世界は静かに終わりゆく
明日は、何処かへ行こう――。
そう考えていた。
なのに、今日は終わらない。
終わらない今日ばかりが、ずっとずっと、続いている――。
「もう、ずっと太陽を見ていないなぁ」
ある日突然、太陽が顔を出さなくなってから、もう随分と経ったような気がする。
実際は、とてもとても長い間、時間を夜が支配しているのかもしれない。
もしかしたら、本当に少しの時間しか経っていないのかもしれない。それこそ、あたりまえに一日の中に含まれる太陽のない月の時間。
私は、そんな時間を過ごしている。
たった、独りで。
誰も居ない。誰も来ない。外は真っ暗で、星と月の明かりが淡く照らしている。
こんな、不気味で寂しい時間にも、もうすっかり慣れてしまった。
気づけば一人になっていて、探しても、探しても、何もない。誰もいない。
最初は怖くて、怖くて仕方がなかった。
けれど、時間が経てば経つほどに私は、独りなのだと。そう思い知らされた。
何もなくて、誰もいないこの時間を、この世界の中で、私はただ無意味に、何の価値もないまま生きていく。
ずっと、食べ物だって食べていない。けれど、お腹が空くこともない。
まるで夢の中にいるよう。本当に、ただつまらない世界。
月を、眺めて。星を、眺めて。
遠くに木々が揺れる音を聞いて。
悲しいくらいに、綺麗な空。
私は、この空を眺めて、そして、朽ちていく。
誰も居ないから自由に、世界を飛び回るなんて出来ない。しようとも思えない。
終わりを迎えたこの世界で、私は、ただ、進むべき道もないまま。立ち止まったまま。
「あぁ、本当に――綺麗」
キラキラ。キラキラ。輝いて。
ざわざわ、ざわざわ、木々が揺れる。
目を閉じても、いつだって、浮かんでくる。
さよなら、誰もいない退屈な世界。静かで、綺麗な世界。
もしも私が最後なら、きっととても残念なこと。
もしも私が最後ではないのなら、この綺麗な世界を、何処かの誰かに。
「――どうか、この世界が、静かなまま、終わりを迎えられますように」
そう言って、私はこの綺麗で静かで、悲しいくらいに残酷な世界に別れを告げた。