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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第六話    『不帰の砂漠イルカルラ』    その二十四


 ……語り合ってしまったな。理由は分かる。何故なら、オレたちは二人とも未熟者だからだよ。ドゥーニア姫は優れた才能を持っているが、残念ながらオレよりも若い。未熟なオレよりも若いということだ。恐ろしいな。


 ゼファーの背に座ったまま、後ろを振り向いてみる……多くの人々がそこにいる。


 必死に生きぬこうとしている者たちだ。オレたちは、彼らの命を背負っている。それがどれほど重いことだろうかを、精確にはきっと理解しないままな。国を失った。家族を亡くした。財産も奪われ、屈辱に悶えて無意味に虚空に吼えた夜もあっただろう。


 幾晩も星を目掛けて呪うように叫んだことは、きっとドゥーニア姫にもある。オレがそうだからな。誰しも、国と家族を奪われちまえば、そんな夜を過ごすことになるものだ。


 巨人族の姫サマだろうが、人間族の野蛮人だろうが、与えられる苦しみに、どんな風に心が軋んでしまうのかには差異などない。流れる血の色が同じように、所詮は、心も似たような作りをしているのだ。


 オレたちは、未熟だからこそ、割り切るための力が足りていない。


 もっとクールに、状況を受け入れられたら良いのだがな。だが、オレたちの心はトラウマの痛みに呻いている。


 ……この戦に負ければ、オレたちのような痛みを、背後にいる人々に再び味わわせることになるのだ。


 彼らがどれだけ苦しんでいるかを、オレたちは理解することは難しい。ヒトの痛みというのは、固有の感覚だ。本質的には誰とも分かち合えることのない、孤独で、誰より自分だけのものなんだよ。


 それでも。


 予想するだけで、呑み込まれてしまいそうになる。


 ドゥーニア姫は、その黒い瞳を自分に命を預けてくれている者たちに向けていた。強気な言葉を操り、迷いを隠すための貌を今はしていない。何を見ているのか?……輝く『未来』さ。だが、そこにたどり着くための道は、険しくもか細い。


 ちょっとズレちまえば、右にも左にもどこまでも落ちるコトができる、高く切り立った山の尾根のようなものだ。そんなところを、オレたちは大勢の命を背負ったまま歩いているわけだよ。


 ……絶望はしていない、希望を見ている。


 だが、それでもなお不安だから、オレたちは言葉を求めたわけだ、ドゥーニア姫。それでも、オレたちは可愛らしいもんだ。主すぎる責任からは、誰しもが逃げ出したくなるものだ。


 17才のガキに、老竜アーレスは『ファリスを滅ぼせ』と頼んだ。情けなくも、どうすればいんだ!?と叫んでしまったよ。国一つ滅ぼす方法なんて、ガキの頭の中には見つけられるはずもなかった。


 無いモノを探す旅に、出かけることになった。


 どこに行けば得られるのかも、そもそも本当にあるのかも分からない。誰も保証してくれることない可能性だ……希望ってのは、小さくて光り輝いているが……どこまで行けば手に入るのか、その光が真実のものであるのか、誰も確かなことを知らない。教えてもらえないものなんだ。


 だからこそ。


 オレたちは断言しなければならない。


 断言することで勇気を作り、周りに力を与えるために。可能性がゼロに等しいものであるのなら、ちょっとでも、その可能性を大きくするために足掻いてもがいて、苦しまなければならない。


 オレたちは、そういう道を歩んで来た。


 ……まったくもって、未熟者にはキツい道ではあるな、ドゥーニア姫よ。だが、気づいているはずだ。


 不安だけではなく、痛みへの怯えだけでもなく。この苦しみの道を歩むことの喜びにな。


「……良い日だな、ドゥーニア姫」


「……ん。ああ……そうだな。良い日だ。私は、そなたの言葉で色々と見えているぞ。どういうものか、分かるか?」


「いいや。分からんな。だが、きっと、似たようなものだろう」


「なんとも適当な言葉だ。しかし、そうだ。私も、同意見だ。きっとお前は、私と似ているが、ちょっと違うことを考えている」


「ああ。そうだと思うぜ」


「……そなたは、どんな力を好む?……メイウェイをも受け入れる力とは、どういうものなんだ?」


「今の君が体現しつつあるものと、似ているものだ」


「……多くの者を集め、束ねた力」


「そうだ。ガルーナの魔王。その名に相応しい力ってのは、色んな力が融け合ったものだ……混沌に等しく、それでいて、『自由』で……その力のもとでなら、オレの魂は癒やされるだろう。たとえ、永遠に戦い続けるような状況になったとしてもな」


「ハハハ。何を言っているのか、よく分からないはずなのに……私は、何故だか共感してやれる」


「気が合うな、ドゥーニア姫よ」


「そなたがルードの王ならば良かったよ」


「変なコトを言うものじゃないぜ」


「失言だった、許せ。そなたのもう一人のクライアントに失礼だった」


「分かればいいさ。クラリス陛下は、ケラケラ笑って許してくれる」


「笑うか。ふむ……強い指導者なのだろうな」


「日々、その大きさを感じている。いつか、同じような力を得る必要がある……そう考えると、ビビっちまえるぞ」


「魔王も大変そうだ」


「『メイガーロフ』をまとめることもな」


「ああ、そうだな……だからこそ、私は幸運だ。そなたらが、ここにいた。おかげで、もう少しばかり強い女のフリができそうだ」


「フリじゃないさ。だんだん、モノにしちまっている。ドゥーニア姫、君は、きっと昨日の君よりもずっと強い」


「……そうだな。そなたらがいる。そなたも、そうだろう」


「君がいるな。心強いことだ。そして……」


「メイウェイも」


「……敵の敵だが、十分だ。信じるさ。君が信じているのだから」


「それでいい。私に賭けろ、ソルジェ・ストラウス。私の戦いで得た感覚が、きっとお前に幸運を与える」


「幸運か。オレたちの生きざまを貫くには、必要なものだ」


「……敵をも呑み込み、己の力とするがいい、魔王よ。私が、そなたに先んじて、教えてみせる……そなたは、いつか、今宵の再現をより大きな形で成し遂げろ。そのときには、きっと……私と砂漠の勇者たちも、魔王の軍と並び、世界の在り方そのものを変える力の一つとなる」




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