立ち向かうべき現実が2つもあるとか
唯一の連絡網となっている掲示板には、ログイン中のプレイヤー数も小さく表示されている。
それが被害者の数だと思うと気が重くなるけれど、数が増えていないかが気になって毎日かかさず見るようになってしまっていた。
「ゲームの方はどうなってるんだ?」
「改善点はたくさんあるみたいです。でも、どこまで対応できるか....。」
たとえば、モンスターと戦わなければ経験値やアイテムが手に入らない状況なのだけれど。
ゲーム画面と違って、リアルな怖さを感じてしまって戦えなくなったプレイヤーが多い。
HPが尽きた場合、また無事に復活できるとは限らない状況ゆえに仕方のない事だろう。
体は頑丈だし動きやすくて疲れにくくはあっても、切ったり切られたりする感覚がどうしても慣れなかったり耐えきれないというのも理由の一つらしい。
そこで直接攻撃をしないで済む魔法職などへの転職をやりやすくしたり、戦うこと以外でも経験値やアイテムを手に入れられるイベントを作らなければならなくなった。
これがすごく大変なのだけれど、やらない訳にはいかない。
「ふぅん。更新されるたびに、毎回掲示板に通知が入るようになってるんだな。」
「更新内容はこっちで書かないとわからないんですけどね。それにしても、メンテナンス中でもゲーム世界には問題がないみたいで助かりました。」
休止にした際に一度メンテナンスをしていたことはあったので、多少の心配はあるもののゲーム内のシステムの変更を行える現状は救いでもあり苦痛でもあった。
ゲーム世界に巻き込んでしまった人々への詫びというか、罪の意識から何かしら手が打てるというのはありがたく思える。
だけど逆にいえば手を出せてしまう立場である訳で、頼まれ事は多いし作業は大変だしで心労がすごい。
メンテナンスで本当に何の問題もないという保証もないのだから、毎回緊張している。
いっそ手を出せない状況の方がやることが少なくて済んだのだけれど、そうも言っていられない。
何もできないよりはマシと言い聞かせて、私にできるかぎりのことを頑張るだけだ。
「今回も大変でしたよ。カレンダー機能って、思ってたより面倒ですね。」
「お前が表示方法に拘るからだろ。」
「だって、使いにくいのは嫌じゃないですか。...それより、捜査の方は進んでるんですか?」
「半々ってところかな。」
テレビによると警察の方ではまだ、行方不明者の使用していたパソコンが壊れていたという共通点しか見つけられていないようだった。
しかしながらネット上では関係者同士が情報提供をしていくうちに、壊れたパソコンでこのゲームをプレイしていたという話題も出たらしい。
それなりに人気のあったゲームが休止した理由に、行方不明事件と関わりがあるのではないかという意見にはビビった。
担当者が行方不明になったのではないかという推察で終わったが、事件の重要参考人として注目されるのも時間の問題かもしれない。
「犯人、見つかるんでしょうか。」
「絶対に見つけてやるさ。そして、全員を元の世界に戻す方法をなんとしてでも聞きだしてやらないと。」
...この人、元の世界に戻せるって信じて動いてるんだ。
「じゃあ、向こうの人たちにも頑張ってもらわないとですね。」
「ああ。」
こちらで捜査が進んだとしても、犯人を捕まえられなければ意味がない。
開発者である私が犯人でないのだから、おそらく犯人はゲーム内で世界を見ているはずだ。
私たちの方で犯人像を絞り出し、ゲーム世界では犯人らしき人物を探してもらう必要性がある。
「私も私で頑張ってみる、だから。」
信じて待ってるよ、結。