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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第五話    『ドゥーニア姫の選択』    その六十三


「竜だあああああああああああああああああああああああ!!」


「『蛮族連合』の竜が出たぞおおおおおおおおおおおおお!!」


「矢を撃てえええええええええええええええええええええ!!」


 地上から帝国人どもの叫びと共に、弓を絞る音が聞こえてくる。だが、遅い!奇襲を果たしたゼファーは、降下したときに加速を得ているんだよ。ゼファーは翼で空を叩き続けて、さらなる加速をしながらアルノア軍の上空をまたたく間に飛び抜けていた。


 ゼファーの翼跡を目掛けて無数の矢が放たれるが、その矢が射抜くのは青空に走った黒竜の影ばかりだったよ。


 反転して背後の敵を狙うってのは、なかなか心構えがつくりにくいことだろう。竜との戦い、備えてもいただろうが……夜の闇に隠れていなかったとしても、疾風よりも速い飛翔に、狙いをつけることは難しいもんだ。


 多くの矢が放たれるが、それらは皆、誰も傷つけることのない軌道を走るだけに終始する。敵の攻撃の範囲を飛び抜けたゼファーは、大きく左に旋回することを選ぶ。ムダな矢と注意を奪うだけではない。


 竜の圧倒的な姿を見せつけてやるためだ。


 美しく躍動する、最強の力。


 空の支配者である生命の輝きを、地上にいる帝国兵どもに見せてやる。恐怖を思い知らせてやるのさ。貴様らが戦わなければならない相手は、あまりにも巨大であり、あまりにも強いということを識るがいい。


 ……ゼファーの力強さに比べれば、全くもって地味な威力に過ぎんが。オレの指は弓に絡みつく。ゼファーの装甲に収納している、愛用の大弓だ。弓に矢をつがえる。ゼファーはこちらの動きを肌で感じ取ってくれていた。


 空で尻尾を振り、旋回の角度を急激に深めた。


 敵の群れへと向かうのだ。


 砂漠にたたずむ、3000の帝国人どもに!


 牙を剥く。狂暴な衝動が、殺意の形を選ばせる。ガルーナ人の屈辱を晴らせと燃えやがるんだよ、血がな!熱いはずの砂漠の風さえも、今のオレには冷たく感じる。それほどに、殺意の炎は猛って狂うのさ!


「死にやがれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!」


 殺意と怒号に染まった歌を放つのだ。空を揺らして、ヤツらを恐怖に縛るために?……それもあるが、帝国人に対する基本的な恨みのためにだろうな。感情的にもなる。喜びも溢れる。


 ガルーナの裏切りものであるファリス帝国人を殺すことになるんだからな……弓を限界まで引き絞り、天空からの矢を放つ。


 矢は轟音を上げて暴れたよ。乱暴な軌道。美しさに欠ける、ただただ力尽くの一撃でしかない攻撃になるが、問題はない。


「ぎゅがはあ!?」


 名も知らない帝国人の弓兵を一人、射殺していた。心臓を貫く矢だ。矢に与えていた旋回のモーションによって、その心臓の肉は引き千切られるように壊されただろう。死ぬまでは長くかからん、慈悲深い矢だった。


 ……もちろん。リエルがこの矢を見ていたら、無様だと評価するかもしれんがな。ムダに力を込めすぎている。その動作と体力が作るムダな時間を次の矢のために捧げれば、敵兵を射殺した感動に身震いしている間に、もう一人、帝国人を殺せていたな。


 ヤツらは多いんだ。


 今日は少なくとも3000人はいやがるからな。真にクールな弓使いであるのなら、淡々と正確な射撃をもって殺し続けなくてはならない。


 にやけた面を筋力でマジメな顔にしながら、オレは矢筒から矢を引き抜いた。その動作の間にも、空に向かって矢が放たれつづける。しかし、空を飛ぶことのアドバンテージがある。


 帝国人の連中の矢は、こちらに当たりはしない。


『のーだめーじ!』


「おりこうさんです、ゼファーちゃん」


『えへへ!』


 カミラに褒められることで、ゼファーは嬉しそうだった。オレも褒めたくはあったが、カミラがそれをしてくれたから攻撃に集中するとしようじゃないか。矢をつがえながら、ブーツの内側でゼファーに合図を送っていた。


 砂漠の天空で、再び黒竜は踊る。


 もちろん技巧を凝らしてはいるぞ?……太陽の光に隠れるようにして、動いている。こうすれば帝国人どもは逆光にその目をやられちまう。ゼファーの高さと位置を誤認して、ムダな矢をさらに放ってくれるというわけだ。


 無数の矢が飛んでくるが―――その全ての矢に高さは足りない。何度もムダな矢を放たせることは出来ないが、こういう技巧と戦術を使うことで、その回数を少しでも増やすことが肝心じゃある。


 地味じゃあるが、有効だ。弓兵から矢を奪い取ることはな。


 ガルフ・コルテスが満足げにうなずくであろう作戦を成功させつつ、オレは再び矢を放つ。狙ったのは弓兵だ。兜に赤い毛飾りをつけたヤツ。熟練の弓兵の一人。太陽の逆光にやられなければ、こちらの矢を見切って躱してしまったかもしれないが……太陽の加護は偉大だった。


 矢が敵兵に突き刺さる。悲鳴も上がることなく、そのままゆっくりと血を吐きながら砂漠に沈んだ。胸元というか、喉の下あたりに刺さっていたからな。声帯を破壊しちまったわけだ。


 ……リエルに怒られそうだ。


 どうせなら、悲鳴を上げさせた方が、いい嫌がらせになったんだがな。まあ、構わん。次の射撃はそうするさ!


 再び矢を放ち、今度は弓兵の下腹部に突き立てていた。へその下あたり、悲鳴を上げられるほどのダメージだ。それに貫通しているから、手当をしてもすぐに死ぬ重傷じゃある……せいぜい、死が訪れるまでの時間、竜と竜騎士の怖さを知らしめるがいい。


「クソがああああああああああ!!」


「蛮族めええええええええええええええ!!」


「撃ちまくれ!!あの黒い竜を、地上に叩き落としてやれえええ!!」


 怒りと報復の矢が飛んでくる。


 ゼファーは高度の調節を間違うことはない。砂漠の風のなかを踊るように飛び、ムダな矢を再び放たせる……いい飛び方だ。敵を消耗させるには理想的な動きをしてくれている。


 あとは……作戦を使うことにするか。帝国人同士の対立を煽ってやらねばならんからな。方法ぐらいある。ヤツらのあいだに元々ある不信感を利用してやればいい。


「ゼファー、アルノアの軍勢の周囲を、ゆっくりと飛び回ってやれ」


『らじゃー!!』


「アルノアたちだけが狙われていると、理解させてやるぞ。そうすれば、メイウェイの軍勢への不信感も強まる」


「メイウェイの軍に協力しているような雰囲気を与えるんすね?」


「そういうことだ。住民じゃなく、メイウェイの軍に攻撃の意識を向けさせてやりたい」



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