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退屈な僕と面倒な国家-2章-

退屈シリーズ一話です。

推敲うまくいってないかも…

◆準備は覆面によって早くなる


   未来が解るらしいね。

   僕の過去には、何もない。

   君の今には、何もない。

   未来には・・・・・・何があるのか誰にも解らない。

   未来が解るのに君は何で生きているの?


 夜―――僕はまた夢を見た。

 今度の登場人物は僕とあの子だけのようだ。

 二人で話している。なんかよく覚えてないな。此処はどこなのだろう。あの子がなんか下を向いてもじもじしている。かわいいな。恥ずかしがりだったのだろう。そして小指をだしている。約束、かな?僕はなんか頭を掻いてあくびをしている。指はその子と繋がっていた。目はとろ~んとしてとても眠そうだ。面倒くさいからって寝るなよ、昔の僕。

 その子は嬉しがっている。何があったのだろう。う~ん、何か大事な事だったような・・・・・・何も思い出せない。

 バイバーイ。でといいながら嬉しそうに元気よくその子が帰っていく。

 その子が見えなくなったところで僕の意識は覚醒していく。それにしても何を約束したんだろう・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・今日はレクリエーションの日程が決まった次の日なのだが・・・・・・いやはや、何とも憂鬱な気分だ。

 面倒くさいことの日程が解ってしまうと、僕はその当日までこうやって無気力な朝を迎えてしまう。特に偉繰のレクリエーションだと、通常状態の五倍ぐらいの鬱状態になる。はぁ~。

 そんな僕の気持ちとは裏腹に、今日はものすごい快晴だ。僕は寝起きに太陽を浴びたくないのだが、そんな事はお構いなしにその光をガンガン僕の目に入れてくる。

 こんな日は朝飯も喰うのが面倒くさい。

 しょうがない。レトルトの味噌汁とサラダとご飯で良いか・・・・・・

 ご飯を味噌汁で流し込み、赤以外の色がみえなくなるまでサラダにケチャップをかけ、胃の中に入れていく。ちなみに僕はマヨラーならぬケチャラーなので、サラダや揚げ物には必ず表面が赤くなるまでケチャップをかける。だけど間違って欲しくないのだが、僕はマヨラー共のように、ご飯やラーメンにまでケチャップをかけない。ちゃんとソースやレモン、ドレッシングなどをかける料理にだけ、それらの代わりとしてケチャップをかけるのだ。マヨラー共の様に、見ていて気持ち悪いかけ方はしないのだ。

 この辺で閑話休題(ムダばなしをやめて)

 朝御飯を胃の中に入れ込んだ僕は、これから一応学生なので学校に行かなくてはならない。まぁ行かなくても罰則は何も無いのだけれど・・・・・・・・・そろそろいつも一緒に行く女神たちの迎えが来る――

「いっっっく~~~~~~んっっ!」

 おぉ、今日も元気だな。少しわけて欲しいぐらいだ。

「あれ?返事が無いな・・・・・・おーい、いっく~ん!」

 はいはい、今行くよっ、と。

 玄関のドアを開けると美少女と美女が朝日を受けて輝いていた。目映(まばゆ)いほどの元気いっぱいの笑顔と、長髪の隙間から差し込む朝日の光、いろいろな意味で、(まぶ)しすぎる・・・・・・

「いっくんおっはよう!」

「クーおせぇぞ」

「おはよう妹六、雷三」

 僕は二人と一緒に学校に行く。偉繰は朝が弱いから二時間目からの登校だ。まったく、横綱出勤ならぬ王様出勤だな。

「今日は集まるのか?」

「集まるらしいぜ。放課後すぐとか言ってたな」

「早く六月八日にならないかな~!」

 なぜ妹六はこんなにやる気なのだろう。

 そうして僕たちは学校に着くわけだがたった五分しかかからない。なぜなら僕の使っているA棟と学校棟(がっこうとう)は隣通しだからだ。僕だけだったら三分ぐらいで着くけどね。

