盗賊
「こりゃあ、すごいな~」
激戦の中心へ降り立った俺は周囲の光景を見て絶句した。優、マリアそれぞれが数人の盗賊たちと戦闘を行っていた。マリアは大剣で来る敵をなぎ払い、優は仲間の補助をしながら魔法で攻撃していた。
そのすぐ隣にマリアのもう一体の獣従、一角獣のモケが結界を張り巡らせて自分と優を守っていた。
ポチは……無双している。襲ってくる敵を簡単に倒していっていた。
「にしても、テントが……」
それよりも気になったのは燃えているテントである。緑色の2つのテントが赤々と染まって、次第にその面積が減っていっている。あのテントかなり高かったのな……
「あー……じゃあ、殲滅っといきますか」
剣を握っている手に力を込めて、戦闘体勢へ入る。俺の突然の登場に驚いていた盗賊共はもうすでに気を引き締めているようだ。今まで自分達が戦っていた優やマリア、ポチ目掛け斬りかかっていく。
盗賊の4人は俺の前に来て様子を伺っている。その4人の武器は中心の男二人は直剣。左の男は刃が大きく反れたシミター。右の男は針のような形状をしているレイピアだ。様子を見ようとしているのかどうやら向こうからは切りかかってこないらしい。
「行くぜ!」
そう叫びレイピアを持った盗賊の元まで駆けていき、俺は瞬時に懐へと入り込む。そのまま流れるように体を動かし、剣を持った手を真横へスライドさせる。
「がぁぁぁあああ」
レイピア使いの男は化け物のような声を出し男は焦ったのかレイピアにも関わらず剣を振り回す。
「っと。あぶねぇ、あぶねぇ~」
とっさにバックステップで暴れる男の剣を避ける。しかし、相手も黙ってはいない。攻撃されていない3人は俺目掛けて切りかかってくる。右、左、ジャンプ、しゃがむーー細かく、軽やかにステップをとり、次から次へと来る攻撃をギリギリで回避する。それにしても狙いが甘すぎる。
この盗賊たちの攻撃はどの攻撃も急所を狙っていない。急所を狙ったり深く斬ればその分だけHPを大きく減らす事が出来るのにも関わらず……さっき俺が攻撃した時は相手の事など微塵も考えずに大きく腹を抉った。
レイピア使い男の場合は攻撃力の高いシステムに動かされる剣技を使用しなくても、人体に大きくダメージを与えるほどの葛を受ければその者のHPは簡単に5割以上減らす事が出来るのだ。こいつらは盗賊なんかやってるのに何か迷っているのだろうか?
その心をまるで映し出したように剣にも迷いがあった。攻撃動作は大きいし、攻撃後は隙があり過ぎる。
「せいやっ!!」
攻撃後の隙を狙ってシミターを装備する男の右腕を切り落とした。シミターの男は痛みにもがきその場に倒れる。
「貴様ぁ!!」
仲間がやられた事にキレた直剣使いの二人はこれまでの腰抜けの剣捌きと変わり、俺を殺そうと本気で襲いかかってくる。だがそれも、ただ怒りに任せたものだ。そんなもの「跳躍」スキルがかなりのLVにいっている俺がくらうはずが無い。
右から来る刃を剣で受け止め、左から切りかかってくる男の腹へ蹴りをいれる。これもただの蹴りじゃない。「体術」スキルでアシストされた攻撃だ。いとも簡単に男をぶっ飛ばすと、未だ右の直剣使いは両手で震えながら俺に対してさらに力をいれてきた。
徐々に力が強くなっていく……でも、俺の左手は空いている。左手に握りこぶしをつくり、直剣使いの右手の甲を殴る。
「!?あ、あぁぁああああぁ!?」
直剣使いは右手から来る鋭い痛みに右手はもちろん左手の力も入らない様子だ。なら、少し退場願おう。
激痛に悶絶しながらも俺に剣を押し付けてくるがそれはもう、ほとんど力が入ってはいなかった。俺は右手に力を込めて受け止めていた直剣を弾く、大きく反れた状態の隙だらけの横腹に回し蹴りをお見舞いした。体は「く」の字に曲がり森の中へと消えていった。
「……終わったかな?」
何ともいえぬ表情で再び二人へと視線を向ける。二人ともほとんどの敵を殲滅させており、今戦っているのは1人,2人といったところだ。これなら、それほど大変なことなく終結させる事が出来るだろう。「それにしても強い奴がいなかったな……何かありそうだな」
何か頭に引っかかるものを感じた俺はマップを出して周囲を見渡す。始めはほとんど円に近かったここの地形は戦闘によってもう形は保たれていなかった。
プレイヤーのカーソルは俺と優とマリアでとりあえず3人とポチとモケでモンスター表示が2つ。残りの盗賊の数は優たちのところに4人、少しはなれたところに3人いた。
「こいつらは何してんだよ?動いて無いな全く」
その3人の方向へ「遠視」を使う。視界はレンズを目にかざしたかのようにアップされて、奥の方まではっきりと見えてくる。しかし、気が邪魔でまだ見えてこない……こうなったら。
「透明化」を使った。対象の物体を透明にすることの出来る変なもの。直ぐに視界の邪魔をしていた木は透明になっていき、後ろに隠れていた3人がはっきりと見える。
その3人は真ん中に大男。左右に魔法使い装備を着用した二人がぶつぶつと何か呟いていた。
「!?魔法かよっ!」
それが魔法の詠唱だと気づいた俺は走り始める。詠唱は長ければ長いほど威力も効果も強くなる。盗賊が現れてから25分も経ってしまっているから、その間ずっと詠唱していたというならかなり危険だ。強制解除しなければ何が起こるかわからない。
