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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第五話    『ドゥーニア姫の選択』    その八十四


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ドワーフ青年は歌を放ちながら、砂丘を駆け巡る。ブンブンと剣を振り回す。その顔面は求道者の貌そのものであり、まるで哲学的な悩みを抱えた知識人のようでもある。ああいう面は、インテリの専売ってものでもない。


 葛藤と追求に関する集中力は、オレたちのような野蛮な戦士も得意分野だ。考えることで答えを見つけるのではなく、ただ肉体を酷使していくことで、技巧を磨くんだがな。もちろん、少しばかりは考えている。


 どんな動きをすれば効率的なのかを、無数の失敗をすることで学んでいるのさ。ギュスターブは砂に足を取られては、豪快に何度も転がっている。見た目こそ、雪遊びに夢中になっているバカな犬のようなものだがな……。


 ……鋼を振り回して、マヌケに転んだりしなければ、得られない経験値というものもあるのさ。


 ギュスターブは、すぐに見つけるだろう。『イルカルラ砂漠』における戦い方を。天才剣士がバカ犬みたいに必死となっているんだからな……なんだか、ニヤニヤしてきちまったよ。


 オレもギュスターブ・リコッドみたいに、雪で遊ぶバカなガルーナの赤犬になって、このクソ暑い砂漠を駆け巡りたくなるぜ。


「……ソルジェさま、楽しそうです!」


「……ククク!そうだな。ギュスターブがまた強くなる。オレはアイツと競い合うことが楽しみなんだ」


「良かったです」


「ああ……だが、今は……ドゥーニア姫だな」


「……お姫さまっすね!」


「そうだ」


 『イルカルラ血盟団』の現リーダー、ドゥーニア姫か。


 馬に乗った彼女がこちらに歩いて来る……護衛はナックスだけか。少し離れた場所には『イルカルラ血盟団』の戦士たちが、どこか心配そうな表情でこちらを見つめてはいるが、武器に手をかけるようなことはしていないな。


 オレたち『パンジャール猟兵団』を信用してはいるのだろう。あるいは、『自由同盟』への期待か?……ガンダラと一緒に来ているということは、オレとガンダラが話し合いをすることを防いだのかもしれないがな。


 ……『フクロウ』の手紙には、ドゥーニア姫の動向が細かく記されていただけはないのだ。ガンダラらしくはないな。ドゥーニア姫は、自分の考えを多くガンダラに話してはいないのだろう。


 ああ。こっちを見ているな。冷静さを宿した貌だが、その内心はどういうものなのだろうか。リーダーシップと才能を持っているのかもしれないが、この状況ではプレッシャーを感じてはいるさ。


 オレは馬から下りた彼女に向けて歩き、彼女もまたこちらへと接近して来る。剣を使うようだ。腰裏には長い曲刀を持っている。巨人族の長い腕には、あの曲刀のサイズは適しているな。


 馬上からの斬撃を放つためのデザインを帯びた、美しい曲刀だ。どういう技巧で使うのか、実際にこの目で見たくもある……まあ、遠からずその機会も訪れることになるだろうがな。『イルカルラ砂漠』は、戦の機運に溢れてしまっている。


「……ソルジェ・ストラウスだな?」


 若い凜然とした声が、姫君の唇から放たれる。オレはその言葉にうなずいた。


「そうだ。我が名は、ソルジェ・ストラウス。ガルーナ最後の竜騎士にして、『パンジャール猟兵団』の団長だ。今は、『自由同盟』の傭兵として、ルード王国の女王、クラリス陛下に剣を捧げている」


「そうか。私の名は、ドゥーニア。『メイガーロフ武国』の遺臣ガールケスの長女。今は『イルカルラ血盟団』の長として、帝国との戦いに身を置いている」


 背の高い彼女はオレに近づいて来て、その長い腕を差し出した。オレもそいつをマネしたよ。野蛮な戦士の手と、戦姫の手が握手を交わすのさ。


「……まずは、歓迎しよう。ソルジェ・ストラウス。ファリス帝国と戦う同志が、私たちの国に来てくれたことをな」


「歓迎してくれるか」


「もちろんだ。戦ってもらうことになるぞ。もてなしは、何もしてやれない」


「戦う機会をくれるのなら、それで十分だ。ガンダラからは聞いていないか?……オレは帝国を滅ぼすために、『自由同盟』の傭兵をしているのだ」


「帝国を滅ぼすか……偉大な目標だな、赤毛の戦士よ」


「まああ。だが、皆の力を集めることで、それもまた実現すると信じている」


「……私たちも、その力に組み込みたいというのか?」


 どういう意味の言葉なのか?……それは明確だった。ドゥーニア姫は懸念しているのだ。自分たちがルード王国の支配下に組み込まれることをな。


「誤解させないために、まずは言っておくが」


「何だ、戦士よ?」


「ルード王国のクラリス陛下は、『メイガーロフ』を併合しようとはしていない。クラリス陛下は領土的野心に駆られている人物ではないのだ」


「……ふむ。その言葉を信じてやりたいが―――」


「―――信じればいい。疑う必要がない言葉だ。クラリス陛下も、そして『自由同盟』の哲学も、他国への侵略ではない。あくまでも帝国からの解放だ」


「解放か……その行いに、クラリス女王にメリットがあるのか?自国を守るためだけの戦には、ルード王国は勝利したのではないか?」


「帝国軍を追い返しただけに過ぎない。帝国軍も、かつてよりはその力に翳りが見えているかもしれないが、まだ予備兵力は十分にあるのだ」


「リベンジされると?」


「するだろう。帝国軍の戦力が回復すれば、ルード王国は再び滅亡の危機にさらされる。だからこそ、帝国軍に連続して打撃を与える必要がある。そのために、クラリス陛下は各国と協力して帝国と戦おうとしている。反帝国組織を援助するのも、そのためだ」


「領土的野心はゼロだと?」


「クラリス陛下にはない。もしもあるのなら、オレたちがバルガス将軍の特攻を援護することはなかっただろうし、今の動乱に便乗して国境を越えて進軍しているさ」




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