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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第五話    『ドゥーニア姫の選択』    その七十


 上空へと浮かぶ頃、間合いの遠すぎる矢が飛んでくる。ゼファーは満足げに、ふん!と鼻息を鳴らしていたよ。そのまま、上空へと浮上を続け、オレたちは矢の間合いから完全に脱していた。


 騎兵どもと弓兵どもの落胆が見える。ガッカリさせたらしい。オレたちの戦術としては成功だよ。アルノア軍を走らせて、その体力と気力を削いでやったんだからな。あとは、少しばかりまだ矢を消費させることも。


「くそ!!」


「撃つな!!ムダに矢を使うことになるぞ!!」


「野蛮人が!!降りて来やがれーッッ!!」


 降りるわけがないさ。今、飛び立ったばかりなのだからな。追いつけなかった方が悪い。あるいは、不用意に突撃してしまったことこそが最大の悪手になるか……。


 地上で騒ぐアルノア軍に興味を失いつつあるオレは、首を右へと振って北の様子を見つめていた。


 メイウェイの軍勢は、沈黙を破っていた。


 馬から下りていた軽装騎兵のベテランどもが、軽やかに馬の背へと乗っていく。休ませていた。自分も馬もな。緊張することなく、落ち着いている……ベテランならではの強みか。


 アルノア軍の騎兵どもは常に馬の背に乗っていたな、アルノアの指示なのかもしれない。多くの戦場では帝国軍ってのは騎兵を馬の背から下ろすことを好むような連中ではないのだ。


 騎兵は馬と一体になっていてこそ、その威風を発揮することも可能だからな。貴族趣味であり、『イルカルラ砂漠』に詳しくはないであろうアルノアからすれば、騎兵をだらけさせることを望まなかったのだろう。


 ……だが。


 『イルカルラ砂漠』においてのベターな対応としては、馬の背に乗らないことらしい。ベテランの戦士たちは、馬の脚を徹底的に休ませることに集中していた。体力的には若手が多いアルノア軍には敵わなくても、ああいったコツを多く使うことで有利になろうとしている。


 軽装騎兵を中心に構成された、メイウェイの軍勢はゆっくりと南下を始めていた。衝突不可避であると判断したのだろう、メイウェイは旧友たちを見捨てられないようだ。悪い選択ではない。欲深な帝国貴族に期待しすぎるよりは、いい選択だぜ、メイウェイ。


 ……アルノアは卑劣な男で、知恵も回る。そして何よりも欲深い。『自由同盟』の軍勢が近づいているというのに、内紛とクーデターを仕掛けるようなヤツだからな。


 軍人としても政治家としても最悪のヤツだ。あまりにも欲深い。


 メイウェイよ。そんな男に期待するのは、間違いだったさ。お前の身を差し出したところで、アルノアはお前の部下たちを殺さなかったとは限らん。支配を確実にしようとすれば、お前の部下たちを片っ端から殺すことだってあり得た。


 力を見せて、上手く取引を行う?


 ……おそらく、オレたち『自由同盟』の存在そのものさえも利用したさ。オレたちに対する切り札として、メイウェイの旧友たちは必要不可欠な戦力であるという論法を使って、アルノアを説得したかったのかもしれない。


 どうであれ、目論見は外れたな。軍人としては不満の残る選択になるかもしれないが、お前は戦うことになった。オレのせいではあるがな?……恨むなよ。お前の旧友たちは、生き生きしていやがる。


 マルケス・アインウルフと共に、大陸各地を荒らして回った真に最強の騎兵集団だった『帝国軍第六師団』だからな。


 オレたちがグラーセス王国で戦ったのは、コイツらが引退しちまった後のヤツらだ。コイツらは、亜人種族の戦士たちも戦列に加わっていた頃の手練れどもだ。戦いたかったという願望も少しは出て来る。オレはどうしても戦士だからな。


 ……グラーセス王国での戦いはかなりハードだったが、あのときの第六師団は最強ではなかった。最強の駒を揃えたマルケス・アインウルフと戦う……そいつは、どうにも武者震いを呼ぶ楽しみではある。


 眼下には古強者どもがいた。コイツらは年を取り、負傷がたまり、かつてほどの強さではないのかもしれないが……久しぶりの戦に、血が踊っていやがることは見ているだけで分かる。


 若い馬ばかりでもないな、体に傷がある馬さえもいる。古い傷痕と、高齢であることは馬の動きを制限することにもつながるはずだった。だが、軍馬どももまた喜んでいるように見える。


 鼻息荒くも、首をまっすぐに戦場へと向けていた。恐怖を感じているようには見えないな。馬は家畜のなかでは賢い動物ではあるから、戦を仕込むことも可能なのだろう。長らく戦場を旅して来たことで、メイウェイ軍の馬たちは、真の戦士となった。


 あるいは、戦争の道具として完成したのか。


 老いていることがそのまま弱さに直結するとは限らないことをオレは知っている。ガルフ・コルテスは、それを教えてくれた典型的な人物の一人であるしな。


「……め、メイウェイだ!!」


「メイウェイの軍が、動き始めていやがるぞ!!」


「や、やはり、竜と組んでいたのだ!!」


「メイウェイ大佐は、『自由同盟』と内通していたというのか……?」


 ヤツはオレたちと内通してなどいないさ。


 ……ただ利用しただけなんだがな。これも戦だ、悪く思ってくれるなよ、帝国兵の諸君。オレたちは少数だ。こういう作戦も使わなければ、貴様らを滅ぼすことが出来ないんでな。


『……『どーじぇ』、はじまるね!』


「ああ。楽しみか?」


『うん!どっちがかつかなー』


「引き分けが理想だがな……メイウェイの力を、見せてもらいたくはある」


『そだねー。どっちも、つぶしあえー!!』


「ああ、帝国人には一人でも多く死んでもらいたいからな」

 



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