「遠視」は長く使っているとめまいが起きるから効果を切り、「透明化」だけ使ってぼやけながらも盗賊3人をロックオンする。
「はぁぁああああああ!!!!!!!」
隠れていた木を抜けた俺は上段構えで右にいた魔法使いを叩きつける。脳天に直撃しその場に倒れる。気絶状態だ。
「なんだ?お前は……」
「あんたらが襲ってたパーティーのメンバーさ」
大男の武器は見るところ武器は市販されている「バスタードソード」だ。全長1,1~1,4m、重量2,5~3,0kg。かなり「両手剣」のLVを上げ、ステータスをほとんど筋力値に振らなければ装備は出来ないだろう。まぁ、そうなると一撃でもくらえば半分以上持ってかれそうだが……
「ふっ……ライドお前は詠唱続けてろ。こいつぁ~俺がなんとかする」
大男がそう言うとまだ生きている方の魔法使いがコクリと頷き、さっきと同じ方向を向いて再び詠唱に集中しだす。
「何が目的だ?」
「目的?あ~、そりゃ盗賊なんだから盗みに決まってんだろ」
「それならそんな大掛かりな魔法はいらないんじゃないか?」
「はは。見てろって……まぁ、生きてりゃだけどな」
そう言うなり大男は「バスタードソード」を構える。俺も続いて右手の「ドラゴンライズ」を前に構える。
「行くぜ!」
大男は重い剣を装備しているにも関わらずかなりのスピードで迫ってくる。きっと筋力値だけでは俺よりも上をいっているだろう。これを攻略するには手数で補うしかないか。
迫り来る「バスタードソード」の重い一撃を最低限の動きをして紙一重で回避する。「バスタードソード」は構造上使用者に負担がかかりやすいし、何よりも重たい。それにも関わらず、まるで棒切れでも振っているかのように軽々しく剣を振ってくる。
「ッ!?」
「バスタードソード」の刀身が赤く輝く……剣技か!?
「はぁぁぁああああああああ!!!!!!!!」
気合の叫び声と共に赤々しく光る刀身が真上から振り下ろされる!瞬時に襲いかかってくる「バスタードソード」から守るように剣で受け止める。そこからお返しにとカウンター剣技「ヴィザート」で反撃をする。
俺の剣は血のような光を放ち、システムによって勝手に剣が動く。「バスタードソード」を弾き返し、そのまま大男の体へと回転切りを入れる。
大男のHPは1割減り、その減少が止まる。大男はそれを見てニヤリと笑うとさらに切りかかってくる。気のせいかさっきよりも威力が上がってきている。
大男のあまりの力に徐々に押されはじめ、段々攻撃がかするようになってくる。かするだけでも1~2割のHPを持っていかれる。「自動回復」のおかげで攻撃をくらっては回復しダメージは全くと言っていい程受けてはいないが、精神と肉体が悲鳴をあげる。
斬られればその分痛みはあるし、血の出る感覚もあるにはある。これが何よりもきつい。
「このっ!」
高速で行われる命のやり取りに冷や汗が背中をなぞる。頭の中ではひたすら回避する事と相手を仕留める事のみを考える。
大男はなにが楽しいのかゲラゲラと笑っており、こちらがダメージを与えてもさらに余裕そうに笑っているだけだ。
「(クソッ!これじゃぁ、埒があかない連続技で終わらせる!)」
右斜めから来る大男の剣を弾き返し隙を作る。その隙を狙い剣技を発動させる。剣はいつも通り赤く輝き、体はシステムによって動き出す。
突進からの突き、その突きを大男は「バスタードソード」で右脇に逸らす。しかし、そこで終わらない。突きからまるでバネでも仕込んでいたかのように剣が上へ動き出し、大男の右腕を襲う。
「チッ」
大男は舌打ちすると、右手に持った「バスタードソード」を後ろに引くーー
「(こいつ、右腕犠牲にして攻撃してくる気かよ!?)」
しかし、気づいてもシステムは動き続ける。そのまま大男の右腕を切り落とそうと剣は上昇をやめない……そして、右腕を切り飛ばすと同時に俺の体にトラックと衝突したような衝撃を受ける。
「ッガ!?」
「バスタードソード」の破壊力に俺の体はなぎ払われる。体は吹き飛ばされ近くにあった岩に激突する。2方向からのあまりの痛みに顔を歪める。
倒れたままHPバーに目を向けると残り2割となっていた。
「出来たか、ライド?」
大男はやられた俺に目を向ける事無く、詠唱を行っていたライドという男に声をかけると、その男はコクリと頷いた。
「よし、やれ」
大男はライドに命令するとライドは杖を真上にかかげる。杖の中心に火の塊が出来ていき、次第に大きく荒々しくなっていく。火の塊はあっという間に8mほどの球になった。
「撃て」
大男の声と同時に火の塊はさっき、優たちが戦っていた場所へと放たれた。
「やめろぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
俺の声で火の塊はとまる事なく、降り注がれた。地は赤々と残酷に染まっていた……
読んで下さってありがとうございます!いやぁ~遅れました(苦笑)最近、アイディアが乏しくて乏しくて(泣)変なところで終わってますが仕様です。決して今、何も思いつかなかったとかじゃないですから(笑)
では、次回もよろしくお願いします!!
注 「バスタードソード」の解説はWikipediaを引用しています。




