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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第五話    『ドゥーニア姫の選択』    その六十七


 『聖なる呪われた娘』は、悪を裁いた後でそのアメジスト色の瞳に浮かぶ涙を拭う。慈悲深く、やさしい彼女は敵の死だって心の底からは喜べはしない。だが、『正義』のために戦うのだ。猟兵の『正義』は、敵を戦場で駆逐し、恐怖を与えることで誰かを救える。


 ガルフ・コルテスの教えは、カミラもまた継承しているのだ。


「―――カミラ殿……その怒りは、とても貴重なものだ」


「―――ふむ。ミセス・カミラ……強いな」


「―――さすがだぜ、カミラ姐さん!」


 三者三様の感想を我々サイドの戦士たちは持ったようだな。ギュスターブは戦士すぎるせいか、カミラの力に惚れ直しているようだった。


「―――サー・ストラウスのヨメらしい雰囲気だった。さすが、猟兵だ」


「―――え、えへへ。そ、そうっすか?……でも、姐さん扱いは……ギュスターブさんの方が年上っすもん」


「―――長く生きてても、オレ、カミラ姐さんほど強くないからな」


「―――いやいや、自分、猟兵のなかでは一番、武術とか下手っすもん……」


「―――はあ。オレより強いヤツが、グラーセス王国の外には、いくらでもいるんだな。古池のナマズにでもなった気持ちだ」


「―――いいや。ソルジェ・ストラウスの仲間たちが異常なのさ」


「―――同意見かもしれない。『パンジャール猟兵団』の猟兵たちは、誰もが強大な力を有している」


「―――はい!『パンジャール猟兵団』は、大陸最強の傭兵団っすから!」


 キラキラした笑顔で答えながらも、カミラは『闇』を使う。再び『コウモリ』へと化けることで、戦士たちを運ぶのだ。『ラーシャール』の街並みをうろつく殺戮者は、一掃されたわけではないからな……。


 ……オレも策を見つけなければな。メイウェイの軍勢と、アルノアの軍勢を衝突させる方法だ。地上のカミラたちの活躍を左眼で見つつも、そのあいだに4人ほど射殺しているし、血の気の荒い敵兵からは矢が何十本か飛んで来てムダ撃ちをさせてもいる。


 アルノア軍の上空ばかりにいることで、苛つかせてはいるがな……アルノア軍は意外とガマン強い。『ラーシャール』を襲うことも、メイウェイ軍と戦い、メイウェイを確保することも望んでいるハズなんだがな……。


 不確定要素があるのか……?


 ……そうか。『イルカルラ血盟団』の動きを気にしていやがるのかもしれん。襲撃のタイミング次第では、アルノア軍に大打撃を与えかねないからな……カミラたちの攻撃の結果を待たねばならないかもしれなさそうだ。


『……あ。『どーじぇ』!』


「どうした、ゼファー?」


『あいつ、あいんうるふがころしそこねたやつ!』


「あえて殺さなかったのさ……こういうコトを期待してな」


 アインウルフに半殺しにされた帝国人が、アルノア軍の場所まで戻ったのさ。ゼファーは『風』と己の強靭な聴覚を使い、再び地上の声を拾ってくれる。


「―――人間族に、斬られた……っ」


「―――亜人種の戦士たちに、人間族の兵士が混じっているぞ」


「―――帝国の剣を使う!……間違いないぜ、アイツはメイウェイの部下だ!メイウェイは、やはり亜人種びいきの、帝国の裏切り者なんだ!」


 ……いいアクションになった。メイウェイに反乱を起こしたアイツらは、メイウェイの粗を探していたからな。欲しかった『正当性』が転がり込んで来たってわけだよ。理想的な火種になってくれそうだ……プレッシャーのかけ時は、今だろう。


 オレだって賢い連中に比べたら目も当てられないようなアホな蛮族に過ぎないかもしれないが、少しぐらいは知恵を使う。


 狙うべきターゲットを見つけている。上手く自軍の奥底に隠れているであろうアルノアは見つけられはしないが……アルノア軍とメイウェイ軍をぶつける方法は見つけているんだよ。


 『ラーシャール』の南東にいる小規模の部隊。およそ二十人ほどの連中だな。オレとゼファーは、今までヤツらに近づくこともしなかった。アルノア軍の本隊にプレッシャーをかけるために、本隊の周辺ばかりを旋回していたからな。


 ……見つけてはいたんだが、見逃していた側面もある。今この時のような状況になった時の切り札としたかったからだ。


 ヤツらは何なのか?


 アルノア軍の人事を知らないオレでも、その答えはすぐに分かる。ヤツらはメイウェイ軍に対する見張りだ。軽装騎兵の多いメイウェイ軍が『ラーシャール』の東側を駆け抜けて、アルノア軍に突撃を仕掛けるという戦術に対しての備えなんだよ。


 メイウェイ軍の動きを見張っているヤツらってわけだ。そいつを、オレは今から殲滅してやることに決めた。ゼファーの背中の鱗がピクリと動く。どうやら、魔眼を使わなくても、こちらの気配を悟ってくれたらしい。『ドージェ』は嬉しくなるぜ―――。


『―――『どーじぇ』、あいつら、こうげきするんだね?』


「そうだ。アルノア軍のなかに、メイウェイ軍への不信感が広がっている。ゼファーが上空を旋回しつづけてくれたおかげで、下の連中も冷静さは欠けてきているさ……そして、メイウェイは策士だ」


『かしこいんだね』


「ああ。メイウェイなら、竜と竜騎士をどう使うのかを、下のヤツらは考えている。イヤな予感もしているだろう……」


 メイウェイは名将だ。帝国本土の政治的意向に反していたとしても、軍人としての評価までは下がることはない。


 ……メイウェイなら、アルノア軍を攻撃する時は、こうするかもしれんな!


「行くぞ、ゼファー!!」


『らじゃー!!』


 ゼファーは急旋回し、街の南東の砂丘の上に陣取る部隊目掛けて急降下していく!戦いに逸る気持ちが、ゼファーの血潮を灼熱させる。牙を剥くのさ、青い空のなかに、銀色の煌めきが狂暴な光を放つ!


 オレの魔法の目玉も活躍するんだよ、あの獲物どもの中央に向かって、『ターゲッティング』を刻みつける!


「りゅ、竜が来たぞおおおおおお!!」


「く、くそ、弓だ!!」


「射落とせえええええええええええええええ!!」


「たったそれだけの数で、オレたちを止められるわけがない!!ゼファー、歌ええええええええええええッッッ!!!」


『GAAHHHOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHッッッ!!!』


 歌と共に、煉獄の劫火が帝国人どもへと撃ち放たれた!煌めく火球は加速し、その威力を倍加させながら、帝国人の兵士ともども、小高い砂丘そのものを爆破し崩す!!


「うわああああ!!」


「く、くそ、す、砂があああああ!!」


 爆破で吹き飛ばされた大量の土砂が、質量となって帝国兵どもを襲う。衝撃波と振動と、空からの大量の焦げた砂のシャワー……オレたちの姿を隠すには、なかなかいい遮蔽物だ。


 そうだ。


 地上へと降りる。遠距離での戦いばかりを、竜が好むわけではない。




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