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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第四話    『ザシュガン砦の攻防』    その九十八


 『コウモリ』の群れに化けたオレたちは、空高くへと飛んで行く。戦場の空は赤く焦げていたよ。『ザシュガン砦』は、『イルカルラ血盟団』の工作のおかげで、あっという間に炎に呑まれていたからな。


『うわー。すごーく、燃えているっすねー』


『敵の手に堕ちていた砦とはいえ、かつての『メイガーロフ武国』の主要な城塞の一つ。焼け落ちる姿を見るのは、何とも切ない気持ちになるものだな』


『気持ちは分かる。炎ってのは、容赦なく思い出までも呑み込んでしまうものだからな』


『ソルジェさま……』


『君も、故郷を焼かれた口だったな』


『そうだ。多くを失ってしまったが、まだ大切な者が残っている。オレは、復讐のためだけに生きることを止めてしまっているが、失った者への愛情は変わらん』


『はい。変わっていないっすよ。ソルジェさまは、ずっと、妹さまとお母さまのことを愛し続けているっす』


『乱世というのは、悲しいものだな、ストラウス卿よ』


『全くだ。しかし、だからこそ、勝利せねばならない。そうしなければ、何もかもを失うことになるのだからな』


『うむ。そなたの言葉は、私の心に重たく響いて来る……』


『まだ戦士でいられることを祝おうじゃないか。オレたちは、自分の愛も悲しみも怒りも苦悩も、鋼を振り回すことで表現することが出来る。愛を、示そうぜ。暴力的にな』


『魔王らしい言葉だ』


『えへへ。本当に、そうっすね!……さて、お二人とも、とりあえず、東に向かいましょうか?』


『そうだな……』


 このまま、燃え盛る『ザシュガン砦』を見守っていても、得るものは無さそうだ。帝国人どもが砦の城門を打ち破って、砦のなかに入る光景にはイライラしても感動することはなさそうだしな。


 確認すべきことは、ない。メイウェイがこの下にいるとしても、そいつを探していたらカミラの魔力が尽きて、『コウモリ』の術が切れてしまうかもしれん。そうなれば、大変な労力を要して敵陣の中から脱出しなければならなくなる。


『よし、離脱してくれ。ゼファーを追いかけて、東に逃げ延びた部隊と合流しよう』


『了解っす!』


 パタパタパタ!愛らしくも『コウモリ』の翼は力強い速さで空を飛ぶものだ。鳥に劣らぬ速さで飛び、風の強い夜なんかは、鳥よりも速く飛ぶことだってある。


 カミラの能力が獣としてのコウモリと、どれほど同一視していいのかは不明だが、その速さは同じようなものだったよ。


 あっという間に戦場を飛び抜けていく。敵は、この脱出に気がつくことはないだろう。焼け落ちる砦の地下にある秘密の通路にも気がつくことはない。


 これで、公的にはバルガス将軍は死亡したという認識になるだろうよ。


『……ストラウス殿、私を死人にしてくれたなら、東に向かった仲間と合流することは出来ないのだぞ?』


『分かっている。バルガス将軍は、ゼファーの背にいればいい。あとは、オレたちの道具の中にある変装道具を使ってもいい』


『変装道具?』


『そういうものが要求される状況だってあるのさ』


『ソルジェさまは、敵の将に化けて、敵軍を崩壊させたこともあるんすよ!』


『ほう。器用だな、竜騎士殿は』


『小が大に勝つには、そういう小細工だって使う必要がある』


『道理だな』


『バルガス将軍、アンタは身を隠すことも出来るし、顔を隠して誰でもなくなることも出来る。考えようによっては、昨日よりも今日からの方が、より自由を得ているとも言える』


『……自由か。身の振り方を、自力で考えなければならない状況は、久しぶりだ』


 亡国の将軍という生き方というのも、自由からは、あまりにも遠い立場であったかもしれない。祖国の復興のために、指導者として戦い続けることを強いられるような立場だからな。


 それに、今夜、死ぬ覚悟をしていた。


 死ぬ覚悟が空振りした時の、なんとも言えない虚脱感を、オレはよく知っているよ。自分が生きている理由も分からず、ただ、雨に打たれながら妹の骨を抱きしめたまま呪われた亡者のように歩き続けたこともある。


 ……ここは経験者として、アドバイスしてやらなければな。


『コツは、敵と戦うことを考えることさ』


『そうすれば、元気でいられるのかね?』


『戦うための方法を探しておくといい。アンタは自由なんだ。敵との戦い方には、今までのように縛られる必要もなくなる。経験をフルにつかって、祖国復興のための戦い考えるといい』


『ゲリラ戦術ぐらいしか、一人では出来んな』


『他にも派手な仕事もあるんだぜ』


『ん?派手な、仕事?』


『たとえば、『自由同盟』の将軍の一人になるというのはどうだ?』


『本気で、言っているのか?』


『冗談でそんなことを言えるような身分じゃない。『自由同盟』は、この砂漠を通過することになるだろう……』


 勢力を広げなくてはならないからな。『内海』を経て、帝国と戦い続けている南の勢力とも手を結びたい。


『その際に、『自由同盟』の軍勢が、どう動けば『メイガーロフ人』と対立することを減らせるのか、そういうアドバイザーがいれば、誰もが傷つかないで済むようになるかもしれない』


『……理想論だな』


『理想を棄てるような生き方で、どれだけのものが得られるというんだ?』


『ハハハ!確かに!!』


 大陸最大の国家を倒そうっていうんだ、妥協を好むようなヤツじゃ、この戦いは継続することなんて不可能なんだよ。


『ウフフ。ソルジェさまと、バルガス将軍は、仲良しっすね!』


『そうかもな』


『光栄なことだ。魔王殿とご縁が出来たということはな。しかし……彼女もそうなのかね?』


『彼女?』


『私などを、将として雇うような酔狂な人物なのかね、ルード王国のクラリス女王は?』


『酔狂さなんてことはないさ。クールな女性だよ。そして、躊躇することなく最善を選んでくれるヒトさ』


『最善の道か……私に、この国と『自由同盟』のあいだの軋轢を削ぐための仕事を任せてくださると思うかね?』


『ああ、間違いなく、即答するだろうよ』


『……お目にかかりたくなるな』


『クールな女王陛下だ。アンタも仕えたくなるぐらいの器をお持ちだ』


『……ふむ。たしかに、自由を得た気持ちだ。祖国と同胞のために、今まででは不可能だった仕事が、出来るのだからな』


『死んだ甲斐があったな、バルガス将軍』


『たしかに。死人にしか出来ない戦いも、あるようだ』


 バルガス将軍ほどの実力者が、国家の義務から解き放たれる。そいつは、今までとは比べものにならないほど、帝国人にとっては厄介なことかもしれない。


 束縛から解放された戦士が、どれだけ強いかってのは、オレはよく知っている。自由と経験値を併せ持つ将は、かなり恐ろしい強さを持っているのさ。



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