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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第五話    『ドゥーニア姫の選択』    その七十七


『こうげきするんだね?』


「ああ。狙うのは、アルノアの騎兵の群れの中央だ。突撃して追いかける騎兵を分離するぞ……」


『ぶんり……?あ。そっかー、めいうぇいにあるのあのきへいを、こうげきさせやすくするんだね?』


「そういうことだ。少数に分断してやれば、メイウェイの騎兵が戦いやすくなる」


「ソルジェさま。それって、時間をかけずに殲滅することが可能なら、メイウェイはアルノアの騎兵を叩くってこと……ですか……?」


「ああ。アイツらには戦い合ってもらわなければならない。オレは、別に帝国人が好きなワケじゃない。ヤツらには一人でも多く死んでもらう……アインウルフ。それでも構わないだろ?」


「もちろんだ。素通りさせるより、よほど私の旧友たちの死人が減る。それに、アルノアの血気盛んな騎兵を叩いておくことで、戦略的な効果も高まる。砂漠での戦いに、有能な騎兵は不可欠だからだ」


「それを奪えば、自分たちの有利になるんすね。アインウルフさんは……それでいいわけですね」


「……疑わないでくれるかな、ミセス・カミラ」


「ご、ごめんなさい。でも、自分は……第六師団と戦ったこともあるせいなのか……自分の友だちは、あなたの軍団と戦って、死にました」


 ……ああ。そうだった。カミラと同じ金色の髪の娘。オレとミアは、彼女を見つけたときカミラが殺されたと思い込んでしまっていた。怒りと悲しみと絶望が、オレたちの心に雪崩込んで来た瞬間だったな。


 雄々しく戦い、敵に捕らえられ拷問を受けて死んだ彼女は……カミラには、とても言えない事実だが、屍姦好きの帝国兵に犯されていた―――言えないな。言う必要もない。勇敢な戦士は、ただ戦場に眠ればいい。誇り高く。


「……悲しいことだが、戦とはそういうものさ。ヒトが死ぬという重たいはずの事実が、あまりにも多発する……」


「……はい。でも……」


「わかっている。君の問いに対する答えになっていないな。私は、アルノアと戦うことを望んでいるよ」


「メイウェイがこの場で死んだとしても、それは変わりませんか?」


「ああ。『ラーシャール』での非道を、私も君と共に見たのだぞ?……燃える街並み、殺された亜人種の死体……老若男女を問わぬものだ。私は、アルノアを許すことはない」


「……そうっすか……」


「帝国人のアインウルフには、十分な言葉だぜ、カミラ。アインウルフにとっては、かつての戦友たちとの対決も含む言葉だ」


「……はい。自分も、納得しました。お手間を取らせて、申し訳なかったです」


「いや……結束は大事だ。私も、決めなければならん。ソルジェ・ストラウス。この『メイガーロフ』での戦、君らにどこまでも付き合うぞ」


「そこから先はどーなんだよ?」


 ギュスターブの横やりに、オレは苦笑しそうになっちまうな。空気を読めないし、あえて読まないところがある男だ。アインウルフは、無色のため息を空に残して言葉を続ける。


「正直、先のことまでは考えられないが、人間族の過ちを止める人間族がいるべきだとは考えている。ソルジェ・ストラウスの行動に、私が望む『正義』の影を見たならば、取引以上のことをするだろう」


「ククク!……そうかよ。そいつは楽しみだな」


「期待しているよ。君の器を見せてくれ」


「言葉ではなく、行動で示しているだろう。オレも、憎しみからは逃れられん。それでも欲しい『未来』があることは変わらん」


「『未来』か……」


「……なあ。サー・ストラウス、地上が頃合いっぽいぞ?」


「ああ。大丈夫だ。しっかりと見えているさ、ギュスターブよ。オレの魔法の目玉は、特別製なんだからな」


「そうだったな。知ってるよ。でも、オレたちは長く喋り過ぎている気もする」


「たしかにな……さて。ゼファー!やるぞ!!」


『らじゃー!!』


 漆黒の翼が天空で広がり、ゼファーの幼くも力にあふれた巨体が躍動する。空で回転して地上を睨みつけるのさ。地上を走るのは、メイウェイの騎兵どもに接近して来るアルノア軍の騎兵どもだ。


 ヤツらは活きがいい。つまり、戦闘に参加していなかった新鮮な戦力……潰しておいて得は多い。


 眼帯をずらして、魔眼の力を解放する。『ラーシャール』の通りを狭苦しそうに駆け抜ける帝国人どもの騎兵の群れを見る―――メイウェイはこちらの攻撃を予想しているらしい。


 動きが遅いからな。全速で走ることはなく、脚を休ませ温存させているように見えた。こちらの援護待ちか?……そういうつもりなら、よく連携してくれよ。


 疾走する騎兵どもの列……馬上で背後に向けて放っているヤツらから、ちょっと後ろのあたり。アルノア軍の騎兵どもの最前列からやや後ろさ。そこに金色の呪いを刻みつけていた。


「ゼファー!!謳えええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!」


『GHAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHッッッ!!!』


 竜の歌が戦場の空を許し、鋭い牙の列の奥底から、金色に渦巻く煉獄の劫火が撃ち放たれる!!アーレスの力に導かれて、ゼファーの火球は加速し、その大きさを増大させた直後、アルノア軍の騎馬隊を爆撃していた!!


 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンッッッ!!!


 街路の敷石を砕き、大地を焼きながらえぐる乱暴な爆風に、アルノア軍の騎兵どもが焦がさされながら薙ぎ倒されていく。騎兵どもの追撃は、吹き飛んだ馬の巨体やら、焼死した帝国人の体に降り注がれることで強制的に止まる。


 散乱する燃える死体が障害物になるってわけだ。そのおかげで、アルノア軍の騎兵どもは分断された。


 メイウェイは、やはり狙っていたのだ。オレたちの援護攻撃を。この攻撃が行われると即座に、一部の騎兵が踵を返して、分断されたアルノア軍の騎兵の最前列へと襲いかかっていきやがる。


 予測されていたという自分のマヌケぶりには、若干ながら腹は立つが、いいさ。やっちまえよ、メイウェイ。そいつらも、オレの敵には変わりない。



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