ハイジャック
拳銃をフライトアテンダントに見せるように掲げ言う。
「動くな!コックピットに連絡を入れろ、行き先を変更だ!もし変更しない場合は乗客を一人ずつ殺していく!」
近くにいる乗客たちは軽いパニック状態になる。
フライトアテンダントは拳銃を持つ私を刺激するのは危険だと判断したのだろう、コックピットへ内線を入れる。
「機長、ハイジャックです……えっ?知ってる?ファーストクラス?いえ……えっ!?」
内線をかけたフライトアテンダントは何かに驚いたような反応を示し、そして俺にこう告げた。
「すみません、ファーストクラスでもハイジャックが行われているそうなんですが……」
「は?」
つまり、運悪く私と同じタイミングでハイジャックを行った奴がファーストクラスにいたということか?
「犯人はなんて?」
私自身も犯人だが……
「A空港へ行けと指示を出しているそうで……今そちらへ向かってるとのことです」
私が行きたい方角とは真逆である。本当に厄介な状況だ……
「仕方ない……それじゃあ……」
十数分後、ファーストクラスのハイジャック犯たちがやってくる。
犯人は3人組で拳銃を向けながら言い放った。
「この飛行機は俺たちがジャックした!この飛行機はA空港へ向かっている!おとなしくしていればお前らには危害は加えない静かにしていろ!」
「かかれ!」
それを聞いた乗客達は一斉にハイジャック犯たちに飛びかかる。
予想外の対応だったのかハイジャック犯たちは拳銃を数発撃ったもののすぐに取り押さえられた。
「なんで、いきなりこんなに飛びかかってくるんだ……」
犯人のリーダーらしき男は拘束されながらつぶやく。
「命が惜しいからさ」
事の成り行きを後ろの安全地帯から見守っていた私はそういいながら前に出る。
「残念だったなハイジャック犯さん、お前らは運が悪かった」
別のハイジャック犯がいることを知った私はこの辺りの客たちに言っておいたのだった。
「いいかお前ら、あっちのハイジャック犯が来たら一斉に襲い掛かれ!もしそうしなければこの爆弾を爆発させる!動かなかった奴は射殺する。死にたくなかったら死にもの狂いで止めろ」
そして体格のいい男たちを前列の方に集め、自分は万が一に流れ弾を受けないように後ろにさがって、奴らが来るのを待ち伏せていたというわけだ。
見事に策がはまりハイジャック犯たちを捕まえることに成功した俺はコックピットへ連絡を入れる。
「たった今ハイジャックグループを確保したよ」
「おお!ありがとう」
「いや、礼には及ばない何せこれからが本番だからな……行き先をB空港へ変更しろ」
私は障害のなくなった機内で今度こそハイジャックを完遂した。