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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第六話    『不帰の砂漠イルカルラ』    その二十三


「とにかく、ご苦労だった。ゼファーも疲れただろう?」


『だいじょーぶだよ、どぅーにあ!』


「そう。でも。しばらくは飛ばなくてもいい」


「潜めというわけか」


「そうね。このまま『ガッシャーラブル』に向かう……下手に空を飛ぶと敵に警戒されるかもしれない。メイウェイと『ガッシャーラブル』の帝国兵の交渉に、悪い影響を与えたくない」


「メイウェイを信用しているわけか」


「……そうだ。アイツは、約束を守るだろう。部下をムダに死なせようとはしない。何度も戦って来て、そのことは理解している」


「分かった。君の考えに従おう……ゼファー、いいな?馬と同じように歩くとしよう」


『うん。そーする。だって、くらいあんとのいこうに、したがうべきだもんね!』


「ハハハ!竜によく、躾けてあるな。まったく、『メイガーロフ』にも竜がいれば、私も求めるのだが」


「『メイガーロフ』に竜の伝説はないのか?」


「残念ながらな。聞いたコトもないぞ……蛇神は、竜とは異なる。空を飛ぶことはなく、大地の底と雪山を走るという伝説だ」


「蛇神か……」


 竜とは関係がないだろう。竜と蛇は全く違うのだからな。だが、巨大な蛇か……少しばかり見てみたい気もするな。ハイランド王国にも巨獣どもはたくさんいたが、蛇神はどれぐらい大きいのだろうか?


 ……宗教が夢想する神にしか過ぎないのであれば、現実にいないのかもしれないがな。


「とにかく。今はメイウェイの交渉に頼る。我々は、『ガッシャーラブル』に静かに接近する……状況次第では、メイウェイのサポートをすることになる」


「制圧に失敗する可能性か」


「帝国兵の全員が、メイウェイになびくとは限らん」


「……そうだな。それに、『太陽の目』もいる。帝国兵にとっては、彼らとの衝突もリスクか」


「『太陽の目』は武闘派ぞろいじゃあるんだ」


「こちらとは協力体勢を築くという約束だ。バルガス将軍が死んだことで、わだかまりは解決している」


「私は人気者か。彼らからも」


「指示されている。少なくとも、長老たちの一人であるホーアンからはな」


「……ホーアンか。大昔は武闘派だったというが、今はかなりの穏健派か」


「世俗をちゃんと理解しているような僧侶だと感じるぞ。偉大な人物だ。恨みに囚われてもいない……ナックスを助けたのだ」


「感謝すべきことだ。おかげで、ソルジェ・ストラウス。そなたたちとの縁を我々は結べたのだからな」


「ナックスがいなくては、君たちの元にたどり着くまで、もっと多くの時間がかかっただろうな」


「蛇神は、我々を結びつけたかったのかもしれない……異教の者からすれば、納得しにくい言葉かな?」


「いいや。そんなことはない。オレたちは、この土地に生きる蛇神の信徒たちを傷つける気など、全く無いのだ」


「……仲間だというわけか」


「蛇神の教えのもとに一つというわけではなくとも、帝国という共通の敵を前にして、結束することが可能だ。そういう結束でも、始まりとしては十分だ。『自由同盟』と縁を結んでおけば、きっと、『メイガーロフ』との共通点を多く見つけられる」


「そうかもしれないな。すまないな、私は、疑り深い女だ」


「いや。会ったこともない者を信じることは、それはそれで異常な行為だよ」


「そなたらは信じている。たしかに……始まりの関係としては、十分か」


「同じ敵を前にして戦えば、絆はすぐに作れるさ」


「ハハハ!そういった考えは、大陸中の国で共通なのか」


「まあな。敵と戦をすることで、仲間同士、結束する。大陸中で、そういう歴史は繰り返されている」


「……なるほど。ヒトというのは、そういう獣か」


「ああ。だが、残酷なだけではない。偉大な行いもする。この過酷な砂漠と荒野の国に、人々の暮らせる王国を築いたりな」


「嬉しいコトだな。ヒトを、信じられる」


「信じるべきだ。ヒトは、偉大な獣だ。この戦いに勝利すれば、もっと実感することができる……今日の苦しみの一つ一つが、小さな戦いの一つ一つが、より大きな勝利と、それが導く『未来』につながるとな」


「『未来』か。そなたは、興味深い男だ」


「よく言われるよ。オレとしても、ユーモアあふれる魅力的な男を目指しているんだ」


「ユーモア?……そういうものとは違うかもしれないが、私は、そなたの性格は好ましいものだと感じる。これから苦しい戦いに挑むというのに、『未来』という先のことを見ようとしているのだから」


「すぐに来る『未来』だ。帝国を打倒し、人間族と亜人種の差がない大陸を創る」


「……険しい道だ。種族のあいだには、大きな差異がある」


「だからどうした?……ヒトの差異なんて、気にすることのほどでもない。同じように笑う、同じように赤い血だ。そして、お互いを好きになれば、愛し合って子供だって作れるんだからな」


「……たしかにな」


「世界ってのは、そんなに複雑なもんじゃない。考え過ぎちまうから、時々、複雑に見えてしまうだけのことだ」


「ああ。そうなのかも」


「オレの言葉を信じろ。人種のあいだにある憎しみなんざ、結局のところは幻想だ。ヒトってのは、そんなものに負けるようには出来ちゃいない。オレたちはな、ドゥーニア姫。皆で集まるからこそ、大きな力を出す……今、この国の中心にいて、人種を越えて、敵も味方さえも越えて、力を集めている君なら、きっと理解できるだろう」


「……ああ。そうか。この力って、そういうものなんだな……」


「勝てるさ。不安になることはない。信じて、今は砂漠を歩くとしよう」


「……メイウェイも、信じるのか?」


「……信じる。君が信じるあの男を、オレも信じてみることにする。ヤツの戦いっぷりは分かっているからな……それに、帝国を裏切る人間族の力を集める。それも、オレには必要な才覚となる。帝国を、打倒しなければならんのだからな」




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