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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第五話    『ドゥーニア姫の選択』    その七十九


 協力してもらおうじゃないか。帝国軍の将軍であった男ならではのアイデアがあれば、オレたちだけではやれない妨害工作をやれるかもしれん。


「……そうだな。君らは焦土作戦を行っている」


「ああ」


「ならば、狙うのは武器庫か……とくに消耗品である矢」


「いい考えだな。武器庫がどこか分かるのか?」


「馬がいる場所だ。軽装騎兵の宿舎に集めている。第六師団の伝統をメイウェイは守っているだろう」


「出撃のしやすさを考慮してのことか……」


 武器庫の管理というものは、なかなか重要だな。合理的な配置が最善とも言えない。


「あそこ、お馬さんがいるっすよ、ソルジェさま!」


 カミラが『ラーシャール』の北西に位置する建物を指差す。大きな納屋があるな。街の中央にある水場からは離れている……火事になれば、全焼は免れないか。


「馬への被害を与えたくはないが……あの納屋には馬具だけでなく軽装騎兵のための矢も保管してあるはずだよ」


「どの納屋だ?」


「最も北にある門に近い場所の納屋だ。武装を完了させ次第、出撃させていく。色々と思案した結果の答えだ」


「ならば、今も変わってはいないか……歩兵用の矢も同じ場所か?」


「いいや。歩兵用の矢は一括の管理はされていない」


「ゼファーの魔力も有限だ……そっちはあきらめるか」


「詰め所に置かれている矢の数は、それほどには多くない。攻撃すべきは、あの赤い色に塗られた屋根だ。あそこを焼き払うといい」


「……分かったよ。カミラ」


「はい、ソルジェさま。馬を逃がせばいいんですね?」


「そうだ。馬好きのアインウルフに気を使っているわけではないぜ?……馬が逃げちまえば、そいつを捕らえるための労力がかさむからだ」


「私のためでなかったとしても、私としては嬉しいね。しかし、どうやって馬を逃すというのだ?」


「笛を吹くのさ」


「ん?……笛?」


「まあ、見てろ。カミラ」


「お任せ下さいっす!」


 カミラ・ブリーズがリンゴの木をくり抜いて作った笛を取り出し、あの柔らかな唇に触れた。そのまま、オレの腕のなかでカミラ・ブリーズはやさしげな音色で笛を歌わせる。


『……かみらのふえ、なんだか、ぞわぞわーってするから、すきー!』


 竜さえもゾワゾワさせちゃうらしいな、カミラの笛は。『ルナティック・ハイ』、動物たちを操る魔性の力。カミラ・ブリーズの偉大なる才能の一つ。『吸血鬼』として継承された力―――ではないのかもしれない。


 カミラによれば『吸血鬼』になるよりも前から、動物を笛で操れたとも聞いているからな。『吸血鬼』の力を得たことで、それが倍増したのかもしれないし、あるいは全く『吸血鬼』の力と関わりがないのかもしれないが。何にせよカミラの力であるに変わりはない。


 リンゴの木の笛が奏でた歌に、地上の馬たちは心を掴まれる。ヒヒイイイン!!という興奮したいななきを合唱させると、パニック状態になったかのように柵を越えて、あるいへ蹴り壊して市街地への脱走を始めていた。


「……ふう。完了っす!」


「おつかれ」


「いえいえ」


「まさか。笛の音で、軍馬を操ったというのかい?」


「はい。自分の特技の一つっすよ」


「さすが、カミラ姐さんだ。何でも出来るぜ」


「多彩な女性だ」


「えへへ!褒められちゃいました!」


「……素晴らしい才能だよ。なるほど、動物を操れるか……それは『ベヒーモス』もなんだね、ミセス・カミラ?」


「はい」


「『グラーセス王国』で見た力だ。君らに敗北した理由の一つだね」


「そういうことだ。さてと、ゼファー!」


『おっけー!がおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』


 ゼファーは火球を撃ち放つ!それは大きな威力をもった火球ではなかったが、赤い屋根の大きな納屋に火を放つには十分な力は持っていた。納屋のなかには、飼い葉もあるんだろう。火の手が回るのは、かなり早い。


 炎の舌は卑しさをまとい、屋根と壁を這うように走り、舐め回された天井はすぐに赤い炎に呑まれていったよ。


「……ソルジェ・ストラウス。アドバイスがもう一つあるぞ」


「教えてくれ」


「馬に負担をかけることになるが、アルノアの軍勢の動きを簡単に妨害する方法がもう一つあったことを思い出したよ」


「なんだ?」


「燃えている納屋から南を見たまえ」


「南……?」


「ちいさな小屋があるだろう。日干しレンガで組まれた小屋だ」


「ああ。大きくはないが……貯蔵施設なのか?何がある?」


「塩だ」


 その言葉でオレの唇はニヤリと歪んでいた。なるほど、やはりアドバイスを聞くことは有益だ。とくに何かの分野のエキスパートの言葉はな。


「馬は汗をかく。我々、ヒトと同じようにな。塩分の補給を怠れば、馬は脱水症状を来してしまう。大量の尿を排出して、自ら干からびるのだ」


「ああ、聞いたコトがあったな」


「軍勢を見回したところ、アルノアの援軍が使っている馬は、バーラムド種が多い……荒れ野に強い馬だが、少しばかり汗っかきだぞ」


「汗をかくほどに、塩を失うか。塩を奪うことは、馬の動きを封じる、いい攻め方になるってわけだな。ラシード」


「岩塩商人の倉庫も焼こうというわけか?」


「察しがいい。教えてくれ。効果的にアルノア軍の動きを封じられるかもしれん。商人の財産を焼くことは嫌いか?」


「もちろん。だが、帝国軍に奪取されるよりはマシだろう。今は、戦時下だ」


「戦に勝ったら、詫びの手紙でも送るとしようか。ゼファー、やるぞ!」


『らじゃー!!』



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