられた。


 とくに、マファラ老は重傷だったからな。


「だ、大丈夫ですか、マファラ老!?」


「おけがを!?」


「……大丈夫じゃ。持ち場に戻れ。ワシは、この通り過剰なまでの護衛がついておるし、メケイロに運ばれている」


「しかし……他の護衛の僧兵たちは?」


「……蛇神の財宝を守るために戦い、命を落とした」


「そ、そんな……っ」


「帝国兵め……っ。で、では、遺体の回収を―――」


「―――ならん。今は、戦に集中しろ。蛇神の僧兵は、戦の最中に黄泉路の祈りなど聞かずとも迷うことなく蛇神のもとへと向かえる」


「……はい!」


「持ち場に、戻ります!!」


 仲間の弔いを出来ないことは、弔いを司ることの多い僧侶としては辛いことだ。おそらく、他の職種よりも葬儀について考える機会の多い人々だからな。それでも、僧兵たちはガマンしたよ。


 マファラ老の言葉に納得したのだ。指導者の言葉というものには、重みがある。


 権威主義者の肩を持つ気じゃないけれど、言葉なんてものは賢者も愚者も狂人も、ほとんど同じコトを口走るもんだ。大切なのは、『誰』が言ったかということだよ。誰よりも長く僧兵をやって来た長老たちの一人だからこそ、宗教的な言葉に深い説得力を与えられる。


 オレが同じ言葉を使うよりも、はるかに僧兵たちを納得させて、その行動を促すだろうよ。老人の経験値には敬服すべきさ。


 ……さーて、移動は再開した。キュートなお尻を追いかけるオレたちは、やがて一つの大きな部屋に辿り着く。


「ここは……やけに汗臭いところだな」


 古くすえた汗のにおい……武術家は嫌うことはないだろうが、それでも別に好きな臭いでもないだろう。おそらく、ここは鍛錬の場……。


「なるほど。演舞場か……ここならば、ちょうどいい広さじゃな。戦いになっても、隠れやすい場所もある……」


「演舞場ね」


「……オレたち僧兵は、ここで日頃の鍛錬を高僧たちに見てもらうのだ。型のズレなど、それを修正していただく……僧兵として昇進するときも、ここで高僧たちに儀式を受けるのだ」


「そいつは神聖な場だな」


「では、汗臭い神聖な場に入るであります」


 キュレネイは見張りに近づく。


「キュレネイ・ザトーと、ソルジェ・ストラウス以下いろいろであります」


「はい。ガンダラ氏より、聞いております。お通り下さい」


「イエス。さあ、合流第一弾でありますぞ」




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