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04 普通の夫婦って新婚旅行で何しているのかしらね

 馬車に揺られて3日。



(私って、3に縁があるのね。残り時間は3年、約束したのは3つ、旅に要する時間は3時間)



 目の前で、馬車に揺られて眠りについてしまったジェストを見ながらディスカはため息を吐いた。

 ぼんやりすると残り3年のことを考えてしまう。こんなことじゃいけないのに。



「ジェスト様、着きましたわ」



 馬車の壁に肘をつき、手で頭を支えている。揺れている最中、何度か倒れそうになっていた。

 軽く揺すってやると、肘の部分が滑ってジェストは前のめりに転けた。



「おっと……!ん……?あぁ、ディスカか」


「残念そうにしないでいただけます?」


「すまんな。レイラとそっくりだったものだから」



 あぁこれね、と自分の髪を一房握る。馬車での移動だったため、結うことはせずに垂らしていた。



「君の髪の方が、きちんと手入れされていて綺麗なんだけどね」



 寝起きだからか、笑顔に締まりがない。ふにゃりと笑う様はまるで、宝物を紹介する少年のようだった。



「朝からのろけをありがとうございます」



 にっこり笑って言うと、ジェストは面食らったように驚いていた。



「のろけのつもりは……」


「本人自覚なし、ですのね。まぁいいですわそれより、降りましょう。目的地に着いているのに馬車に乗ったままでは、何が楽しいのかわかりませんわ」



 ジェストは曖昧に頷いて、馬車から降りた。自然な動作でディスカに手を伸ばす。

 一瞬ためらったのちにその手を取り、馬車を降りた。



「そうだわ、ジェスト様。ここの近くにはドーバン領がございましてよ」



 思い出したことをさらりと言う。こうやって言わないと、意地悪な言い方になりそうだ。



「あなたを追って、かは存じあげませんがご令嬢も一度領に帰ってきているようですわ。私達が王都へ帰る頃にはあちらの令嬢も王都へ帰るようです」



 本当は、彼女がドーバン領に帰ってきている理由も知っているが、言う必要はないだろうとディスカは判断する。



「そ、そうか……ありがとう」



 そこで頬を染めて礼を言うなど、ディスカの心にとどめを刺している気がしてならない。振り払うようにジェストの手を離して、別荘へと向かった。



「どうぞこちらへ奥様、旦那様」



 別荘の管理をしている夫妻が、2人を出迎えてくれる。




「今日から1週間ほどだけれど、よろしくね」


「はい、奥様。お部屋は整えてあります」



 夫妻の案内で別荘を見て回り、一通り回ったところで座った。



「ディスカ、君の家は別荘を沢山持っているのかい?」


「えぇ。親しい貴族同士で領地の一部を提供しあうのよ。丁度、屋敷1個ほどの敷地をね。そこに別荘を建てさせてもらうの。

 お父様は割と他方の貴族から恨まれているけれど、あの金銭力は魅力だわ。だから、領地を貸してもらえるのよ」



 提供しあう(・・・・・)ではなくなっている。ゆえに、シェゼンスタ領には他貴族の別荘はない。



「そうなのか」



 ジェストの顔が苦笑いになっている。



「そうなのよ」


「奥様、お茶のご用意でもいたしましょうか?」



 ソファに座ってくつろぐディスカに、扉を開けて入ってきた使用人が聞く。



「そうね。お願い」



 ここに到着した時間は微妙で、今から何処かへ出掛ける気にはならない。

 使用人が菓子と紅茶を持って来て準備を開始し、ディスカはそれを摘みながらジェストの質問に答えていく。ジェストの質問は主にシェゼンスタ家のことで、つまらない。



「ジェスト様、退屈ではないですか」


「え?……いや、そんなことはないよ」


「まぁ、いいのですけど。レイラさんの元へでも行ってきて良いですわよ」


「初日からはさすがに、ね……」



(そうね。貴方って人は、一応気にするものね)



 頷いて、紅茶を飲んだ。




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