 ちなみに雷三も妹六も違うクラスだ。悲しい・・・

「じゃイッコー放課後にね!」

「クーじゃあな。放課後逃げるなよ。逃げたら殺す」

「へ~い、じゃまた後で」

 どうせ後八時間後ぐらいにまた会うから、簡単な挨拶を済ませた僕は教室に入ることになった。

「おう、イッコク。また王に振り回されてるみたいだな」

「お気の毒様」

 気安く僕に声をかけてきた二人、右のちょっと喧嘩が強そうなのが「開する番人」(オープンオープン)富幽水戸(とみかすかみと)〈十七歳〉と言う、どこで名前を区切れば良いか判らない奴だ。ちなみにちゃんと説明すると、富幽(とみかすか)が苗字で水戸(みと)が名前だ。そしてその隣に居る、ひ弱そうなのが「閉する番人」(ロックザロック)富幽厳重郎(とみかすかげんじゅうろう)〈十七歳〉。見た目はめちゃくちゃ名前負けをしている。解るとは思うが水戸とは双子だ。ちなみに水戸が兄である。

 厳重郎は名前のせいで今まで散々苛められてきたらしいが、今はそんな感じではない。見た目ひ弱そうなのは変わってないみたいだが・・・一応二人とも、クラスメートでは仲が良い方である。

 二人の異常は双子だけあって似て非となるものだ。水戸のほうが「開放(オープン)」、厳重郎は「閉鎖(クローズ)」。その名の通りこいつらに開閉できないものはない。

「お前等も準備をするし、参加もするんだぞ」

「まぁ確かに今回は俺たちも忙しいけど、面白いから別に良いさ。それにお前たちみたいに王のお守りもないしな」

「ついでに後始末もな」

「だからお気の毒様」

「だからお気の毒様」

 声を合わせて言いやがった。さすが双子。そんなに人の不幸が面白いか?

「人の不幸は蜜の味だからね」

 厳十郎・・・・・・お前は本当に苛められてたのか?

「異常が無かった頃にね」

 そうだったな・・・お前は異常によって救われた方だったな。

 大体の人間は異常によって人生を壊された人間が多いが、厳十郎のように救われたという奴もいる。苛められていた奴、社会に適応できなかった奴、人生に絶望していた奴。ちなみに僕は救われたほうだけどね。

「それにしても、今回はイッコクも大変だな」

 なんでだ?今回はって、別にいつもと変わらないぞ。

「兄さん!」

「あぁ、そうか。いやなんでもない。ただイッコクは今回もいつも通り大変だな、って言いたかっただけだ」

 何でも無い事はなさそうな言い方だが・・・・・・・・・まぁどうでもいいか。

「お前等。席に着け」

 どことなく厳しそうな声で入ってきた人物は、このクラスの担任「声する機工(マシーンマシーン)土塚遷都(とつかせんと)だ。クラスの皆にはフレンドリーに、センちゃんと呼ばれている。なぜかいつも暗く、声も小さいのだが、その(いか)つい声でどんなに教室が五月蝿(うるさ)くても全体に届く。噂によると、センちゃんの異常「自然音(バッドノイズ)」で周波数を変えているのだとか。

 センちゃんの鶴の一声によって席に着いた僕たちは、教科書を開き授業の始まりを待ち構えた・・・・・・のだが、

「知らせだ。今日は午後が無い」

「センちゃん、何で?」

 そう、それが聞きたかった。ナイス水戸。

「王が決めた。準備をするそうだ」

 なんと、僕たちはレクリエーションが本業ではないのだが。

「知らせは以上だ。質問は受け付けん」

 センちゃんの喋り方はいつも通りだがとにかく、今日は月曜日のため学校だったはずが、昨日偉繰がレクリエーションの日にちを早めてしまったために、学校は昼間までの午前授業になってしまったそうだ。

