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私がゲームの責任者だから

仲間と組んで作ったゲームだった。

デザインを考えてもらって、音楽を作ってもらって、テストプレイ等からアイデアを模索していって。

私がリーダーとしてプログラムを作り上げた、自信作。

完成してからも、ずっと見守り続けて来た思い出の作品だったんだ。






「犯人は確保できたみたいだな。」


「一時はどうなるかと思いました。」



事件前に多額の課金、そして身支度を綺麗に済ませている人物。

そこから推察して導き出された犯人の特徴から、なんとかそれらしいアカウントのプレイヤーを見つけてもらうことには成功した。

ご丁寧に、やりたいことをやりつくしてから身辺の物を売りさばいてまで課金に力を注いでいたようなのでご苦労なことである。


管理画面から手を加えて、チート気味だった犯人の無力化はできたのだけれど。

捕まる前にHPをわざと減らして復活地点に逃げ込もうとしたのには、ものすごく焦った。

向こうの人たちが復活地点にも仲間を配備していたおかげで、問題なく確保できだからありがたい。

私たちは一部始終を教えてもらうことになった。



「ゲームの世界を作ったのはお前なんだよな?どうやってやったんだ、元の世界に戻れるのか?」


「く、詳しいことはわからない。望んだとおりの世界を生み出せるって聞いたからお願いしただけで。まさか、他のプレイヤーまで来ることになるとは思わなくて。」



話によれば、今回の超常現象を起こさせた別の何者かがいるらしい。

報告されていく内容を見つめながら、画面の前で息をのむ。



「それで、元の世界に帰る方法は何か知らないのか!?」


「転送装置が壊れれば元の世界に戻ることになるとは聞いたけど。」


「その転送装置って?」


「現実世界と繋げるための懸け橋だって言ってたけど、たぶんログインに使ったパソコンのことじゃないかな。」


「パソコンは、こっちの世界に来た瞬間に壊れてるって聞いてる。それはないよ。」



結からこちらの世界の話を聞かされて動揺したらしい。

他に宛もないようで、私も刑事さんもそろって頭を悩ませていた。



「このゲーム自体が転送装置ってことはないのか?」


「ありえますね。でも、本当にそうなんでしょうか。」



もし予想が外れていた場合。

下手をすればゲームを消した途端に全てが消えるか、はたまた世界の繋がりが永遠に途切れるか。



「なるほど。…ゲーム内にそれらしいものはないのか?ログインした時の場所にあるものとか。」


「ログインの場所、ですか。」



特に特徴になるものなんてなかったはずだけれどと、一生懸命に考える。

現実世界と繋げるための懸け橋ってことは、おそらくゲーム世界にあるものだと思う。

ゲーム世界で、現実世界と繫がっているものというと...。



「もしかして、この掲示板?」


「ログイン場所にもあるのか?」


「集合場所として用意した、中央区域の広場に大きいのが一つだけあるんです。」



普段はステータスのように画面の端に表示させていただけだった。

でも本体のような物質は広場に置いてある。



「掲示板はゲーム世界との唯一の連絡手段です。それにログインすれば利用者数としてのカウントもされてるし、メンテナンス後には通知もされてます。」


「なるほど。こっちとゲームの世界に関わることは全てこの掲示板に書き込まれてる訳だ。この掲示板が世界を繋げる懸け橋として機能してるんだとすれば道理が通るな。」


「つまり広場の掲示板さえ壊せば、なんとかなるかもしれません。最悪の場合、連絡手段が途絶えることになりますが。」


「その場合、もう一回作れそうか?」


「...頑張ります。」



こちら側の推論を説明し、向こうにも納得はしてもらえたが少々問題が残されていた。

ゲームの世界に残りたいという人々の意思である。

転送装置を壊して戻るようになっているのであれば、希望者だけが帰還するのはほぼ不可能だ。

意見を無視するというのも有りではあるが、ある程度は尊重したいという人も多かった。

でも、長く滞在するほど依存は強くなるだろう。

現実世界のことも考えて、私は苦渋の決断をした。



「本当に、いいのか?」


「...仲間と作った思い出のゲームですけど、皆は私に託してくれました。このゲームの責任者は、私です。」



全員が戻らないというのであれば、それでも良かったかもしれない。

だけど現実世界で待っている人も多いし、戻りたいと願い続けていた人々の多さも知っている。



「ネットのサービスにも限界があって、ゲームもいつかは終わるものなんですよ。」



手遅れになる前に、手を下さなければ。



「有余はあげます。3日後、このゲーム世界で最後のイベントを行いますよ!」

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