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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第五話    『ドゥーニア姫の選択』    その三十九


 砂埃にまみれた扉はグラーセス・ドワーフの戦士らしい方法で開かれていた。ブーツの底に力を込めて、強烈な一撃を叩き込むだけの簡単なお仕事だ。


 錆びかけていた蝶番ごと、木製のドアが内向けに倒れ込む。薄暗い地下の通路の先にあったのは、通路よりも明るい空間だった。天窓があるのか?……いいや、降り注いでいく光を追いかけると大きな亀裂があるだけのことだ。


 歴史の重みに日干しレンガが絶えきれずに、崩落していったらしい。その崩落したレンガをいつかこの砦にいた位の低い作業員たちがこの部屋から取り除いた日があったのだろうな。


 亀裂を作るために崩落してきたにしては、床に転がる砕けたレンガの破片は少なすぎたが……それなりの量の砂が床の上には広がっている。


 裂けた天井からの光に照らされた、砂埃まみれの部屋を見回していく。戸棚には多くの薬瓶が並んでいる。色とりどりの毒々しい色合いの薬液たちで飾りつけられた、とてもカラフルな戸棚が正面と右手側の壁には列を成していた。


 そして、左手側には寝台が設置されている。板がむき出しになっている簡素すぎるベッドだ。床で寝るよりはマシってレベルの睡眠を与えてくれるだろう。そこには、血に汚れた包帯が捨て置かれている。


 オレはそのベッドに近づいていた。ほかに観察するための何かが、そこに転がってはいないかを探すためにな。すぐに見つけられたのは、血の付いたナイフ……細いものだな。とても繊細な作りをしている―――医療用のナイフだろう。


「ナイフを焼いて消毒してから使ったか……」


「はい。そのナイフには拭き取られているっすけど、血がついています」


「さすがだな」


「はい。自分、『吸血鬼』っすから」


「『ヴァルガロフ』での経験も生きているんだろ?」


「……はい。今までよりも血について詳しく感じ取れるようになっているっす。ソルジェさま、こっちに来て下さい」


 カミラ・ブリーズはベッドと薬瓶棚のあいだにある壁に近づいた。アメジスト色の瞳は、その壁をしばらくのあいだ、じーっと見つめていたよ。


「そこに何かあるのか」


「はい。ここから、血の臭いが漂ってくるっす。ここのベッドで傷の手当てを受けていたヒトのことを、メイウェイたちは担いで運んだと思います!」


 そう言い切りながらカミラはギュスターブのそれよりも、はるかにスピードのある蹴りを壁に叩き込んでいた。壁が砕けて、バラバラになってしまう。


「……おお、スゲーぜ、オレの蹴りなんて、まだまだ過ぎるんだな」


 人生に新たなコンプレックスを獲得したドワーフの青年は、少しばかり肩を落としていた。


「えへへ。自分、けっこう力が強いんすよ!農家の娘っすから!」


「……これから農家の娘をからかうことは、一生なくなった気がするぜ。カミラ姐さんはスゲーんだな」


「カミラ姐さんっすか?」


「リスペクトを込めて、そうすることにした。オレには、壁を一瞬で壊すほどの脚力は、まだないからな」


 ギュスターブは壊れた壁の破片を拾い上げると、握力を行使して粉砕していた。力自慢らしい行動だったよ。力でカミラに負けたことが口惜しいのさ。


 『吸血鬼』の魔力、『闇』はヒトの体を強化する力もある。カミラは常に『チャージ/筋力増強』にも似た魔術の加護を受けているような存在だ。『吸血鬼』の力が、オレとカミラのあいだに出来る子には、是非とも受け継がれていて欲しいと願っている。


 ……さてと。


 カミラが見つけてくれた隠し通路を覗くとしようか。壁に開いた穴……崩れかけているその穴を広げるために、ガルーナ人の指で大穴の側面にある日干しレンガを掴んでは、レンガを取り除いていく。


「オレも手伝うぞ、サー・ストラウス!」


「そうしてくれ」


「穴を掘るのは、グラーセス・ドワーフ族の得意な作業だ」


 役割分担をする。オレは上の方のレンガを、ギュスターブは下の方のレンガを掴んでは力尽くで取り除いていったよ。


「……ふむ。こんなところに隠し通路か……私がかつてここに来た時には、見つけられなかった」


「王家の資料にも書いちゃいなかったのか?」


「そうだ。書いてはいなかったぞ、ソルジェ・ストラウス」


「メイウェイとその仲間たちは、ここに気づいたか。お前が『メイガーロフ』から去った後も、ここを何度か調べていたらしいな」


「メイウェイはここを使う可能性を感じていたのだろう」


「危機感ゆえに、か……ラシードたちの戦いは、メイウェイのストレスになっていらしいぞ」


「……いいや。メイウェイは、私たちではなく『自由同盟』に恐怖を抱いていたのだと思う。アインウルフの軍勢を、君たちは、グラーセス王国で破ったのだから」


「そうだ!オレたちとサー・ストラウスたちで、アインウルフの野郎をぶちのめしてやったんだ!……まあ、たっぷりとやられちまって、追い詰められてもいたけどな」


「この数年で敗北したことなど、無かったのだがな。良い戦いだった」


「……口惜しそうに言ってくれよな?そうじゃないと、楽しみが弱いじゃないかよ?」


「フフフ。私も素直ではないのだろう、ギュスターブ」


「ふん。強がりを言っていればいいさ。さて、サー・ストラウス。これぐらいで通れるだろう?奥に行ってみようぜ」



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