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第二の人生は異世界にて  作者: りょーが
ぷろろーぐ 人間、死んでからが本番(嘘)
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第1話 現実と非現実の区別がつかない

将来の夢は勇者だった。


幼稚園の頃は気にならなかったが、小学校に上がってからは周りの生徒に笑われ、中学にもなると笑いすら起こらず、白い目で見られた。


高校になるとさすがにその空気に耐えきれず、自分の口からその夢を語ることはなくなっていた。


「本当に勇者になれたらかっこいいのになぁ…」


高校2年生になった櫻田浩人はいまだにその夢を忘れることはなかった。


中世ヨーロッパの英雄がかっこよかった。

戦国時代の武将がかっこよかった。


ヒーローに、なりたかった。


ただそれだけだった。


「夢ってなんなんだろうな」


夢を追いかけるっていう言葉があるけど、やっぱり勇者という夢は追いかけられるものじゃないらしい。


戦国時代や日本が戦争していた時期ならまだしも、だ。


周りはそろそろ就職か進学かを選べなんて言ってくるので、現状維持とはいかないのはさすがに理解している。


特段勉強ができるわけでもないので、大学進学の道はないに等しい。就職でもいいかなと思っていた今日この頃。


「別に戦争が好きってわけじゃないけど、勇者って男の夢だと思うんだよ」


「浩人の勇者好きは今に始まったことじゃないから諦めてるけど、いい加減現実見たら?両親が泣くよ?」


幼馴染の長谷川涼子が諭すように浩人へ言葉の剛速球を投げつける。


「さすがこの前まで現役だっただけある。威力が半端じゃない…」


「正論だからでしょ。ソフトは関係ない」


「うっ」


涼子は中学高校とソフトボール部で活動し、とても活躍していた。3年生になって世代交代を終え、暇を持て余しては浩人の家に遊びにくるのが最近の日常だった。


放課後帰ってきて間もないため、どちらも制服のままくつろいでいた。


「わーってるよ…お前は俺のおかんかよ」


「おかんって…そんなに年寄り発言してる?」


「してるしてる。怒り方が最高ににおかんはつg」


ボコッ!


「ってぇ!」


「いい加減にしないと殴るわよ?」


「もう殴られたんですがこれは…」


「とにかく!早く就職先決めて先生に言いなさいよね?相場先生もそろそろ反応欲しいって言ってたから。…ってなんで私が言わなきゃならないのよ」


「知らないよ…おかんの気持ちなんて」


ボコッ


「いってぇ!」


相場先生とは進路指導兼担任の先生だ。


浩人は相場先生に会う度、早く進路希望紙を提出しなさいと耳にタコができるくらい言われている。それもこれも浩人がいつまでたっても反応を示さないのが原因なのだが。


「へいへいわかりましたよ、っと」


くしゃくしゃになって鞄のそこで押し潰されていた進路希用紙を取り出し、できる限りしわを伸ばして机の上に置く。


「っていってもなぁ…俺は頭がよくないから大手企業なんて望めないし。家から近くて定年まで安定して働ける会社が一番なのかなぁ」


やりたい職業は特にないが体力仕事は自信がないので事務職に就きたいと考えていた。


「とりあえず適当に書いて先生に出したら?そのあと先生と煮詰めて決めればいい話だろうし」


「そんなもんかなぁ…うっし、じゃあここにするわ」


前から気になっていた会社を希望用紙に記入し、用紙鞄に戻す。


「あんたって変なところで行動力あるわよね…」


「よく言われる。でも自分の長所だと思ってるぜ?」


「うわ…自分の長所誇示するとかきもいの最上級、ベストオブキモスだわ」


「最上級とかひどくない!?」


そんなやりとりをした何気ないとある放課後だった。




その日の夜。


「そろそろ風呂に入ろうかな。涼子もやっと帰ったし。」

時計は午後9時を指していた。


涼子はやることがなくても浩人の家に居座り、いつも大体この時間になると帰る。


1人の時間が欲しい浩人にとっては迷惑極まりない行為だった。


「一応女なんだからもう少し早めに帰ったほうがいいと思うんだけどな…」


普通のクライスメイトなら家まで送っていくというイベントが発生するのかもしれないが、気心知れた2人の間にはそのようなホットイベントは存在しなかった。


浩人は着替えを用意し、風呂に入る準備をする。


「今日は涼子からもらった入浴剤を入れてみようかな…有効期限がないにしろ忘れると永遠に使わないだろうかな」


さっき帰る寸前に置いていった入浴剤を手に取る。最近の涼子の趣味は入浴剤集めらしい。


部屋を出るために出口のドアを開けた。


するとほぼ同じタイミングでパソコンの起動音がした。


「うぉっ!…なんだ?パソコン?」


パソコンの本体は机の下に置いてあり、間違って電源のスイッチを押すことはまずない。しかしパソコンは動き出した。


「知らないうちに電源ボタンを押したのかな?もしかしたらスリープのままだったのかも」


パソコンを改めて消すためにモニターの画面をつける。


OSが立ち上がったのを確認すると、浩人はシャットダウンするためにマウスを動かした。


すると


ピコン


「ん?メール?誰からだ?」


普段使わないパソコンのメールソフトが、浩人宛にメールが届いたことを告げる。


「迷惑メールかな…ったく、勤勉なこって」


普段から少量だが迷惑メールは来ているのでいつもなら無視するところなのだが、なぜか気になったので一応誰からのメールか確認する。


すると


「ん?枝元…絹代?女の人か?」


枝元さんという人からメールが来ていた。文面を見る限り迷惑メールではなさそうだ。


「枝元さんって人は知らないなぁ。少なくともメールアドレスを教えていないのは確かなはずだけど」


メールの文面には、こう書かれていた。


「お久しぶりです。枝元です。例の件ですが、解決の方向に無事向かっております。そちらの進捗はいかがでしょうか」


「進捗、ダメです!…言ってみたかっただけだよ!ちくしょう!」


文面を見る限り、思い当たることはない。


「宛先を間違って送ったのかな。返信して教えてあげたほうがいいのか…でもそのうち気付くだろ。」


メールの送信者も、反応がなければさすがにおかしいと思い確認するだろう。


そう考え、浩人は返信せずにそのまま放置することにした。


「さっさと風呂に入って寝よ。進路決めなきゃないとか気が重いけどな」


パソコンをシャットダウンさせ、モニターの電源を切った。


その瞬間、浩人の視界が歪みその場に倒れこむ!


「な!なんだ!地震なのか…!」


次第に視界がノイズに占領される。


ガガガ…ガガガ…パシュン!



そして視界は闇に占領され、浩人の意識は途絶えた。

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