第12話 自分の物は自分の物、他人の物は他人の物
ぺちっ、ぺちっ
「起きて浩人!おーきーてー!」
「うっ…ここは」
ぺちっ、べちっ
「おきってってばー!」
「俺、生きてるのか」
べちぃっ!べちっ!ばちーん!
「痛いって!!起きてるのわかるだろ!!」
「わっ、目を覚ました!浩人大丈夫!?」
「おもにフィアのビンタが痛かったわ!」
痛すぎてもう一度三途の川しかけた浩人。
「なんで俺生きてるんだ?あの火力受けたらさすがに燃え尽きるんじゃあ…」
「あれ実は本当の炎じゃないんだ?」
「本当のじゃないってどゆこと?」
理解できない浩人にフィアが説明を足す。
「炎に見せかけて実はただ精神的圧力で気絶させてるだけ!だから外傷はないんだよ!」
いわゆる”幻術”というものらしい。
「そ、そうなのか…よくそんな高等そうな魔法使えるな…今まで大雑把なものしかなかったのに」
そう浩人が言うと、今日の朝と同様フィアがぷくっと頬を膨らます。
「魔法は頑張ったもん!普通の人より使える魔法だって多いんだからぁ!」
「わ、わかった…謝るよ。で、それよりもあの盗賊二人はどうなったんだ」
「それなら…ほら」
フィアが浩人の後ろをを指さす。
「…伸びてるな」
完全に伸びきっていた。
「なんだ。こいつらヨダレが…うっわ」
「さっきまで浩人もこんな感じだったよ?」
「その情報はいらなかったぁぁ!」
頭を抱える浩人。
「この二人どうする?」
「んー起こしたら起こしたで面倒そうだからな…このままでいいんじゃないかな」
さすがに意識を失っている人の持ち物を漁るのはいくら盗賊でも良心に反する。
「よし!じゃあ進もう!」
フィアがそのあたりから拾ってきた木の枝をブンブン振り回しながら街方面へと歩き出す。
「街まであとどのくらいかかるのかな…とりあえず歩けばそのうち着くか」
目が覚めてまだ少ししか経っておらず、しかもフィアに強制的(物理)で起こされたので体調で言えば最悪だが、浩人は自分の体に鞭を打って立ち上がる。
「よいしょ…っと。うおっと」
きちんと立ち上がったつもりだったが、ふらついてしまった。
ぐにっ
「あれ。なんか踏んだような…」
浩人は足元を見た。
盗賊の男の体がそこにあった。しかもはとぽっぽ。
「あ、やべ」
「ヴッ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
起こしてしまった。しかも浩人が体感した痛みよりもはるかに酷いものだった。
痛みに耐えきれず飛び起きる男盗賊。さすがは盗賊というだけあって、何秒かは痛みで唸りを上げたがすぐに状況を判断し、浩人との距離を取る。
「頭はなくても判断力はあるんだな…」
謎の部分に感心する浩人。
「なっ…」
「?」
「何をするだァーーーーーッ!許さん!」
何を言うかと思ったら、第一声がそれだった。
あ! やせいの 男盗賊が とびだしてきた!
「許すも許さないも、襲われたのは俺達だし…」
浩人の正論攻撃!
「うっ…!」
男盗賊にクリティカルヒット!100のダメージ!
相手の 男盗賊は 倒れた!
「やったぜ!貧弱!貧弱ゥ!」
どこかで勝利のファンファーレがなったような気がした。
「まだやられてないよ!?」
まだ倒れてはいなかった。
先に行ったフィアがこちらに気付き、戻ってくる。
「浩人くーん!どうして来ない…あら、目が覚めちゃったのね」
あちゃぁ…という顔をするフィア。
「ごめんよフィア…こいつがどうしても離してくれなくてさ…」
「なんで俺の扱い、ホストに狂ってるセレブみたいなの?別に止めてないんだけど!むしろ鳩尾やられてこっちは相当滅入ってるんですけど!」
「なんで逆切れされてるの?」
「わからん」
おそらくあまりの痛さで壊れてしまったのだろう。
「とりあえず今回はこのあたりで終わりということでいいのかな?」
「いいも悪いも帰らせてもらいます!覚えてろよ!」
男盗賊がおなじみのセリフを言い放つと、女盗賊を抱えてその場から逃げるようにして走り出す。
「あいつらなんだったんだ…」
「さぁ…それよりも早く街にいこ!お腹すいちゃったよ!」
「あ、ああそうだな」
本来の目的は街に行くことだ。それを思い出し、浩人はフィアと共に歩き出す。
「あれ…何か落ちてるよ?」
フィアが何か見つけ、拾うと浩人に見せた。
「袋、か?」
触ってみると、材質は布のようなもので出来ていて、紐でキュッと開いている口を縛ることができる。浩人の世界でいう、巾着袋である。揺らすとチャラチャラ音がした。
「お金かなぁ?誰が落としたんだろ」
フィアがぶんぶん振り回す。
「あーだめだってそんなに雑に扱ったら。壊したりなくしたりしたら持ち主の人悲しむでしょ」
子供を叱るようにフィアを制する。
「見た感じしばらく放置されてた感じはないから…落としたのは最近か。ほんと一体だれが落として…あ」
浩人はふと思い出した。
「そういえば女盗賊がコケてたなぁ…」
男盗賊に遅れてきた女盗賊は、実は途中で転んでいたのだった。
「まじかぁ…よりにもよって面倒なもの拾っちゃったなぁ…」
巾着袋の扱いに悩む。
「開けてみたら?もしかしたら持ち主のこととかわかるかもしれないよ?」
「おそらくあの盗賊の物なんだよなぁ…それ以前に人の落とし物を勝手にあけたら悪い気がするし。開けちゃだめだぞ?」
躊躇なくあけようとしていた矢先、浩人に止められたのでフィアがびくっ!と驚いたような反応をする。
「開けちゃ…だめ?」
「ダメだ」
「うっ…開けるなと言われればッ!…言われればッ!余計に開けたくなる……っ!」
「でもダメだ」
「ううーっ」
さすがに盗賊とはいえ、落とし物の中身を見ることは浩人の正義感に反するらしい。
「そう…だね。もしかしたら盗賊がしかけたワナかもしれないし。そこに気付くフィアちゃんあったまいい!」
「持って即発動だったら終わってたけどね」
「あ」
そこまでは気がまわらなかったようだ。
「もしかしたら持ち主が取りに帰ってくるかもしれないから、置いとくのが一番かな」
「そうなの?じゃあ置いておくね!」
フィアは元あった場所に巾着を置いた。
「それはそうと、フィアって飛べるんだな」
「飛べるよ?木に上がった時も飛んであがったよ?」
「そうなのか…あの時はてっきり木登りでもしたのかと」
「でも結構疲れるから長くは飛べないんだけどね」
「へぇ」
二人は街への道のりを急いだ。