 学生の本業は勉強のはずなのだが。しかも多分これは党夜が決めたな。偉繰がこんな計画的な事を言うわけが無い。あいつは何でも根性でどうにかなると思っているからな・・・・・・あれでテストの成績がトップと言うのは、何か大きなものが裏で動いてる気がする。まぁ、あいつは英才教育を受けていたから昔から頭は良かったのだが・・・・・・日ごろからはその片鱗(へんりん)を感じることは一切無い。

 そんな訳で、あっという間に放課後。僕にとって授業は睡眠(すいみん)時間(じかん)と同意なのだ。

 政経部には面倒くさいから行きたくないのだが、やはり行かなくてはなるまい。だって僕はまだ死にたくないからな。

 政経部に行った僕を待っていたのは党夜だった。しかも片手で読書。あの読み方は本が開くから僕は嫌いだ。しかしきまっている。女性にもてるのも解る気がする。

 それにしても、なんで党夜しか居ないんだ?

「あら、こんにちは。今日は早かったわね。って来るのは解っていたけど一応言っておくわ。ちなみに私しか居ない理由は偉繰君がダックス君と準備に行っているからよ」

 偉繰とダックスは解ったが、雷三と妹六はどうしたんだ?

「あの二人はあと五秒後に来るわ」

 珍しいな。僕よりあの二人が遅いとは・・・・・・・・・そしてきっかり五秒後。

「おっはよー!」

 お、さすが党夜だ。妹六が雷三と一緒に入ってきた。

「来るときに準備をしているリーにあったぜ。なんかクーたちの仕事が書いてあるんだって。ヤーには無いけど」

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。それを作ったのは私だから。ちなみに偉繰君の口述(こうじゅつ)手記(しゅき)でね」

「やっぱりな。リーがこんな物作る訳がねー」

 すごく納得のいく言葉を口にしながら、仕事が書いてある紙を手渡してきた。

 んー、なになに、

 イッコク、お前はルールブック作成だ。当日までには作れ。

 ちょっと待て、僕は何をするか知らないんだが。どうしろと?

 ん?まだ続きがある。

 と言いたかったんだが、イッコクじゃ時間が足りないだろうからやらなくて良い。その代わり本番には頑張ってもらうからな。期待しとくぜ。お前の尊敬する王より

 別に尊敬はしてない。むしろ呆れている。

 しかし、準備をしなくても良いというのラッキーだ。僕は準備と帰宅が、面倒くさいしつまらないという理由で、大嫌いなんだ。

「じゃあオレは準備しに行ってくるわ」

「妹六も!」

 そう言って二人は出て行った。頑張れよ~。

 あれ?この部室には四人居たよな・・・・・・

「二人とも行っちゃったわね」

 党夜はなんでまだここに居るんだ。さっさと準備に行かないと終わらないぞ。

「あら、私と一緒は嫌なの?私嫌われてるのね・・・・・・」

 い、いや、そ、そ、そんなことは無いよ。だから落ち込むな。

「フフフ・・・嘘よ、う・そ」

 やめてくれ。僕は人間全般と接するのは苦手なんだ。冗談が解らない。

「そう、でもそういう反応は解ってても面白いわ。後、仕事のことだけど私はここで待機が仕事なのよ」

 そうなのか。なら四日間の準備期間中、ずっと党夜と一緒にここに居る、ということになるのか。

「そういうことになるわね」

 まぁ話す相手が出来てよかった。けど、妹六か雷三が良かった。なんで一番苦手な党夜が残るかね。

「まぁ二人になる機会もそうそうないから、仲良くしましょう」

 そうだな。党夜と二人っきりなんて初めてかもしれない。

「なんならキスまでは良いわよ」

 きっ、キス!何言ってんだ!

