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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第四話    『ザシュガン砦の攻防』    その十


 傭兵どもの背中に近づきながら、オレは騎士道精神に則ることを選んでいた。


「我が名は、ソルジェ・ストラウスッ!!ガルーナ王国最後の竜騎士だッ!!我が首にかけられた幾千の金貨が欲しければ、勇気を奮い、我に挑むがいいッ!!」


 騎士らしく名乗るんだよ。そのおかげで、傭兵どもがオレの接近に気がついちまっていた。


「ハハハハハハッ!!竜騎士サマが、たった一人でお出でになすったぞッ!!」


「爆笑モンだぜッ!!この数を相手に、無謀が過ぎるってもんだぜッ!!」


「教えてやるよ、戦場の厳しさってヤツをな――――――――」


 踏み込みながら加速して、長剣を振り上げていた傭兵を正面から袈裟斬りに裂いてやるのさ!!……戦場の厳しさ。ああ、教えてもらっている。弱者は、強者の前に、これほどまでに容易く殺されてしまうのさ。


 全ては暴力が決める。


 どんな哲学を背負って生きて来ようが、尊敬を集めていようが、多くの仲間が共にいようが……死を与えられる時は、いつだって孤独なもんだよ。


 命の化身である赤い血を吹き出しながら、竜太刀に壊された体は静かに崩れ堕ちていく。血の雨のなかで、ドワーフの技巧を脚に宿す。ドワーフ・スピン。竜巻のような横回転の動きから放つ、薙ぎ払いの斬撃だ。


 二人目の傭兵の腹を、受け止めようとしていた槍ごと叩き斬る。


「はひゅうう……っ!!?」


 鋼で斬られた時ってのは、大きな喪失感を抱えるもんだ。自分が壊れてしまったことが分かる。後悔を凝縮したような苦悩だよ。今ここにいることを現実ではないと願ったりもするだろう。


 だが、そうではない。


 君に起きた現象と、これから至る死という結末は、まごうことなき真実なのだ。血があふれ、臓腑がこぼれ落ち、即死させてもらえなかったことに涙を流す。業深い傭兵の終わりには、相応しい。


 しかも、ドワーフの技巧で死ぬのだ。貴様らのようにドワーフの集落を焼き落とした悪人どもには、なんとも相応しい末路だろう。苦しみながら、絶望と共に死ぬがいい。オレに女子供の死体を見せたのだ、それぐらいの罰は背負わなければな―――。


 ―――竜太刀の軌跡は、技巧と体力を注ぐことで、どんな形にも変化させることが出来る。横薙ぎ払いの後は、シンプルな突き技だ。素早く踏み込み、腹を突き刺してしまうんだよ。


 狙うのは、腹の奥を縦に走る大動脈だ。そいつを切り裂いてやりつつ、手首を返す。これで傷口はより広がって刺したヤツの死を早める……それと同時に、竜太刀を獲物から抜き取りやすくもなるからな。


 死に行く傭兵を左腕で押しながら竜太刀を抜き取る。そのまま、動きを継続させるのだ。息を多く吸い込んでいたからな。3分ぐらいは無呼吸のまま、攻撃を続けることは出来るのさ。


 竜騎士の呼吸法は、空気の薄い遙かな天空の高みまでも竜に付き合うための奥義だ。戦いにも十分に使えるってことだよ。息継ぎを入れることなく、体は駆動を続ける。


 斬撃で裂き、突きで貫き、竜太刀ごと敵の鋼に受け止められたなら、そのまま押し倒すようにしながら間合いを詰めると、竜爪を使って腹を抉る。


 死を連鎖させていく。


 血生臭い怒号と断末魔の歌に溺れながら、ストラウスの剣鬼ってものが、一体どういう生き物であるべきなのかを教え込んでやるんだよ。


「な、なんだ、こ、コイツッ!?」


「止まらねえぞおッ!!」


「臆病風に吹かれるんじゃねえッ!!どんなに強いヤツだって、疲れて必ず止まるッ!!全員でかかれええええええええええええええええッッッ!!!休ませるんじゃねえぞおおおおおおッッッ!!!」


