管理者の知らない所で始まるなんて
自作ゲームを作って、公開してから何年経った頃だろうか。
よくは覚えていないけれど意外と人気が出てしまったようで、今となってはプレイヤー数がとんでもないことになっていた。
「大変なことになったよね...。」
現在、私は一人でそのゲームのやりくりをしていた。
といっても、プレイヤーからのメールをチェックしたり、見つかった不具合を修正したり。
そんなことを適当にやっているにすぎなかったのに。
まさか、多くの人を巻き込んだとんでもない事態に巻き込まれることになってしまうとは。
...いや、それとも。
その現況を生み出したのは、他でもない私自身だったのだろうか?
ことの始まりを知ったのは、家族旅行から帰宅してから見たニュース番組からだった。
「行方不明者が多数?」
どうやら行方不明者は少なくはないらしく、かなり大事になっているようだった。
私が旅行に行っていた間に起きた事件なんだとかで、まだ詳しいことは調査中だと語られる。
ニュースを眺めながら家に置いてきてしまっていた携帯の電源を入れてみると、知人からの安否確認メールが複数送られていたことから、事態の大きさを再認識させられた。
「あっちゃぁ。心配させちゃってるな。」
行方不明者が出ている中で連絡が取れずにいたのだから当然だ。
各人に、無事であることを伝える文面を急いで返信していく。
全員分終わったところでパソコンの方のメールもついでに確認してみると、そちらには異常な数のメールが送りつけられていて驚愕した。
「え!?これ、全部自作ゲームからのメールじゃん。」
昨今では誰でも本格的なゲームを作れるようになっていて、私が製作にかかわったゲームなんかでも課金可能だったりするプロ並みの仕組みを取り入れることに成功していた。
数あるゲームの中でも人気になったのは、デザインやらに拘った点が大きいんじゃないかと個人的に思っている。
そのシステムの一つとして、掲示板に書き込めばゲーム内から管理人にその内容がメールで届くようにはなっていたのだけれど。
本人確認やらいろいろあって面倒だからなのか、書き込まれるのは年に数回程度だったのに。
「ゲームに何か問題でも起きたのかなぁ。」
その送信者の中には、友人の結のアカウントからのもあったことに驚いた。
何の連絡もなかったから私も心配していたのだけれど、ゲームをする余裕があったとは。
皆にも「大丈夫だよ」の一言ぐらい送ってくれればよかったのに。
気を取り直して数あるメールの内容を見たところ、どれも「ゲームから出られないんですけど、どうしたらいいですか?といった感じの文面が綴られていた。
ログアウトができなくなったのだろうかと疑問に思いながら、とりあえずゲームの配信を停止させる。
「まずはこれで大丈夫かな。」
ゲームの掲示板に「ゲームから出られないとのことで一時的に休止しました」との事情を書いたところで強烈な眠気に襲われる。
もともと旅行で突かれていた私は、そこでグッスリ眠ってしまった。
まさかそれが、新たな火種になろうとは。
...次の日、目を覚ました私はパソコン画面を見て目を見開いた。
ゲームからのメールが、また何件も届いていたのである。もう数えきれないぐらい。
「ゲームは休止してるのに、どうやってメールなんか。」
結のアカウントからも、新しい書き込みがあるようだった。
訳の分からぬまま、ひとまず学校へ向かった私は欠席している結の席を見ながら話しかけてきた友人の言葉に耳を疑うことになる。
「聞いた?結ちゃんも今、行方不明なんだって。」