「フフフ、冗談よ。あなたは未来が見えていても本当に面白いわね」

 そんなたちの悪い冗談はやめてくれ。

「あら、私じゃ嫌?」

 いや、そんなこと・・・・・・無い・・・・・・けど。

「まぁいいわ。どうせあなたと喋る時間は、この四日間ほとんど無いから・・・・・・」

 喋る時間が無い?党夜、どういう意味だ?

「いや、なんでもないわ。ただあなたはちょっとこの四日間、疲れるかもね」

 まぁ確かにそうだな。党夜と喋ると気疲(きづか)れするし。しかし、党夜に心は読めないから、そんなことは知らないはずだが・・・・・・他には何があるのだろう。

「あら、私言ってなかったけど色んなことが解るのよ。心の中もね」

 なにっ!嘘だろ?

「本当よ。(げん)に今あなたの心の中が解ったじゃない。まぁ雷三ちゃんみたいに高性能じゃないし、私のは読唇術みたいなものだけど」

 ・・・・・・マジか・・・・・・・・・・・・雷三だけではなく党夜の前でも、変なことを考えてはいけないのか。

 僕はビクビクしながら党夜の横顔を五秒ほど見ていたら、突然ドアが開いた・・・・・・いや、表現が正しくなかった。訂正(ていせい)。突然ドアが党夜めがけて吹き飛んできた。

「危ないっ!」

 ・・・・・・人がせっかく注意を(うなが)したのに、党夜はドアが飛んでくると解っていたかのように、というか解っていたので、本を読みながら避けていた。

「危ないわね。私じゃなかったら潰れていたわよ」

 ちなみに今党夜は、僕のそばに居る。二人して仲良く、覆面つけた侵入者に囲まれている状況だ。関係ないが、覆面は今時(いまどき)ダサいと思う。

 さて、感想と描写(びょうしゃ)は終わったが、なぜ僕たちは今、覆面野郎(ふくめんやろう)共に囲まれているのかな?誰か知っている人挙手して・・・・・・僕の頭の中は誰も解らないらしい。しかしこいつらはちょっと雰囲気がシリアス過ぎないか?少し軽くするか。

「おい、お前等なんでドアを壊した?ちゃんとノックしてもうちょっと静かに入って来い」

「・・・・・・・・・・・・」

 あら、冗談が通じなかったみたい。

「相手を挑発するような事を言わないで欲しいわね」

 別に僕は緊張感のある空気が嫌いだから、場を和ませようとしただけだ。それに、党夜が言う前に止めとけばよかっただろ。

「相手を見て言って欲しいわ。それに、空気が寒くなるから、私にとっては逆に面白いと思ったのよ・・・・・・さて、貴方たち、此処がどこだか理解しているの?もし理解しているなら、これは偉繰君への反逆になるわよ?」

 党夜はその軽くつり上がった目で、覆面たちを睨んだ。

「・・・・・・・・・・・・」

 どうやら喋れないらしい。

 あ、それぞれナイフを取り出した。これは結構やばいかもしれない。さすがに僕も党夜もナイフは無理かな~。

「物騒ね。でも別にナイフなんてここでは意味ないわよ」

 おぉ、なんか頼もしい。しかもいつもの事ながら余裕っぽい。ん?今党夜ここって言わなかったか?私じゃないのか?

 覆面たちは僕と党夜に五人ずつ、計十人が襲い掛かってきた・・・・・・

 いや、正確には襲い掛かろうとしてきただな。

 覆面野郎たちが僕たちのほうに一歩踏み出した時、党夜は何かのボタンを押した。そして哀れ、覆面野郎たちはハンマーに吹き飛ばされてしまった。いつのまにこの部屋はカラクリ部屋になったのだろう。大方予想はつくが多分、立案者は偉繰で製作者はダックスだろう。かわいそうに。覆面たちは登場わずか一分で残り二人になってしまった。

