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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第六話    『不帰の砂漠イルカルラ』    その十一


 ギュスターブはそうは言ってはいるが、戦いたくてたまらないのは分かる。頭のなかに新しい技巧が出来ちまっている時ってのは、そうなるんだよな。ヒマならオレが相手してやってもいいんだが―――今は仕事の真っ最中だ。


 オレは眼帯をずらすと、アーレスから授かった魔法の目玉に力を込める。連動するようにゼファーも同じことをするのさ。


 高度を低くしたまま、オレとゼファーは砂漠を睨む。探しているものは、探し始めてから数分で見つかったよ。


「……見つけたな」


『……うん。みつけたね』


「二人して何を見つけたんだよ?」


「アルノア軍の足跡だ。これで、確実にヤツらを追跡できる」


「……どこに?」


「5キロぐらい先だ。すぐに見えてくるさ」


『いま、むかっているからね!』


「サー・ストラウスって、相変わらず人間族離れしているところがあるよな」


「竜の力が混じっているからな」


「その説明だけで納得するの、オレには出来そうにない」


「他の偉大な生物の力をもらったことはないんだがな」


 ……強いて言えば、アリューバで『ゼルアガ/侵略神』と戦ったときに、フレイヤから魔力をもらったことはあったがな……。


 多分、もうあの魔力はどこかに行っちまっているだろうさ。


「む。見えてきたようだ」


「ラシードは目がいいな。砂漠の巨人族だから、砂漠に慣れているってことか?オレは見えない……」


「視力に自信があるほうではないが、おそらくは慣れているからだろう。1時の方角だ」


「……んー。おお、分かった。見えたぞ!」


「私にはまだ見えんよ」


「高く飛べば確実に姿を見つけられるさ。砂に刻まれているのは、馬の足跡だけじゃないからな。歩兵の数も多い……」


「この距離で、足跡の差まで分かるとはね。驚愕すべきことだが、私は段々、君に慣れてきているようだ」


「それほど驚けないか」


「ああ。君なら、そんなこともあるのだろうと思える」


「褒められているのかな」


「方向性はそうだよ。尊敬よりも、畏怖にも近しい感情だがね。さて、それじゃあ作戦を開始しようか。このままアルノア軍に追いつくより先に、狼煙を仕掛けておくべきだろう」


「たしかにな。ラシード、どこに設置するべきだ?」


「まずは、ここより北だ。2キロ北上し、砂丘の上に設置しよう。それから、2キロずつ東に設置するんだ」


「アルノア軍を追い越す形になるなじゃないか?それでいいのか?」


「ギュスターブ、問題はない。ラシードは、狼煙を連携させることで、『組織的な動き』を演出したいのだよ」


「もっと簡単に言ってくれないか?」


「……つまり、アルノア軍を取り囲むような動きを予想させるということさ。背後と真横と斜め前に狼煙が上がれば、敵は自分たちを包囲するように軍を動かすつもりではないかと考えるものだ」


「そう言われたら分かった。賢いな、巨人族って」


「北に意識を向けた後に、竜が北西から襲撃して来る……北にドゥーニア姫の軍勢がいるかのようなイメージを抱かせることにはつながるだろう」


『じゃあ、きたにいくんだね、『どーじぇ』?』


「おう。頼むぜ、ゼファー」


『らじゃー!』


 ゼファーは足跡を追いかけるのを止める。左の翼を立てて、ブレーキをかけつつ鼻先を左へと向けていく……北を向いたゼファーは、羽ばたきを使い、砂漠に落下しそうだった体を加速させていた。


 この低空飛行を維持することは、竜には困難な技巧だが、地に尻尾の先をつけることもなかったのは見事なものだ。竜騎士にだけ分かるような職業的な感動だから、口に出すことはないがな。


 ゼファーはラシードの指示の通り、2キロほど北上して適当な砂丘を見つけた。そこに着陸すると、ラシードが素早く行動する。


 砂丘の頂上部に、その筒状の装置を突き立ててると、着火剤を使い導火線に火を点けていた。


「では、次に行こう」


「煙、まだ出てないぞ?」


 ドワーフの戦士の疑問に巨人族が応えていた。


「時間差だ。4分後には、この筒から黒い狼煙が上がる……夕焼けが来る前だ。黒い煙が空に長く描かれることになる」


「便利なアイテムだ。グラーセス軍も、錬金術師に用意させておくべきかもしれない」


「作り方が知りたければ、教えるよ、新たな同胞よ。だが、今は」


「ああ。次に行くんだな」


『じゃあ、いくね!こんどは、にきろ、ひがし!』


 ラシードを乗せたゼファーは、作戦を正確に実行していった。2キロ東の砂丘にラシードは狼煙を設置し、さらにそこから2キロ東に飛んだ後に見つけた砂丘にも、同じように狼煙を仕掛けていた。


 慌ただしいことだが、それらの作業が終わると、オレたちは再び西へと移動する。アルノア軍に対して北西から攻撃することが、今回の作戦だからだ。『新生イルカルラ血盟団』の居場所を誤魔化すためにな。


 ……アインウルフの言う通り、冷静でまとまりのある組織であれば、こんな作戦には引っかからないが、寄せ集めのアルノア軍には効果は大きいかもしれない。少なくとも、『実害』は出してやるのだからな。


「……行くぞ!!竜が怖いってことを、アルノアどもに教え込んでやるぜ!!」


『うん!!あるのあぐんを、こうげきだー!!』


 漆黒の翼で空を叩き、ゼファーは力強く加速していく。オレは魔力を高める。奇襲攻撃だ。アルノア軍に対して、『ターゲッティング』と火球で爆撃を仕掛ける。その直後に、北西へと引き返す……弓矢による迎撃にさえ気をつければ、ほぼリスクはない一撃離脱の戦術ってわけだ。


 ……加速した世界の果てに、アルノアの軍勢がいた。連中は狼煙に気づき、その隊列を止めてしまっているな……いや、前進する者も、立ち止まる者もいる。状況を把握できていないわけではなく、指揮系統が混乱しているのさ。


 軍隊の強さは、結束でも決まる。


 今のところ、アルノア軍のそれは大した強さではないように見える。だが、油断はしない。最速で、最強の一撃で打撃する。竜への恐怖を植え付け、北西に『新生イルカルラ血盟団』の幻想を見せてやるためにな。


「ゼファー、歌ええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!」


『GHAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』

 

 

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