第1話
正直に言うと私の書くジャンルは何に入るんだろう? という疑問がつきません。
後書きに主人公たちの自己紹介を掲載してます。
青い空が続く。青といっても濁ったような重い青色だ。今にも空が落ちてきそう。
軍隊に入る前の学校だと、青の中の青をした空は美しいと先生や学友は言っていた。みんな口をそろえたように青すぎるほうが素敵だというのだから、ボクをからかっているのか、もしくはそういう定理があるのかと勘ぐった。
どう考えても今のような空のほうが美しい。
ボクはこの重い空が好きだ。大好きだ。
「ヨシミ、目標まであと10分」
後席から響いた声にボクは各種メーターをチェックする。高度、速度、燃料計などを確認する。予定通りだ。
「現在のところ異常なし。そういえば今日の夕飯はなんだっけ?」
「さぁ。たぶん、まずいパンとまずいスープとまずいサラダなんじゃない?」
「ミノリは容赦がないな……」
目的の島が見えてきた。ここに敵は大きな飛行場を作っているという情報を諜報隊がつかんだという知らせが3日前に来た。そしてボクたち偵察隊に出撃命令が来たのも3日前。
本当は昨日飛ぶはずだったのだけど、悪天候で中止になった。
しかし今日の天気は雲量が5くらいだから大丈夫だと気象部が言っていた。
たしかに雲間から重そうな海が見える。空は相変わらず灰色が混ざったような青だ。
目標の島が見えた。司令からは高度3000メートルから空撮せよとの司令だ。
島の上空には黒点は無い。あったらそれは敵機だ。こっちは後席に7.7ミリの旋回機銃が1丁あるだけだから逃げるしかない。
幸い、敵機はいない。基地を作っているにしては無防備じゃなかろうか。
ボクは機体を傾けて島を一望できるよにしてやる。
「ミノリ、撮れた?」
「バッチシ。だけどなんも写ってないよ?」
「島は写ったでしょ?」
「あんたも屁理屈だね。私は遠まわしに島にもっと近づけって言ってるの」
ミノリは面白いことを言う。絶対に嫌だ。
しかし、ぱっと見で敵の飛行場などは見えない。情報部が偽の情報をつかまされた可能性が高い。
それならば無警戒の理由がわかる。しかし、偽装した対空砲の陣地がある可能性は捨てきれない。だが、そこに行ってみるのもいいかもしれない。
「気分が変わった。いくよ」
「え? ちょ!」
ボクは急降下して高度を速度に変える。ぐんぐん島が迫る。ボクは島をパスした。何もない。飛行場はおろか物資を揚陸するための港もない。これは無人島のようだ。
高度計は300メートル。上空に敵機なし。
スロットルを絞って速度を緩やかに殺す。機体を傾ける。
「写真撮んなきゃダメ?」
「せっかくだからね」
島を1周するように飛行して、ボクは基地とは別方向に向けて進む。進路を偽装するためだ。
しかし、こうも無人島の偵察を行って偽装進路をとるというのもおかしい話だ。
ここ2・3年で戦線は完全に膠着し、小競り合いこそあるものの暗黙の休戦状態となっているのだ。
敵もこっちの基地くらい知っている。おそらく基地の規模も調査済みだろう。
ボクのいる基地も時々、空襲を受けるからだ。規模も大きくない基地だ。頻繁に爆撃されても燃料代が高騰するだけだろう。
「じゃ帰ろうか」
「そうね。進路そのままヨーソロ」
楽な任務だ。きっと諜報隊も偽情報と知ってボクたちを飛ばしたのだろう。
あまりに変化のない戦線に兵士たちがあき始めている。しかし講和も休戦もしない。
軍部の思惑はわからないが、戦争を続ける以上、ボクたち兵士をあきさせないように偽の情報で緊張感を与えようとしている。
ボクとしては衣食住が保障されている軍隊とはいいところだと思っている。
それに前線に近い基地だからそれなりの緊張感と自由がある。
基地近くの町に出れば酒にタバコに薬、そして娼婦がいる。楽しいことはあるところにはあるのだ。
結果を言うとミノリは近距離から撮影をしていなかった。だが、司令部は島が
全体的に写っている写真を見て満足してくれた。
おかげでボクとミノリには1日早い外泊許可をもらうことができた。
ヨシミ・ミナミ(兵長)
高速偵察機『サイウン』のパイロット。女性。
ミノリ・ホンダ(兵長)
偵察要員。情報通。女性。
高速偵察機『サイウン』
戦闘機よりも高速な偵察機。2000馬力のエンジンを搭載した高速機の予定だったが、エンジンの開発が難航して1600馬力のエンジンで代用している。
そのため機体のデザイン性と極限な軽量化により戦闘機を越える速度を発揮できる機体となった。
しかし繊細なデザインのため整備士の整備によってはその本領を発揮できない場合がある。
機体性能
エンジン:1600馬力
最高速度:610km/h
航続距離:5300km(増槽装備時)
武装:7.7mm旋回機銃×1
乗員:2名