「さて、あなたは飛ばされた人たちのケガを治して。私はこの人たちの相手をしとくから」

 そう言って党夜は僕に手を振った。さて、さすがに敵でも、死なれたら困るので治さなくてはなるまい。あぁ~、面倒くさいな~・・・・・・これが妹六並みの美少女か、雷三並みの美女だったら少しはヤル気も出るのに。いや、でも僕の場合敵意を向けられたらやっぱヤル気をなくすな・・・・・・僕はルパン三世ほど女好きじゃないからな。というか余り人が好きじゃない。僕が女性で好きなのは、妹六と雷三と党夜だけだ。ちなみに今の発言は色んな意味で内緒にしといてね。

 そうこうしている内にすごい音が鳴った・・・・・・どうやら最後の一人を党夜が片付けたらしい。

「意識のほうは大丈夫?」

 後ろに来た党夜が話かけてきた。

 そんなの聞かなくても、党夜はいつか解っているのだろう。

「まぁね・・・・・・でも一応ね」

 心配してくれてありがとう。後二人か・・・・・・党夜ちょっと派手に折りすぎだ。そろそろきつくなって来たぞ・・・・・・・・・あぁ、やばい。

「党夜悪い・・・・・・少し・・・・・・・・・寝・・・・・・る・・・・・・・・・」

「解ったわ。おやすみ・・・・・・」

 最後まで聞かず僕の意識は闇へと船出した。

 ―――三回も連続で夢を見るのは珍しい。というか見るじゃなくて、正確には覚えているのはだけど・・・・・・

 あの子がなんか三人の男に絡まれているようだ。相手は中学生のようだ。

 周りに偉繰は居ないらしい。

 あ、胸倉を掴まれた。苦しそうだ。

 胸倉を掴んでいた一人が突然吹っ飛んだ。偉繰がやっと来たか、と、思ったら違った。あれは僕だ。

 瞬く間に中学生を小学生の僕が倒していく。まぁあれぐらい当然か。僕は一応幼稚園の頃から、親に格闘術を叩き込まれていたからな。まぁ、中学から後々面倒という事が分かったため使ってないが・・・・・・

 あの子が僕に駆け寄ってきた。どうやら攻撃をかわしきれなかったらしい。口元から血が出ていた。あの子はためらい無く血を口で吸い出した。

 え?あれ?おいおい。僕のファーストキスってあれだったの?というか毒じゃないんだから吸い出さなくてもいいだろう。僕は呆然としている。

 あの子は満面の笑みで昔の僕を見てる。

 僕はあんな仲が良かった子の名前を忘れているのか。さすがにやばいかもしれん。

 僕の口元にあの子が絆創膏を貼っている。

 だけど、平静に、退屈そうに昔の僕が話し始めようとしたと時、僕の意識は、急速に現実へと引き戻されてく。あの子はどんな名前だっただろう、・・・・・・考えているうちに僕の意識は日常へと帰航した。

 ん、なんか頭の下がピチピチしている。それに少し暖かい。

 あぁそれになんか良い匂い・・・・・・最高の気分になってくる。もう一回寝むたくなって来た・・・・・・寝ちゃおうかな~・・・・・・・・・あれ?誰かが僕の頭を撫でている。やわらかい手だ。誰だろう。チラ見しようかな・・・・・・

「おい、起きたならさっさと頭をどかせ」

 僕は首根っこを掴まれて起こされた。

 あれ?雷三?じゃあ今まで僕の頭の下にあったのは雷三の膝?

「あぁそうだよ」

 まだ喋ってない~!というかマジか!