 さすがは、経験の豊かさを感じる傭兵どもだ。


 戦術を共有するために、いい号令をかけやがる。混沌。そいつを作り出そうとして、大暴れしているオレに対して、自分たちがどう戦うべきなのかを伝えるのだ。


 恐怖を見せつけて、敵の士気を砕きにかかっているオレへの対策としては、満点の対応と言えるな―――傭兵どもが落ち着きを取り戻そうとする。


 そうだ。圧倒的な攻撃力を行使する戦士に対して、戦場ですべきことは二つ。可能であるなら素早く排除するし……それが困難である場合は、猛攻を受け止めて、その蛮勇が疲れ果てるのを待てばいい。


 生き伸びていれば、それだけで集団の防御力ってのは上昇する。こちらが意識しなければならない敵が多くいるほどに、鋼の冴えは鈍るというものだ。


 傭兵どもの動きに、冷静さがもたらされる。相変わらず、オレに斬られまくってはいるものの……仲間が死のうが断末魔を上げようが、冷静に見据えて勝機をうかがいはじめている。熟練した戦士の瞳で、値踏みをするように……。


 オレは追い詰められている?


 そうでもない。


 この状況は、不利な流れになりつつあるが―――良いこともあった。


 傭兵どもの現場指揮官を見つけた。リーダーシップが強く、冷静で、頭の回転がなかなか早い男がいる。さっき、叫んだ男だ。オレは、そいつを『見た』よ。ゆっくりとオレを取り囲みながら、隙をうかがうようにしている傭兵どもを斬り伏せながらな。


 心のなかで、ささやけばいい。


 ……ゼファー。


 ―――うん。わかったー!


『きゅれねい、『かみなり』を、つかって!!』


「イエス。『天空に歌う、金色の獅子よ。その咆吼に仕えし雷鳴どもよ、その威を示せ』……『サンダー・ストーム』、であります」


 ゼファーの背の上で、キュレネイが『サンダー・ストーム』の魔術を放つ。天空から無数の落雷が、爆音を放ちながら大穴集落へと降り注いだ。その『雷』たちの中心にいるのは、『ターゲッティング』の呪いをかけられた哀れな指揮官だ。


 冷静沈着かつ、士気能力のある、その厄介な敵に対して……『雷』の群れが四方八方から降り注ぎ、彼を補佐する仕事についていたであろう傭兵どもごと、強烈な雷電の奔流によって撃滅する。


 10人近くの傭兵どもが、その『雷』の犠牲となる。指揮官を失ったことで、傭兵どもには焦りが生まれていた。戦場に慣れている者たちだからこそ、よく理解していやがるのさ。


 あの指揮官を欠いた時、自分たちという存在が一体どれほどに混乱しやすくなるのかを。戦場にいながら冷静でいられる者は、少ない。軍隊であれば自ら戦うことをしない指揮官という役割を徹底することも可能だが―――傭兵稼業は混沌としていて、人手不足気味だ。


 指揮してくれる者を欠いた群れの脆さを、コイツらは心配し始めている。心配事が募ると、動きってのは悪くなるものだ。オレの突撃に対して、消極的な守りを選んでいた傭兵どもが、さらに後ずさりする……。


 陣形が揺らぐのが見える。


 斬り込むべき場所が、オレにはハッキリと見て取れた。


 動揺した敵の群れが、後退することで作ってしまった『弱点』。隊列のわずかな間隙。そいつに向けて、突撃していく!!獣のような俊敏さで、身を低くしながら、前倒しになりながら、その『弱点』を崩しにかかるのだ!!


 ここを突破出来れば、戦局というものを変えることにもつながるからな―――。


「―――ソルジェ兄さんが、突破を仕掛けます!!」


「イエス。矢を放ち、『彼ら』を呼び込むであります」


 賢いキュレネイとククルも、この行動の意味を即座に理解してくれた。竜の背から戦場を見渡すことが出来ているからな、その意味を把握することは簡単ではあるだろうし……そもそも、オレより賢い彼女たちなら、最初から理解が及んでいたのかもしれん。


 とにかく。


 ここなのだ。


 この場所を突破することが大事になる!!


 竜太刀と共に暴れて、傭兵どもを斬り伏せながら、前に前にと進んでいく!!オレの背後に迫る傭兵をククルの矢が射殺し、オレが進もうとしている道にいる傭兵にキュレネイの矢は放たれる―――。


「―――ま、まずいぞ、こ、これ、マズいぜ!!」


 傭兵どもが気づき始める。そうだ。オレたちの行動を、この大穴集落の住人たちはよく理解しているのだからな。劣勢だったドワーフの戦士たちは反応していた。


「あそこから抜けられるぞ!!突撃して、賊どもの包囲に大穴を開けてやれえいッ!!」




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