「え、気持ちよくなかったか?」

 気持ちよかったですけど!妹六に続いてもったいないことをしてしまった。

「そ、そうか。気持ちよかったなら別にいいけどよ」

 雷三は恥ずかしかったのだろう。今耳が茹でたタコのようだ。それにしても惜しいな。雷三もう一度膝枕してくれないか。

「ば、馬鹿やろう!な、なんでオレが、く、クーな、なんかのためにも、もう一回膝枕をしなくちゃな、なんねーんだよ!」

 そうか。やっぱそうだよな・・・・・・もう一度深く味わいたかったぜ。

「一回断ったぐらいで諦めなくても良いのに・・・・・・」

 どうした?もう変なこと言わないって。

「なんでも無い!」

 ん~、雷三は本当にツンデレだな。まぁあんまりどころかほとんどデレてくれないが。しかしそんなに怒んなくても良いだろ。

「怒ってねぇよ!・・・・・・ところでよ、そ、そのさ、ムーとお、オレとど、どっちが気持ちよかったんだよ?」

 うん?ん~どっちも僕としては捨て難いなぁ。というか、別に膝フェチじゃないからどっちが良いかというより、僕的には、美少女や美女にそういう事されることに意義がある。よって、甲乙付けがたし。ドローだな。膝枕は誰がやるかと言うより、女性の優しさがあればグッドなのだ。

「じゃあクーみたいな頬フェチは何が好きなんだよ?」

 ふふふ・・・・・・良くぞ訊いてくれた。ずばり、ほっぺむぎゅーだ!ここはひらがなで書くのが柔らかく表現できるコツ、というか正しい書き方でる。僕の理想はニケが光魔法結社に居る時、ククリにしたあのさり気ない、しかも相手に痛さを感じさせない摘まみ方!ニケは僕の心の師匠でもある。

「・・・・・・変態」

 うっ!とうとう雷三の声帯から空気を振動させて言われてしまった。脳に直接と耳からじゃ、ちょっと感覚が違う。しかーし、これだけは譲れない。僕は頬フェチで、ポニーテール萌えなのだ。

「えっ、クーってロングヘア萌えじゃなかったのか?」

 確かに中学一年まではロングヘアが大好きだったが、今はロングヘアではなく、髪が長い人がポニーにしているのが好きだと気づいたのだ。

「そ、そうだったのか・・・・・・どうりでムーばっかり・・・・・・・・・」

 ところで、なんでそんな事雷三が知ってるんだ?

「・・・・・・な、何言ってんだよ。ま、前、自分からい、い、言ってきたんだろ」

 そうだったけな。過去のことをほとんど覚えてないんだよな。僕は未来にしか足を向けてないからな・・・・・・というかただ忘れっぽいだけなんだけどね。だってあの子の名前を忘れてしまってるぐらいだし・・・・・・

 それにしても、雷三が真剣に何かブツブツと声に出して悩んでいる。こんな真剣に悩んでいる雷三を、僕は始めて見たかもしれない。

 バタンッ!

 ドアが開いた。いい加減ノックぐらいして欲しい。

「あぁ~疲れた!おい、雷三、イッコクとラブラブしてないでそろそろ飯を作れ!俺様は腹が減った」

「ら、ら、ラブラブぅ?おい、リー、本気で言ってんのか?あぁ?」

 わぁ、やばい。目が本気で怒っている。偉繰、逃げろ。

「わ、解った。すまん。俺様が言い過ぎた。悪かったから落ち着け。おい!イッコクも助けろ」

 逃げなかった偉繰が悪いから、助けずにこのまま、雷三のマジギレを鑑賞していても良いんだが、さすがに助けないと僕の胃袋が、自分の胃液で溶けてしまいそうだ。しかたがない。

「雷三落ち着け。怒ると綺麗な顔が台無しだぞ」

「・・・・・・・・・・・・解った。リー、今度言ったら殺すぞ。それに・・・・・・」

「・・・・・・解った。まぁお前には今度のレクリエーションで機会を作ってやるから、ちゃんと全部話すんだぞ」

「・・・・・・解ってる」

 あれ、なんか暗い感じになってきてない?あれ?あれ?

「呼ばれて、飛び出て、妹六ちゃ~ん!」

 ものすごい勢いで妹六がドアから本当に飛んで、きた。否、飛び込んできた。

 そのまま雷三に抱きつく。ちょっと雷三に羨望の眼差し。

「雷三ちゃんご飯まだー?」

「あ、ああ、分かった。今から作る。だから大人しく座っとけ」

「は~い!」

 まるでお母さんと子供のようだ。雷三ちゃんの所をママに変えたら完璧親子だな。この場合お父さんは誰になるのだろう。僕だったら妹六が娘・・・・・・

 妹六~、パパと一緒にお風呂は入らないか~?

 もう、何言ってるの!パパのエッチ!

 ハハハ、冗談だよ、冗談。妹六はかわいいなぁ~。

 それよりパパー、一緒にご飯食べに行こう~!

 よーし、行くか!何でも食べさせてやるぞ。

 わ~い、ママも一緒に行こう!

 そうだな。ママも呼ぶか。ママー、ママー!・・・・・・・・・

『・・・・・・変態』

 聴かれてたのか。もうママったらシャイなんだから。

『誰がママだ』

 冗談だよ。しかし、雷三のテンションと笑顔が妹六のおかげで戻ったようだ。やっぱり美女も美少女も笑顔が似合う。いや~眼福、眼福。

「私はどうなのよ?」

 いつの間にか党夜が居た。いや、党夜も見とくと福が来そうなぐらい美人だよ。

 ところで僕たちを襲った奴らはどうしたんだ?

「あの人たちは逃がしたわよ」

 逃がした?党夜、何でだ?

「みんなが来る前に目覚めちゃったのよ」

 もう一回気絶させとけばよかったのに・・・・・・

「私、戦闘能力ないから。それに私、あなたたち観察対象以外の人間って、一切の興味がないし」

 そうか・・・・・・なんか引っ掛かるがまぁいいか。

『チャッピー!みんな~今日は疲れたね~!準備は大変だよ~。今日のぼくちんは準備場所の担当チーフさんに怒られて、ショボーン、ショボーン、ショボボボボ~ンの一日だったよ~。だけどミルっちや、キューちゃんに慰められて、挫けそうなところを救ってもらったんだ~。いや~友達って良いね!』

 ゲンゲンラジオが始まった。もう六時か。今更ながらだが、僕は四時間半も寝ていたのか・・・・・・

「ところでダー君は?」

 そういえばダックスが帰ってきてないな。偉繰、あいつは何をしてるんだ?

「ダックスは結構時間かかるぞ。あいつはフィールドとかも作ってるからな」

 フィールド?ATフィールドか?

「そんな心の壁作ってダックスはどうすればいいんだよ。多分今度のレクリエーションのフィールドとステージを建ててるはずだ」

 そんなものが今回は必要なのか。というかお前何をする気なんだ?そういえばまだ聞いてなかったぞ。

「それはみんな集まってから言う。それより雷三、飯はまだか?」

「出来た」

『今日のマイミルクの献立は~、ご飯、麦茶、インドカレー、すごい量のマカロニサラダ。みなさん美味しく食べましょ~。いや~本当に美味しそうだな~。僕も行っていいかな~?ところでマカロニサラダにはきゅうりは入れないのかな?』

 なんで小中学校の放送部風なのだろう。というか来るのか?まだラジオ中じゃなのに?ちなみになぜきゅうりを入れないか、理由は簡単、僕と偉繰が嫌いだからだ。

『・・・・・・うん・・・・・・・・・えっ本当に?・・・・・・うん。やった~。じゃあ今日は中継ってことで~。今からなんと、マイミルクこと、政経部に行ってきま~す!ほら、ミルっち、キューちゃん。行くよ~。』

 え?マジ?今から枚狗先輩が来るの?

 雷三、お前OKしたのか?

『あぁ。どうせダックスが来たらレクリエーションの内容を、国民のみんなに伝えなきゃならないんだから一石二鳥だろ。俺もあんまり異常使うと疲れるんだよ』

 雷三も疲れるんだな。というかいつもそんなに使っているのに大丈夫なのか?

『心配してくれるのか?』

 そりゃ、お前、当たり前だろ。

『うふふ、ありがとう。でも大丈夫だよ』

 何笑ってんだ?

 コンコン。

 お、ノックだ。自分の以外、久しく聞いてなかった。やっぱり常識だよな。

「失礼します」

 最初に入ってきたのは身流渡(みると)だった。続いて枚狗先輩、そしてマイクを持った球華(たまはな)先輩だった。球華先輩とはラジオで枚狗先輩にキューちゃんと呼ばれていた人だ。本名は珠美和球華(たまみわたまはな)〈十八歳〉。通り名は「律する慈愛」(オーバーザマイク)。とても優しい先輩だ。ちょっと言動が可笑しいけど・・・・・・

「いや~、今日は招待してくれてハピハピだよ。お姉さん、お腹ペコペコで招待してくれてラキラキ、ワクワクだったのだ。みんなを代表して感謝を表するよ!ドモドモ」

 今日も球華先輩は全開のようだ。

「雷三ちゃん僕もう食べるね」

 枚狗先輩ががっつき始めようとした時、動きが止まった。

「マイク、まだダメダメなんだよ。ダックス君がまだ帰ってきてないじゃないか。食事は大勢で食べたほうが、ワクワク、ハピハピで、ウマウマなんだよ」

 スプーンで(すく)ったカレーを、大きく開けた口に入れようと持っていく途中の、枚狗先輩を止めているのは、球華先輩の異常(エラー)だ。

 先輩の異常は「静止」(ストップ)。物体の時を止める能力だ。しかし、自分以外の物の時間を全て止めるのではなく、物単位で止める。最高で何体かは知らないが複数の物の時間を止めることが出来るらしい。だから今、枚狗先輩だけが止まっているのだ。

「お騒がせしてすいません。先輩はこのように暴走しますが、ちゃんとこちらで処理しますのでお気になさらず」

 身流渡は冷静だな~。これで本当に十三歳なのか?さば読んでないか?

「それで、党夜、ダックスはまだか?」

「いえ、噂をすれば影って奴みたいよ」

 ガチャ、

「ふむ、なにやら賑やかなようだ。うるさいのは嫌いなのだグァ、明るいことはいいことである」

「イーお疲れ。餌はいつものところにあるぞ」

「お、ダックス君なんかヘトヘトなんだね。毛並みがいつものようにツヤツヤ、フサフサじゃないよ」

 確かに。ダックスは見た感じ疲労しているようだ。

「うむ。異常を使いすぎたのだろう。今日でステージとフィールド、まぁといっても外枠だけなのだグァ、どちらも半分以上を作ってしまったからな」

「へぇ。ダックス君はさすがに仕事が早いわね」

 党夜はやっぱりどういう物か解っているらしい。

「ナー先輩。イーが帰ってきたからそろそろ動かしていいぜ」

「あ、そういえばそうだったんだな。マイクごめんなんだよ」

 静止がとかれた枚狗先輩は、動けない獲物に飛び掛るライオンのような勢いでがっつき始めた。

「おい、球華。マイクを俺様に貸せ。もちろん拡声器のほうだぞ。身流渡はちゃんと送信しろよ」

「わかったんだよ」

「お任せ下さい」

 おい、偉繰何をするつもりだ?

「レクリエーションの内容を発表する」

 お、これは注目だな。

『・・・・・・俺様のかわいい国民共!今回のレクリエーションで行う競技を発表する。これでもかというぐらい耳を大きくして聞け!』

 知っているくせに党夜は、なになに?って顔をしている。

『第四回、ストワン国民全体レクリエーションの競技は―――』

 固唾を呑んで偉繰を見る。今回は何をするんだ?プロレスか?異種格闘技か?それとも今流行の台詞しりとりか?

『チーム対抗ペア鬼ごっこだ!』

 ・・・・・・・・・・・・はい?鬼ごっこ?

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